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かまうな
1997年8月25日(月)
わたしは横になっていた。
母と母の新しい夫になるかも知れない男がいた。朝で、ふたりは仕事に出ようとしている。「背中が痛い」と母が言った。閉じた窓をむすっとして見つめている母に男が「じゃ、ぼくがなぜてあげよう」と、なぜた。
母さんのおこった顔は、もう、いい。
母さんはからだが痛いのに働きにゆく。
わたしは寝ている。疲れてるんだ。
この男はやさそうじゃないか。この男だって機嫌が悪くなるときもあるだろうけど、父さんとは違うよ。こんな男もいたんだね。よかったね。
わたしが子どものとき、こんなふうに静かだったらな・・・。
出かけようとした母が恐い顔で戻って来た。
壊されるかと思って、どきっとした。
「言っとくことがある。
数えてたんだけど、欠伸の回数が多すぎる」
あくび? 欠伸なんかしただろうか?
母さんに何か言われると、救いようのない気持ちになる。
不吉なお告げをされたみたい。
不幸になる気がする。
もう、行って。独りにして。静かにしていたいんだ。