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炎と洪水

1997年4月18日(金)
火と水──炎と洪水の広がりを、形のないわたしは風のように渡って見てきた。
水と火が覆った。世界を覆ったのか?
炎に囲まれ恐怖に目を見開く人がいた。何度も水に潜って助ける人がいた。
焼けた丘と、焼けた木々を見た。そこに人間たちの影を見た。そばへ行った。皆は同じ方向を見ていた。何を見ていたんだろう、わたしは知らない。

あの丘は安全な場所だ。

起きる間際、わたしの中で男が興奮して繰り返す声を聞いた。
彼はこう言っていた。
「鈍感であること、響かないこと、それで助かったんだ。鈍感であること・・・鈍感であること・・・」

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