![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/77905650/rectangle_large_type_2_705e9956459cf94ae32678ddf9759bcb.png?width=1200)
『オーメン』:1976、アメリカ
6月6日、午前6時。ローマの病院で、アメリカの外交官、ロバート・ソーンの妻であるキャサリンが男児を出産した。だが、出産直後に男児が亡くなり、ロバートは病院で知り合った神父から、同じ日の同じ時間に生まれた男児を譲り受けた。男児の母親は、出産後に死亡していた。ロバートは妻に事実を明かさず、自分が産んだ子供だと思わせた。
ロバートは駐英大使としてロンドンに移り住み、ダミアンと名付けられた男児は順調に成長した。ダミアンの5歳の誕生日、ガーデン・パーティーが行われた。その最中、乳母がダミアンに向かって叫んだ後、大勢の人々の前で首を吊って死亡した。
ロバートは、ブレナン神父の訪問を受けた。ブレナンは、ダミアンが悪魔の子であり、悪魔払いをする必要があると告げたが、ロバートは相手にしなかった。だが、ダミアンは教会に極度の恐怖を示し、動物は彼が近付くと異常な行動を示した。
ロバートは再びブレナンと会った。ブレナンは、妊娠しているキャサリンをダミアンが死産させ、キャサリンとロバートを殺すだろうと告げた。ロバートと別れた直後、突然の雷がブレナンを襲った。ブレナンは、落雷で落ちた教会の避雷針に体を突き刺され、死亡した。
ブレナンの言った通り、キャサリンは階段から転落して流産し、傷を負って病院に運ばれた。ロバートはカメラマンのジェニングスから乳母やブレナンの写真を見せられ、ダミアンについて調べるためにローマへ向かった。そこでロバートとジェニングスは、ダミアンの母親の墓に、人間ではなく山犬の骨があるのを発見する。
ロンドンでは、家政婦のバイロックがキャサリンを突き落とし、殺害した。ロバートは悪魔払いの男に会い、ダミアンを殺すための短剣を渡される。ロンドンへ戻る途中、ジェニングスは暴走トラックの積んでいたガラス板に首を切断され、死亡する。自宅に戻ったロバートは、ダミアンの頭髪の下に悪魔の印である「666」の数字を発見する…。
監督はリチャード・ドナー、脚本はデヴィッド・セルツァー、製作はハーヴェイ・バーンハード、製作協力はチャールズ・オーム、製作総指揮はメイス・ニューフェルド、撮影はギルバート・テイラー、編集はスチュアート・ベアード、美術はカーメン・ディロン、音楽はジェリー・ゴールドスミス。
出演はグレゴリー・ペック、リー・レミック、デヴィッド・ワーナー、ビリー・ホワイトロウ、ハーヴェイ・スティーヴンス、パトリック・トラウトン、マーティン・ベンソン、ロバート・リエティー、トミー・デュガン、ジョン・ストライド、アンソニー・ニコルズ、ホリー・パランス、ロイ・ボイド、フリーダ・ダウイー、シーラ・レイノー、ロバート・マクラウド、ブルース・ボア、ドン・フェローズ他。
―――――――――
「ダミアンは悪魔の子の名前」というイメージを多くの人々に強く植え付けることになった(ダミアンってホントは普通にある名前なのよ)、オカルト映画の金字塔。
ロバートをグレゴリー・ペック、キャサリンをリー・レミック、ジェニングスをデヴィッド・ワーナー、バイロックをビリー・ホワイトロウ、ダミアンをハーヴェイ・スティーヴンスが演じている。
脚本を手掛けたデヴィッド・セルツァーにとって、ひょっとすると、これは奇跡の作品だったのかもしれない。まさに、一世一代の大仕事という感じか。
神(この場合は悪魔か)が憑依して、このシナリオを書かせたのかもしれない。
これ以降、パッとしないのよね。
ヨハネの黙示録を持ち込んだこと。ダミアンが幼い子供、しかも主人公の息子であるということ。ダミアン自身は普通だということ。体に666の数字があるという設定。絶望的で何の救いも無いラスト。
オカルティックな雰囲気で、ゾクゾクと怖くさせる。
具体的な数字や名称を用いた詳しい情報を入れて肉付けすることで、コケ脅し的な話に説得力を持たせている。
また、悪魔が手を下す様子を見せるのではなく、事故として人々が死んでいくというのも、シナリオの上手さだろう。
ただ、頃合いを見計らって登場する残酷な殺人シーンを効果的に見せるには映像表現が重要であり、ここはリチャード・ドナー監督の演出力も大きい。ケレン味に溢れる派手好きな演出が、いい方向に作用したということだろうか。
これから人が死にますよ、という所での盛り上げ方、予兆から殺人シーンまでの持って行き方も、なかなかだ。登場した時から、私は妖しいですと全身で表現しているバイロックや、私は死にますオーラを出しているブレナンも、分かりやすくてよろしい。
オカルト映画ってのは雰囲気作りが大切で、その雰囲気作りに、ジェリー・ゴールドスミスの音楽が大きく貢献している。
男女混声コーラスとストリングスを生かした厚みのあるオーケストレーションによる宗教的音楽が、心理的恐怖を煽る。
話を大きくしてハルマゲドンを描こうとしたところで、どうせ陳腐になってしまっただろうから、「いずれ、そうなるだろう」と暗示するだけで、ロバートの周囲だけで話をまとめたのは正解だろう。
あんまり広げすぎても、上手くまとまらないような気がするし。
(観賞日:2003年8月10日)