霧雨
傘は持ち合わせていなかった。
仕事帰りに夕飯を外で食べて帰る途中。一方通行二車線道路の街灯に照らされる雨。
小粒で軽そうで、交通量の多い道に降り注ぐには何となく頼りない。車が通れば、ふわっと軌道から外れるような雨粒。
漂う粒の中に割り込む。ふわりと避けるもの。顔にぴたりと張り付くもの。どことなく寂しげなのに優しくて、ふわふわと服に着地する。キラキラと煌めいたあと、時間をかけて染み込んでいく。
自分では見えないけれど、たぶん髪の濡らし方もべっとりではなく、髪一本一本に小さな雫がちょんちょんとついているのではないかしら。
天から落ちてくる雨と言うよりは、空気中の水分が大きめの粒になって現れて、空中を遊んでいるように見えてくる。
だから、私も共に遊んだ。
傘がなかったから。