夜空に彷徨う視点

夜空の中でも、雲や星の無い、暗い部分をあえて見る。
私は一体、何を見ているのかと不思議になるから。

通常、ものを見る時は、視点がものの表面にぶつかり、バシッと止まる感覚がある。ピントが合う、とか言うのはそれだろうか。それを見ている、という認識がはっきりと生まれる。

けれど、夜空はずいぶんと趣きが異なる。どこまでもどこまでも、ぶつかること無く、視点は遠く伸びてゆく。
もし、舞台装置の書割を同じ色で塗ったとしても、平らな黒色に視点が定まるだけだろう。

夜空を見る時の感覚は、スポットライトを客席から見る時に似ているかもしれない。
照明器具から出た光は、暗闇の中で色も厚みも存在するのに、視点がその中で浮遊する。網膜や脳は光の存在を認識しているのに、視点だけは、落ち着く場所をいつまでも決められないのだ。

夜空の中を、どこまでも視点が伸びているのならば、私は宇宙の端を見ているのではないか。

と一度考えてみたが、壮大すぎて想像が及ばなかった。
もしくは、視点がもっと手前で止まっていることに、頭のどこかで気づいているのかもしれない。

空気中大気中にチリかホコリか粒子か…何かしらは存在しているだろうから、視点が遠くへ伸びれば伸びるほど、かすめたり多少触れたりして、だんだんと伸びる力が弱まるような気がしている。
最終的には、何やらかんやらにぶつかっているのではなかろうか。

それで…私が夜空を見上げた時に見ているものって、何なのでしょうか?


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