殴りやすい不登校の仇(かたき)
不登校の子と、一対一で向き合い続けて親が疲れ果てることがある。しょっちゅうある。
どんなことにも労力と時間がかかるのは承知しているが、どれほどお膳立てしても、最終的には子供の決意待ちなのだ。目の前の、先の見えない闇と取っ組み合う底知れない不安。まずこれがある。
僕は自営業をしている主夫で、巨漢でスキンへッドという特異な存在のせいか不登校について話しても、誰も彼もが同情してくださる。「そりゃあ、親が悪いよ~」とか「ひっぱたいて、無理矢理にでも行かせたら~? 俺ならそうするね~」とか、ナメたことを言われない。言われたことが無い。
上記のようなことを言われたと、不登校関係の嘆きがXの「おすすめ」欄にやったら出てくるが、僕はそういう憤るようなアプローチを受けたことが無い。
どうしてか、と言えば、僕が男性で恐そうだからだ。ただ、不登校児の親の会で、心理士さんからちょっとカチンとすることを言われたことがある。
そのとき、僕はこれに飛びついた。
この心理士は、政治的主張を仕事に持ち込んでいる! とか、男性育児者への偏見がある! とか、不登校と関係ないところで、親の会の感想を求める妻に悪く言ったと思う。
不登校という、つかみ所がなく、力技がきかず、いつどうなるのかまるで先の見えない恐怖と戦い続けてきたから「目の前にでてきた殴りやすい不満」が嬉しくてしょうがなかったのだ。
「不登校についてこんな理不尽な誹りをうけた」という投稿が多い。
今日もおすすめ欄にゾロゾロ出てくる。
勉強しようと読み込んで、ウンザリすることもあるだろう。
でも、これは我々にとっては「つかまって、いっときでも精神を委ねられるか細い柱」なのだ。
投稿者は、その柱ばかりを泣きながら殴っているように見えるかもしれない。だが、その人には強制的に向き合わなくてはいけないものがある。
子供だ。子供の不登校だ。
自分の命より大切な愛する愛する子供を蝕み続けるのに一発も殴れない正体不明の敵との、悪夢のような戦いだ。
彼女または彼らが、級友を、教師を、学校を、学習指導内容を、不登校のきっかけとなったあらゆる理不尽を、苛烈に、泣きながら打ちたたくその背後に、絶望的な、いまは絶望的に見える戦いがあることを、ちょっとだけ理解してほしい。
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