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写真だって奥深い‐Elliott Erwitt展‐2023/1/9

エリオットアーウィット。世界の第一線で活躍したフォトジャーナリスト。
知らない名前だと感じるかもしれないが、きっとどこかで見た作品をみつけられる。

京都、祇園にある何必館にて開催されている
「エリオット・アーウィットの世界 Elliott Erwitt展」
(2022/10/15(土)~2023/01/29(日))

という写真展について、自己流でレビューをしたものである。

出会い

オーナーさんの脳内を具現化したような、カオスな空間に囲まれることができるカフェがある。フレンドリーなオーナーさんのおかげもあり居心地がよく、そこに入り浸ることが時間を持て余した学生としての特権だと思っている。
そこはレトロなもので溢れかえりノスタルジックな昭和を感じることができる。世界中の映画やアートの要素も多い。
そこで『LIFE』という雑誌に目を奪われた。ほとんど文字は無く時代に対する皮肉が感じられる写真が多いアメリカのグラフ雑誌だ。


1993年10月に発行されたLIFE

実のところ、絵にばかり興味があり写真をアートとして見ていなかった。しかし間違いだったと恥じた。
多くのアート作品ように写真一枚一枚が名前を持たない。そういえばどれもモノクロだ。
でもそれを忘れるほど色を感じる。

別日、関西圏で開催される美術展を見漁っていると、Elliott Erwitt 展のフライヤーに妙に惹かれた。
それは私がニッチなものに共感するだけでない。
「LIFE”っぽい”」
と軽率に感じたからだ。そしてそれは実際に訪れて確信に変わった。

そう、1951年にLIFEの写真コンテスト新人賞を受賞していたことが略年譜をみて分かったのである。
正直この感動伝えたいが為にこの記事を書き始めた。

どこかで見た

『初投稿。西洋美術史の沼について。』でもあるように
「なんか知ってる」
は最大の好奇心を生み出す。

マリリン・モンローを思い浮かべた時、彼女はどんなポーズをしているだろうか。
私と同じように、風になびく白いスカートを両手で抑えている姿なのではないだろうか。
そう、映画『七年目の浮気 The Seven Year Itch』より、地下鉄の通気口の上でスカートを”ふわり”とさせるあの瞬間に彼も立ち会ったのである。

Marilyn Monroe, New York City 1956

未だに人種差別の名残が見られるアメリカ合衆国。かつての黒人差別はバスでは座ることを許さず、”Colored”(色付き)と書かれた"White”とは区別された水飲み場を強要した。私はこの写真を扱った授業で人種差別について学んだ。
いつの、どの授業かは分からないが、構図を酷く覚えていた。

North Carolina  1950

その他にも、ただの門と線路の跡が写っているだけの一見なんともない写真。その題名にアウシュビッツ強制収容所とあった時は、そこに何も無いと分かって穴があくほど観ていた。

ポエマーとしてのアーウィット

これらのような社会的な出来事を客観的に記録するものだけではなく、子供や家族、犬など何気ない情景にある日常を映し出したものも多い。
忙しなく移り変わる世の中と、牧歌的な瞬間を切り取った写真、犬、犬と、犬を観ているうちに、数展示されるポエムの中のあるアーウィットの言葉にハッとした。

『真面目なものを不真面目に観て、不真面目なものを真面目に観てほしい』

といったようなものだった。
公式ホームページにもなく、ネットで必死に探したが実際に見に行くしかないようだ。(メモしとけばよかった)

シリアスな時間を切り取ったからといって、誰かにとっては日常。でも日常の当たり前は当たり前なんかではない。
と伝えたいのだろうか。
その上、彼はただのジャーナリストとして、ニュース感覚で作品を見られることは望んでいないのだろう。

その後ワンちゃんを神妙な顔で見つめる自分は少し可笑しかったのだけど。

何必館とアーウィット

どの美術展でも、プロジェクトに至った経緯や背景を知ることができる。どうやら何必館でのアーウィット展は今回が初めてではなく、館長梶川芳友氏との関係性も深いようだ。
そこで驚いたことに、アーウィットはパウル・クレーが好きなんだとか。何必館館長と対話をした際には「パウル・クレー展」の開催の話題が出たらしい。行くしかない。

梶川芳友へ、何必館 光庭にて Elliott Erwitt 2008

しかし不思議な名前だと思わないだろうか。

どうやら何必館(かひつかん)という名前には
「定説を『何ぞ 必ずしも』疑う」という由来とメッセージが込められているのだとか。

「存在自体がアートだったのか」とか思う。

5階 光庭

そういえば

人こそ少なかったものの、ぽつぽつと独り言を話すおじいさんがいらっしゃった。特に気にしてはいなかったが、彼の感想を聞くことができて、独りで見ているよりも楽しかった
のだが

「え!なんやこれ」
驚く声が聞こえたかと思うと一つの写真を前に固まっているおじいさん。
「あ。犬が座っとんか。」
と納得おじいさん。

「犬なんかずっと写っとるがな」と疑問に思ってたけど
目の前にしたときは吹き出しそうになった。

New York City  2000

なんて愉快なんだろう。ブログ踏ん張ってみようかな。

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