【365日のわたしたち。】 2022年4月5日(火)
私は、本当にいっぱいいっぱいだった。
手間ひまかけて作った離乳食はなぜか宙を舞い、吹き飛ばした張本人はそれだけでは飽き足らず、なぜか大泣きしている。
床に飛び散った離乳食も、顔についた離乳食も、拭き取る気力が私にはもうない。
何が気に食わないのか。
大声を出して泣いても、こちらはあなたの望むものなんてわからないのだから、全く意味がないので泣き止んでもらえませんかね。
そう諭したところで、こちらの言葉もあちらにご理解いただけないので、意味がない。
八方塞がりだ。
そもそもわかり合おうなんて思ったのが間違いだったんだ。
私たちは理解し合えない。
...一緒にいても不幸になるだけじゃない?
目の前で仰け反り泣き叫ぶ我が子を見つめながら、そんな言葉が頭に浮かんだ。
その言葉を頭でなぞるうちに、ポロポロと涙がこぼれ落ちてきた。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
たとえお互いに理解し合えなくても、
言葉がまだ通じなくても、
君が私のストレスの原因かもしれなくても、
そしてまた、私自身も君の大泣きの原因かもしれなくても、
私は君のお母さんでいたいのよ。
いさせてほしいのよ。
嫌なこと、イライラすること、悲しいこと、苦しいこと。
それら全てを取っ払った後に残った感情は、それだった。
ふと我に返ると、さっきまで大泣きしていた我が子は、いつの間にかハイチェアの上で首をカクカクと揺らしながら、夢の世界へ旅立とうとしていた。
慌てて前掛けを外して、ベタベタの手や顔を拭き、抱っこする。
さっきまでの嵐はなんだったのか、我が子は私の肩に頭を預け、すーすーと眠り始めた。
そうか、眠かったのね。
眠いのにご飯食べろなんて、確かにひどいね。
ごめんね。
多分、明日も同じようなことを繰り返す。
明後日も、明明後日も。
1年後はマシになってるかな?
3年後は、また別の意味で大変かもね。
それでもさ。
それでも、なんとか折り合いつけて一緒にやっていこうじゃないか。
よだれが染みてだんだんと肩が冷たくなるのを感じながら、「ねぇ?」と私は我が子に同意を求めた。
返事はなかったけれど、いかにも気持ちよさそうに眠る我が子を身体で感じながら、私はようやく、床の離乳食を片付ける決心がついた。