【365日のわたしたち。】 2022年3月8日(火)
夫がミモザの花を買ってきた。
「なにこれ?」
「ミモザ。今日はそういう日だって、会社の子が言ってたぞ。」
はぁ。
帰ってくるなり、ダイニングテーブルの上でバサッと置かれたミモザの花束から、ポロポロと黄色の小さな花が床に転がり落ちていた。
ミモザねぇ。
スマホで検索をかけると、「国際女性デー」という単語を見つけた。
「女性たちが達成してきた功績を祝福するとともに、今なお存在する差別や問題を今一度想起し、女性の生き方を考える日」。
ほお。
洗面所で、夫がバシャバシャと手と顔を洗う音がする。
しばらくすると、肌着一枚になった夫がドカッと椅子に座り、テーブルの上に置かれたキンキンのビールの缶をプシュっと開けた。
「ねぇ。私のこれまでの功績ってなにかな?」
そうにっこり夫に話しかけると、
「はぁ?いきなりなに?功績って、別に仕事も何もしてないじゃん。」
そう言ってテレビのリモコンを手に取り、テレビ画面に目を向けたまま、ご飯を貪り始めた。
そんな夫を見て、聞こえないぐらいのボリュームのため息をつき、床に落ちたミモザの花を一つ一つ拾い集めた。
そんな一連の流れを、お茶を飲みに2階から降りてきた娘が見ていた。
「私、お父さんみたいな人とは絶対付き合いたくないし、結婚したくない。
お母さんも、諦めちゃだめだからね。」
そうキッチンカウンターの奥からキッパリと言い放ち、ドシドシと階段を踏み鳴らしながら2階へ上がっていた。
「なんだぁ、あいつは。いきなりなんだよ。まだ反抗期か。」
さあね、と言って私はキッチンへ移動した。
こぼれ落ちたミモザの花たちは、小皿にそっと置いた。
こぼれ落ちたこの花たちこそ、大事にしなくてはいけないような気がした。
※国際女性デーについては、こちらの記事を参考にさせていただきました
CINRA
国際女性デー2022、この日を祝うことの意義やルーツとは? コロナ禍で顕在化した女性の窮状 By後藤美波