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Photo by
09chiharu
【365日のわたしたち。】 2022年3月19日(土)
雨がしとしとと降る帰り道はいつも嫌いだ。
雨に濡れる手がだんだんと悴んできて、
横を猛スピードで過ぎ去っていく車が、私よりも早く暖かい家に辿り着くかもしれないことを想像すると、どうしようもなくやるせない気分になってくる。
だから、この傘を買った。
小さな星が一面に散らばって描かれたその傘は、20代後半の私が持つには少し可愛らしすぎると思った。
だから買う時も少し躊躇したのは、言うまでもない。
それでもなんだか諦めきれず、おずおずとレジのカウンターに差し出したのだった。
なんだか、店員さんの目は見れなかった。
今日も夕方から冷たい雨が降り始めた。
仕事を終えると、しとしとと寂しい音を立てる雨が降っているのを見た時、いつもとは違う感情を抱いた。
ワクワク。
ついにあの星柄の傘を使うチャンスがやってきたのだ。
バシュッと傘を開き、空から落ちる水滴の世界に飛び出した。
いつもと同じ、冷たい夜の雨。
でも上を見上げると、小さな星がいくつも輝く夜空が広がっていた。
傘に隠れて、私はふふっとにやけながら、家路を急いだ。