見出し画像

【365日のわたしたち。】 2022年4月10日(日)

「どこに行ったらいいかな?世界は遠くて、広すぎて」

そう送ってきた彼女のLINEの文章からは、彼女の中に渦巻く途方もない虚しさが滲み出ていた。


彼女は一年の離婚調停を終えて、先日離婚が成立したばかりだった。


何度も会って話を聞いてあげたり、アドバイス(離婚していない身分でおこがましい)をしたわけでもないが、

彼女とは定期的にLINEで連絡を取り合って、お互いの状況を共有し合っていた。



離婚理由は、旦那さんの不倫とモラハラだったようだ。

不倫が始まってから、急激に態度が冷たくなったという旦那さんは、彼女が作った料理を食べては、

「これ、ちゃんと味見した?」だの、

お皿を洗う彼女の横を通り過ぎる時には、

「なんか狭くなった。通りにくい。お前、太っただろ」と言って、意味もなく彼女を傷つける行動を繰り返したらしい。


あまりの急激な変化に彼女はショックを受けていたが、同時にその理由探しに必死になったという。


その思いが募りに募り、付き合っていた頃から絶対に見なかった彼の携帯電話に手を出した。

instagramのサレ妻投稿で色々と学んでいた彼女は、非表示になっていた広告アカウントの中に一つ、個人のアカウントを見つけたらしい。

内容は、真っ黒だったらしい。


そこから彼女は、自分がどういう結末を望んでいるのか必死に考え抜いた結果、彼との離婚を決めた。


心が決まれば、そこからは早かった。

探偵を雇って証拠を集め、自分の方でもLINEのスクショをまとめたり、彼のモラハラ行為を記録づけしたり。


そして1年前にようやく、その全てを彼に叩きつけたらしい。

彼も最初は「勘違いだ」「携帯を見るなんてプライバシー侵害だ!」「捏造だ、妄想がすぎるぞ」と叫んだらしいが、

別部屋で待機していた弁護士が登場したところで、シュ〜と空気が抜けたようにおとなしくなったらしい。

そして泣き始め、「もうしないから離婚だけはしないでほしい」と懇願したらしい。


しかし、話し合いの3ヶ月以上前から固まっていた彼女の決心を揺るがすほどの彼への愛情は、もう彼女の中に残っていなかった。


そこから離婚を渋る旦那さんとの間で調停が始まるのだが、それはもう大変そうで、この短い文章の中では語りきれないため、割愛させていただく。


そして冒頭に戻るのだが、彼女はついに離婚できた。

彼女はこうLINEを送ってきた。

「この1年半くらい、ずっとあいつと別れることだけに自分の全てをつぎ込んできたんだよね。それは必要な努力だったのは自分でもよくわかってるんだけど、終わった今振り返ると、なんだか虚しくてさ。あんなやつのために私の一年半は消えたんだな、って。正確に言うとその前3年間の結婚生活もだから、5年近く(笑)」

「今はどこでも行けるな、って心は軽いよ。軽いって言うか、空っぽだよね。どこに行ったらいいかな?世界は遠くて、広すぎて」


何と言ってあげたら、彼女の心を埋めてあげることができるだろうか。

どこへでも行けるよ

大丈夫だよ

今は、好きなことして楽しもう!

色々なポジティブな言葉は思いつくけれど、とても彼女の心を埋められる気がしなかった。


悲しいかな、

どこへでも行けるようになった彼女は今、自分を繋ぎ止めておける何かを探しているような気がしてならなかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?