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古巣の倒産に見る零細企業の落とし穴とは〜経営者とスタッフの信頼関係 其の二

日本を代表する経営者の御三方

左 松下幸之助 右上 本田宗一郎 右下 稲盛和夫(敬称略)




まだ少し若かりし頃、まったくやる気の見えない私宛に、社長からメールが届いた。





そこには、日本を代表する経営者の方々の名言が、これでもかと羅列されていた。





言いたい事は、すぐ理解出来た。





これを見て感化されて、少しはやる気を出せ、という事だ。





誰もが知る偉大な御三方の、含蓄のある言葉の数々は、確かにズシリと手に取る様な感覚の重厚感があった事を思い出す。





しかし、何処か心に響き渡る感触が無かった事も記憶にある。





少し時は進み、ある日の事。





社長から全社員へのメールの一斉送信で、

「来月の給料日に全員の給料を全額支払うことができない」という旨のメールが回った。





メールはこの様に続いていった。





「従って各々、最低限いくら必要かというのを教えて頂きたい。まずはその金額をお支払いするので、残りは少し待って頂きたい。個人的に学資保険の解約などを行っており、工面が出来次第、支払う。」



というような内容だった。





当然、先輩社員さん達は皆様、非常に納得がいかない様子だった。





同情を買っているというスタンスが見え、全社が不平不満の温床となっていたのだが、それでも皆さん、私は〇〇万円、私は〇〇万円、と返信をしていた様であった。





私は常に生意気だったのかもしれない。そのメール自体が全く納得のいかないものだという事で、メールの返信をしなかった。





すると次に社長に会った際に、

「お前はメールを見たのか。皆いくら必要か答えている。お前は、いくら最低限必要なんだ。」

というような非常に高圧的な態度であった。





私は迷わず「全額です。」と答えた。





その時、私の頭に思い浮かんだのは、学生時代に読んだ本田宗一郎氏の著書

「得手に帆あげて」の一節だった。



(と、この記事を書くため実家の本棚を漁ると、何とまだ有った。奇跡。)





要約するとこうである。




昭和20年代の終わり頃、本田技研工業に労働組合が出来た。新たな設備投資をして資金が不足し、従業員に給料を払えなかった時期があった。その時本田は労働組合に自ら土下座して手を付いて謝った。そして従業員を集め、今までのいきがかり、先の見通しを、嘘をつくことなく、事実を全て話した。最後には皆、拍手をして納得した…。




ここで労働契約だの、定時がどうこうだのを引き合いに出すつもりは無い。

ただ、確かな事は、その時確かに私の目の前にいた男は、本田宗一郎でも無ければ、松下幸之助でも、稲盛和夫でも無かったという、ただそれだけの事である。


落とし穴その四
嗚呼、等身大の社長でいることの大切さよ。

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