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「京都」に魅せられて
いつ頃からか、「京都に住みたい」という気持ちがつのりはじめた。
10代の頃は京都という街にあまり興味がなく、どちらかというと伝統と歴史を重んじていて、何となく近寄りがたいというイメージがあった。
山陰地方(鳥取と島根)で学生時代を過ごした自分は、新卒で関西の会社に就職した。
絶対に関西と思っていたわけではないけれど、地元を出ることだけは決めていた。
東京に行こう、とまではいかないところが小心者である。
新卒で入った会社は、大阪に本社があり、会議のために月に一回は御堂筋線に乗って梅田や難波あたりを闊歩した。
意気揚々と地元を出たけれど、
自分は思ったよりも大阪という土地のもつ雰囲気に馴染むことが出来なかった。
「すきだけども水が合わない」というのは、こうゆうことなのだろうか。
ある休日。思い立って京都を訪れてみた。
街を歩いていると、学生時代を過ごした島根・松江となんとなく同じ空気を感じた。
松江城の堀川沿いを歩いているような風を感じて、ほっとしたのを覚えている。
活気を求めて関西に出てきたのに、いざ出てくると落ち着きを求める。
なんと勝手なのか。
京都は静かで落ち着いているけれど、やはり街には人が多く地元よりも活気がある。
文化の香りが、そこら中に充ちているように感じた。
不思議なことに、ちょうどその頃twitterなどで見かけて「素敵だな」と思う人は高確率で京都に住んでいた。
すっかり京都に魅せられた自分の気持ちは、いつの間にか「京都に住みたい」から「絶対に住む」という決意に変わっていった。
そして、2020年の春についに京都に越してきた。
大学を卒業して上京した人などは、京都に帰るとまるで自分がタイムスリップしたかのように感じるとよく聞くけれど、それは自分が故郷に帰ったときに感じるものとおそらく似た感覚なのだろうと思う。
京都は確かに歴史や伝統を重視しているけれど、その変わらなさを求めて常に人が訪れる。観光客があまりに多いのは住む者にとってはやはり嫌な部分もあるけれど、それでも私は「観光客」という存在がすきだ。
古いものと新しいものが共存している場所
伝統の中に常に新しい風が吹いている場所がすき。
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先日、夕暮れに三条京阪あたりを歩いていると、駅前ではストリートミュージシャンが心地良いアンビエント音楽を響かせていて、
人々は立ち止まり耳を傾け聴き入っていた。
夕日と音楽と、夏の暑さと人々がうまく溶け合った空間にいて、改めて
「京都に住んでよかったなあ」と思った。
これから先もずっと京都に住むかどうかはわからないけれど、この土地に住めて良かったと思う。
住民税も家賃も高い、観光客は異常に多い。
けれど京都は良いところです。
同時に、地元・鳥取の良さにも気づくことができた。
それは、今京都に住んでいるからこそ感じることができるものだと思う。
鳥取にもまた、京都にはない良い空気がある。
有体に言えば田舎度合いになってしまうのだろうけれど、空気の穏やかさのグラデーションというか。
鳥取<京都<大阪 のなかで、たまたま自分は京都が合ったのだと思う。
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京都の方と話していて、「鳥取行ったことあるよ」「魚が美味しいよね」「砂丘があるよね」を始め、「植田正治写真美術館に行ったよ」などと言われると、少し驚いてしまう。自分の故郷が他県の人から見て、どこに価値を置かれて見られているかを知ることができて新鮮だった。
そこにあるものが当たり前だったものを、珍しがってもらえたり、評価してもらえることの嬉しさ。
京都のスーパーで、鶏肉やスイカなどに「鳥取産」と書かれたラベルを見つけた時の、ちょっとした誇らしさ。
きっとそんな感覚が、地元を出た人は感じることが少なからずあるのではないでしょうか。
旅行でどこかを訪れるとき、「ここに住んだらどんな生活だろう」と想像する。
誰かが魅せられた土地の話を聞きたい。
土地によって纏う空気がこんなにも異なる。
自分で、自分の住む場所を決められるというのは、幸福なことだと思う。