【ウソゴク】ウソツキ!ゴクオーくんはウソと推理を通して人間の生き方を描くマンガ【大人もおすすめ】
「正直者はバカを見る。だったら、オレっちはウソツキに…地獄を見せてやるぜ!」(第1話、1巻、p40より)
この漫画はコロコロコミックに連載されている推理少年漫画なのですが、大人でも大変面白く感じる漫画です。
そう、コロコロだから大人はちょっと…と思ってる貴方。そんな貴方にこそ読んでほしい!大人も子どもおねーさんにも。
これは布教記事(その為犯人のネタバレなどはありません)兼感想記事です。なので未読の方は勿論、既読の方も読んで頂ける内容だと思います。読むのめんどくさいと思った貴方にはこの二言だけ送ります。
「人外と人間の関係が好きな人は多分好き」
「他作品引き合いに出すのアレだけど、もっと言うと魔人探偵脳噛ネウロのテーマが好きな人は多分好き」
【概要とあらすじ】
ウソツキ!ゴクオーくん(以下ウソゴク)は、2011年から吉もと誠先生によりコロコロで連載されている推理たまにバトルな少年漫画です。基本1話完結。
基本パターンのあらすじとしては、主人公である不思議な少年、「ゴクオーくん」がいる小学校では様々な事件が起こります。備品を誰かが壊したり、物を盗まれたり……。
ゴクオーくんは「ウソ」が大好き。事件が起こると、怪しい人物の「ウソ」を暴きながら、犯人を追い詰めていきます。
しかし、大体の犯人は確実な証拠を出されても、素直に罪を認めません。「俺じゃない!」
(第47話、10巻p114より)
そんなゴクオーくんの正体は地獄の閻魔大王!
ウソをついた犯人の舌を抜いてしまいます
代わりに犯人には「ウソのつけない舌」をプレゼントされ、犯行を起こした理由などを白状させられます。因みに次の話になるとちゃんと普通の舌に戻る安心仕様。
犯人が事件を起こす理由は、身勝手な理由から友情のすれ違いなど様々。
犯人キャラは使い捨てではなく、そこから反省し、違う話で元気に活躍する姿が見れるのもウソゴクの魅力です。
勿論話のパターンはあくまでも一例で、例外のパターンも多々あります。
ゴクオーくんは、そんな人間がウソをつきながらも成長して行く姿に惹かれていきます。ウソゴクは人間讃歌がテーマの一つと言えます。
また、主人公が地獄の閻魔大王のため、各長編〜中編の敵は天使とか神の使いとかスケールがデカく、彼らとの戦い方もバトルだけでなく、頭を使った駆け引きも見どころです。ウソゴクでは地獄は日本式、天才はキリスト式なのでその手のスマブラみたいになってます。すげえぜ。
推理とバトル、人間の描き方…それらが高いクオリティで描かれた本作は小学館漫画賞の児童向け部門を受賞しています。
小学館漫画賞はDr.STONEとかモブサイコとか、児童向けだと怪盗ジョーカーとかでんぢゃらすじーさんとかがとってます。凄いメンツだ。
次の項からも少し詳しく魅力を語っていきます。
① 小学生ならでは事件性、でもトリックを見破るのは容易じゃない!
ウソゴクの事件は基本小学生が起こし得るようなトラブルが多いです。
「学校の備品を壊した」
「調理実習で人のカレーをわざと不味くした」
「中学生の先輩に脅された」
「ふざけてたら友達を思った以上に怪我させてしまった」
など。子供だけでなく、昔子供だった我々大人にも「あるある〜」「あったなあ」とノスタルジーに浸れるような楽しみ方もできます。
そのためトリックや隠蔽工作も、物理法則を無視するほどトンデモなものはありません。(現実で本当に出来るかはもちろん別の話ですが…)少なくとも水深5mのプールは出て来ません。だからといってトリックが単純なわけでもありません。
勿論ネタバレは控えますが、個人的に凝ってると思ったのは第36話 「ウソつき学芸会」(8巻収録)
舞台中にこの話はハウダニットとなっており、犯人は最初から読者に明示されているに等しく、その犯行方法を推理して行く話になります。
その方法は、舞台の場面転換で皆がドタバタしている最中だったり、脚本の合間など様々なコマの端端やちょっとした掛け合いなど読み飛ばしてしまうような些細な所に、伏線として巧みに書かれています。
そのため、ウソ暴きでゴクオーくんがトリックを解説してくれるシーンでは、「あっあのコマにこんな動きが!」「あのセリフ、そういう意味だったのか…!」とアハ体験出来るような仕組みになってます。特にこの回は演劇ということで登場キャラが多く、さらっと読むだけだと犯人の怪しい行動を簡単に見逃してしまうでしょう。トリックも演劇ならではであり、いつもと違う犯人の自白シーンといい個人的に凄く好きな回です。
ていうか最初に知ったのがこの回で「これ本当に子供向け?オモシレーじゃん!」と気になったのがきっかけです。
コマにきちんと伏線が描かれている、裏を返せば、ちゃんとした推理小説のように読者にも推理出来るような構成になっているということ。
トリックは二重三重に、しかも小学生ならではの発想などを重ねられており中々趣向が練られています。そのため、推理力のある方でも満足できる読み応えになっていると思います。
また、犯人を追及するシーンは変則ゴマを多用した派手なコマ割りで、臨場感のある画面構成になっています。追い詰め方もワザと油断したふりをして、相手にしか知らない事実を話させるよう誘導尋問するなど、本来の読者層である、子供を読飽きさせない工夫がされています。大人も勿論読んでて楽しい。ウソを暴く快感。
油断を誘われて騙された相手に、ゴクオーくんはいつもしたり顔で言うのです。
「ウソだよ〜!」
(第47話10巻p180、第10話3巻p43、第40話9巻p100より)
勢いがすごい。逆転裁判のSE聞こえてきそう。
ゴクオーくんは閻魔大王であり、数百年は悠に生きてるのでvs人間だとちょっとやそっとでメンタル揺らされません。つよい。
因みに私は一回もトリックを当てられたことがないです。かなしい。
②教訓と成長 大人も子供もおねーさんも刺さる内容
ウソゴクの大きな特徴が「犯人の反省から再起を描く」だと思ってます。
推理物に多か見られるのは、犯人が警察に捕まって終わり再登場しないパターン。でも、ウソゴクだと舞台が小学校なんで捕まらないんですよ。
「クラスメイト」として再登場をする。
犯人だったこの子はこう変わるんだ!って詳しく書こうとしましたが、推理物として致命的なネタバレになるので他の子にします。
番崎(ばんざき)君
この子はジャイアン的な存在で、1話から小野天子(ヒロイン)という女の子に「オレのテストが0点って書いたノート黒板に貼っただろ!」とあらぬ疑いをかけます。
人間の頭掴んで持ち上げてるのが彼。小学五年生にして相当なパワーの持ち主ですね。
序盤であからさまに描かれますが、天子ちゃんは完全に濡れ衣です。
その後、天子ちゃんが違う事件で犯人の疑惑をかけられたとき、この様なセリフが出てきます。
「だから、本当のことがハッキリしねー事件なら、とにかく天子を信じてやろうと思ったんだよ」
番崎君は犯人どころか被害者だったのでゴクオーくんに舌抜きの刑(作中での罰)を受けていません。しかし、彼なりに昔の行いを悔い、反省をした結果「天子ちゃんを信じる」という行動をしたのです。
めちゃくちゃ成長を感じて好きなシーンです。
他の例として、自らのついたウソで担任の先生を泣かせてしまった男の子がいました。その子は、それ以降の回で先生が他人に非難されていた時に、「先生はそんな人じゃない!間違ってくれた自分を怒ってくれたんだ!」と自身の過ちを認めながら庇うほどの成長を見せるシーンもあります。
クラスメイト達は、皆で喋ってる場面とかにも出てきて、交友関係とかも設定されてる。めちゃくちゃ愛着湧くんですよ。
中には前々から出てて、後からメイン回が出てくる子もいる。単行本で誰がどのクラスにいるかオマケが描かれたりする。沢山クラスメイトが出てくるにも関わらず、読者は自然に顔と名前、キャラの性格を覚えられる程、一人一人、生きてる人間の様に描かれています。
コロコロ読者向けの配慮なのか、名前めちゃくちゃ覚えやすいです。たすかる。
ゲーム好きの少年→梶野(カジノ)君
頭が良い少年→江良戸(エリト)君とか
悪役(一回限り)のキャラが暴若君なの笑いました。身も蓋もねえ。
ウソゴクでは途中で5年→6年に学年が上がるのですが、そこで追加されたキャラ達も魅力的であり、かつクラス替えに戸惑う子供達の心情も丁寧に描かれてます。
3人組で仲が良かったのに、新しいクラスの子の約束優先されちゃって複雑な気分になるとか。いや分かるわ……懐かしいわ……。
地獄先生ぬ〜べ〜も1つのクラスがメインの舞台となり、段々とそのクラスのキャラに愛着が湧いていく作品でしたが、その感覚に近いかも。
そういやゴクオーくんコロコロだけど下ネタがないです。個人的にそのお陰で凄く読みやすいです。
また、事件を起こして反省するといった作劇から、厳しめの教訓めいた話も多いです。大人が読んでも「……やべ…ちゃんと生きよう…」と考えさせられます。また、罪の重さに合わせた教訓や罰、キャラの反省が描かれており、あけすけな言い方ですがキャラに不快感がない。多分作者の方の倫理観が凄くしっかりしてる。その点で凄く安心して読める作品です。人の罪を描く作品でこの担保は超大事だと思う。
(たまに、作者はこれを良い話だと思って描いてるのか!?みたいな倫理観の狂った漫画あるから……)
大人でも考えさせられる話について、好きな話が2つあるんでどっちも紹介します。
第16話 「勇気でウソを飛び越えろ!」(4巻収録)
1つは事件らしい事件は起きません。
小学校でクラス対抗でなわとびの回数を競っており、ゴクオーくんのクラスも記録更新のため練習を重ねるという導入から始まります。
しかし、「雨地くん」という少年は自信がなく、仮病を使って練習から逃げてしまいます。
その思いを見透かすように彼に付き纏うゴクオーくん。
「緊張していつもいつも、大事なところで失敗しちゃうんだ!」
「みんなをがっかりさせたり期待を裏切ることはしたくないんだ!」
彼の吐露に、ゴクオーくんは満面の笑みでこう返します。
「うーむ、てんけー的な…にげるためのウソだなっ」
怖い。満面の笑みでこんな毒付かれたら大人でも泣きますわ。
その後も怪しい笑顔を浮かべながら暗い彼の人生を暗示するゴクオーくん。これ主人公のする顔?
最終的に、「雨地くんは飛べる!というクラスメイト
」vs「雨地くんは飛べない!という他クラス」という真っ二つの構図が出来上がります。雨地くんそっちのけで。
ゴクオーくんは問います。
「どっちかが、ウソツキだぜ」
「決めるのは、オマエだ!」
このシーン最高に熱くて大好きなんです。
どちらが真実となるのか。ウソというのは誰かの言葉だけで作られるものじゃない。誰かの行動で後からウソか本当か決まるものもある。ウソにも多様な形があると教えてくれる話です。オチは是非本編をお読みください。
あと逃げグセは気をつけようと思った。
第50話 「「いい人」に隠された真実」(11巻収録)
同じくらい好きなのが、人が良い少年の話です。
この話の主役は「任世くん」という少年。
彼は名前の通り、人に何か頼まれると何でも引き受けてしまうことで評判です。
その噂を聞き、彼の性格に「ウソくささ」を感じたゴクオーくん。そして、彼の優しさを試すように、「千ピースあるパズルを頼む」
など無理難題を頼みます。
任世君は困った顔をしながら引き受けますが、更にゴクオーくん以外にも「宿題の雑巾を作ってくれる」「掃除当番変わってくれ」とクラスの子に色々頼まれてしまいます。
次第に追い詰められる任世君。
焦燥感のある表情に自分も読んでて辛くなりました。
ある日、またクラスの子に「予定があるからコロコロを買ってきてくれ!限定の付録がつくんだ!」と頼まれてしまいます。
他の頼まれごとをしていたら、どこの本屋でもコロコロが売り切れてしまいました。
頼まれたのに!!と焦る任世君。
すると、たまたまコロコロを持ったゴクオーくんが!!しかし、任世君が交渉してもゴクオーくんは「やだね!まだ読んでない!」と
拒絶。困る任世君でしたが、なんと、ゴクオーくんはベンチにコロコロを置いて、席を外してしまいます。
あんなに欲しかったコロコロが目の前に。取ってしまおうか…。任世くんを誘惑が襲います。
それでも、何とか自分に勝って思い止まる任世君。
その姿を見て、やるじゃん!と愛嬌のある笑顔を見せるゴクオーくん。で、次のページ。
怖い怖い怖い!完全に悪役。ゴクオーくんの役割は基本探偵役なんですが、地獄の存在という設定を活かしてたまに怪談の妖怪役みたいな立ち回りもします。
ゴクオーくんは正義の味方ではなく、あくまでも人間を裁く閻魔大王であり、時に人間を試すような行動も多々行うため、厳しく見える時もあります。でもその裏に優しさが垣間見え魅力的なキャラクターです。
まあもしここで任世君がコロコロ取って地獄に堕ちて話が終わったら完全に世にも奇妙な物語ですよね。ホラー。
因みにゴクオーくんはウソの気配がある人を見るとこんな感じにまとわりつくため、ウソをつくとやばい、とクラスメイトにも恐れられています。妖怪ウソおいてけ。
最終的にゴクオーくんに目をつけられた任世君はどうなるのか!?やっぱり地獄へ落とされてしまうのか!それとも?本編を是非!
「いい人間っていったいなんなんだろうね〜?」
最後、ゴクオーくんは疑問に思います。何なんでしょうね?
子供どころか大人にもなかなか答えが出せない問題です。
主人公のゴクオーくんは数百年を悠に生き、人間の罪を裁いてきた閻魔大王であるため、
見た目や普段の戯けた態度に反して精神年齢は高く、達観しています。
そのため、ウソ暴きシーンなどで人間に告げる説教にも説得力があるように描かれています。
他にも、魔がさして万引きした少年の苦悩を描いた回など読むとちょっと心がキュッとなる話も多いです。つまりそれだけ真に迫っており、1話1話のクオリティはとても高いです。
③人間讃歌 〜閻魔大王ゴクオーくんの特徴と小野天子率いる人間との関わり方〜
もう少し主人公、ゴクオーくんの掘り下げをします。
(第69話、15巻より)
八百小の生徒ウソツキゴクオー(ウソツキって二つ名かと思ってたら苗字で爆笑しました)
その正体は何百年も人を裁き続けた地獄の閻魔大王、地獄王(ジゴクオー)(真名)
普段は子供らしく振る舞いますが、実際は達観しており、ウソツキ相手には大人顔負けの気迫で追い詰めます。このギャップがカッコいい。
そんなゴクオーくんの好物は「ウソ」
もっと言えば探偵役である彼が推理をするのは、「ウソを暴くため」です。
人を騙す、悪いウソツキの舌を引っこ抜くのがめちゃくちゃ好きという少年誌の主人公らしからぬ中々のドS振りである。
彼が気まぐれに人間界に降り立ち、小学校に訪れたのも「ウソがたくさんありそう」という考えからです。
しかし、彼がウソを好きな理由は舌を引っこ抜きたいだけではありません。
もう一つ、「人間がオモシレーウソをつくこと」を見るのも好きなのです。
なんのこっちゃって話ですよね。
オモシレーウソをつく人間、それは彼が人間界に居付くことなったきっかけ、「小野 天子」(おのてんこ)というキャラが代表的です。
小野 天子(以下天子ちゃん)ゴクオーくんに1話から出ているごく普通の女の子。ヒロイン兼ワトソン的な相棒的な役回りです。
彼女の性格はおっとりとしており、毎回の様にゴクオーくんにからかわれ「ウソツキー!」と怒ってます。かわいい。ふーっ。
(第89話、19巻p85より)
そんな彼女もまた、たびたびウソをつきます。しかし、それは事件を起こす犯人達のように、他人を陥れる悪意のあるウソじゃありません。
無実の罪を着せられ、皆から疑われて辛いはずなのに「大丈夫だよ!」と言ったり(1話)
他の回では他人の花瓶を拾おうとして、ペンキで服が汚れてしまった時に「これは昨日家でついちゃったんだ!」と言ったり、他にもたくさん……。
彼女のウソは一貫して自分を鼓舞したり、他人を思いやる優しさから来るものです。そこに悪意は介在しない。めっちゃええ子や。これが、ゴクオーくんの言うオモシレーウソです。
この画像も1話。やべえ顔で気に入ります。
ゴクオーくんは何百年も人間を裁き続けた職業柄、人間界に来る前では「人間は愚か者」と思っていました。
しかし、気まぐれに人間界へ降り立った1話、小野天子のウソを見たことでウソ、そして人間に対して可能性を見出し、人間界に居つきます。地獄の仕事は溜まってるみたいでたまに帰ってます。小学生と閻魔大王の二足草鞋は大変だ。
そこから、ゴクオーくんは天子ちゃん以外の人間の成長にも注目していきます。
舌を引っこ抜いた犯人は反省し、その回から次以降の話で改心した姿を見せる。またウソをついてしまっても、そこから過ちを省みて変わっていく。時には犯人だった子が、その後他のウソツキを説得したりもする。
「ウソ」をきっかけに人間が変わるその様に、読者も惹かれるのですが、同時にゴクオーくんも魅入られていくのです。
(第74話、16巻p105より)
時に、天使やら地獄の部下やら神の使いやらヤバい力を持つ人外の者たちが色んな理由で人間を脅かしにくると、ゴクオーくんは全力で人間を守ろうとします。
その理由も、「人間のつくウソを見ていたいから」
人間が理不尽な世界であがく姿を描き、ゴクオーくんは閻魔大王と言う立場から、ウソをつく人間を肯定する。
そんな話のゴクオーくんのテーマのひとつは、まさに人間讃歌だと自分は思います。
余談ですが、ネウロとゴクオーくん、全体的な作風は全然違います。ネウロのブラックさをコロコロでやってはいけない。
でもネウロという魔人が弥子きっかけに人間の存在を見直していく感じとか人間讃歌というテーマのアプローチの仕方とかは共通するものがあると思います。あんまり他の作品引っ張り出すの良くないですが……つまりどっちもそれぞれのオリジナリティがあるから面白いのだ。
最新刊で、ゴクオーくんが敵に言った「オレっちは〜〜人間を〜〜〜する!!」ってめちゃくちゃ熱いセリフはゴクオーくんの、そしてウソゴクの集大成だと思いました。まだまだウソゴクは続きますが!!是非台詞の正体は本編で。
④人間と閻魔大王が友達になると言うこと
〜小野天子とゴクオーくんの関係から〜
この項ちょっとアレ。筆者の熱が。
(意識はしたつもりですがもしかしたら若干のネタバレになってしまってる可能性もアリ。避けたい人は次に飛んで下さい)
(第96話、20巻p148より)
ゴクオーくんと天子ちゃん。
彼らは前述したように相棒的な関係ですが、この2人の関係凄く綺麗なんですよ。時ににやにやし、時に息のあったコンビっぷりに感動する。あのネウロ読んでる方わかると思うんですけど、ネウロとヤコってベストコンビじゃないですか。恋愛とか関係無く。マジでそんな感じなんですよ。
まず、前の項で書きましたがゴクオーくんが人間に興味持ったきっかけが天子ちゃんがついた「面白いウソ」がきっかけってのが運命を感じます。
そこからゴクオーくんはちゃっかり小学校のクラスメイトになるんですけど、天子ちゃんが話しかける時度々ウソをついてからかう。2話に一度はこんなシーンがある。なんだ君達、超仲良しじゃん。話数が進むにつれて他のクラスメイトにも「あの2人まーたやってる…」みたいな扱いになってるんですよ。永遠にやっててくれ。
(第11話、3巻p65より)
これも繰り返しにはなりますが、天子ちゃんもウソをついたりします。自分を元気付けたり、周りを心配させないためのウソ。「私は大丈夫だよ!」痩せ我慢の、ゴクオーくんでなくても分かる優しく下手なウソ。
そんな時ゴクオーくんは2つのパターンがあります。一個は「天子ちゃんのウソをずっと見ていたかった」と嬉しそうに眺めてるパターン。微笑ましい。
(第10話、3巻p43より)
もう一つは、こういうパターン
これは、天子ちゃんが本当に一生懸命描いた絵が誰かに落書きされてしまい、ウソ暴きによる犯人探しも難航し皆に心配された天子ちゃんが「大丈夫だよ!」と言ったシーン。
怒るんですよ。(第14話、4巻p28より)
ゴクオーくんは閻魔大王として長年生きている貫禄からか、ガチギレしたり、焦るシーンはあんまりありません。(演技は結構ある)
人間が煽ってもケラケラ笑って煽り返しますし、ピンチに見える時も、余裕そうに笑って策を張ってたりするシーンが多いですね。ゴクオーくんが焦ってる場面は大抵誰にもどうにも出来ないパターンが多いので読者もマジで焦ります。
その数少ないガチギレシーンがコレ。天子ちゃんの言葉が悲しみを隠すためのものと理解した瞬間。
しかもその後にかける言葉がコレですよ。
こんな台詞ピンチな時にかけられたら泣きますよほんと。
ここから発奮して犯人を凄い勢いで追い詰めるゴクオーくんがマジでカッコいい。この話大好きですね。
守られるばっかじゃなくて、天子ちゃんが
(意図せず)ゴクオーくんの助けになる時もあります。
例えばウソ暴きが難航していた時。天子ちゃんは、犯人の大切なものを守ろうとして服にペンキがついてしまいます。それに対して「昨日ついちゃった!」というウソをつきます。優しい。
その大切なものを守ろうとした行動が、事件解明のヒントになります。その時のゴクオーくんの言葉が「ムダにはしねぇ」かっこいい。天子ちゃんが推理で役に立ってるのがいい。
他には、とあるキャラにウソ暴きの証拠を隠蔽されまくった時。ゴクオーくんは我を忘れてキレそうになります。
(第51話、11巻p136より)
それを止めたのが天子ちゃん。この後、ゴクオーくんを励ますことで冷静さを取り戻させ、結果ゴクオーくんは数々の証拠を潰されたにも関わらず、見事犯人を追い詰めます。
ゴクオーくんは人外なので普通に建物を破壊できるくらいの力は余裕であるのですが、それを知ってても尚ゴクオーくんを止めにいける天子ちゃんは精神的に強い。強いし、ゴクオーくんのことを信頼しているのも伝わってきます。
後ゴクオーくんが推理、バトル担当なのに対して、天子ちゃんが犯人、敵役の感情面のケア担当って役割分担がされている時があります。
基本ゴクオーくんと敵対するキャラに対し、彼は基本容赦なく対応する、対して天子ちゃんが寄り添っていくことで敵の心が救われる、って展開が何回かあります。
敵の心に寄り添い動かす、それはけして罪を厳格に裁くゴクオーくんだけでは出来ないことです。勿論、人外の敵と立ち向かうのは天子ちゃんだけでは不可能であり、互いに補完し合う良いとてもコンビだなと思います。
ネウロでも、ネウロが推理担当、弥子が犯人と接触・懐柔担当みたいな分担されていたのに近いですね。
あと、天子ちゃんがゴクオーくんのこと出し抜く回もあります。
ゴクオーくんの誕生日会を天子ちゃんが企画する回ですね。この話もゴクオーくんがクラスメイトに愛されててめちゃくちゃ微笑ましいので、細かいあらすじは読んでください!って感じなのですが、ラストシーンのここ好きなんですよ。
(第63話、14巻p64より)
珍しくゴクオーくんが素で驚いてる。
彼の感情を動かしたのが天子ちゃんなんですよ。
ゴクオーくんあんまり素の感情見せるシーンないんですよ。大体内面では冷静。
それを驚かせられるのが天子ちゃん。良い関係じゃないですか。
ゴクオーくんも天子ちゃんを信頼しています。厳しい展開の中、ゴクオーくんがどうしても天子ちゃんを疑わないといけなかったシーンがあるのですが、彼女の無実が判明した時めちゃくちゃゴクオーくんはほっとします。
(第75話、16巻p111より)
本当に天子ちゃんが犯人でないことを願ってた顔で、2人の関係の強さを感じました。
そんな絆を持つ2人ですが、ゴクオーくんって普段は天子ちゃん!ってちゃん付けしてすげーにこやかで友達みたいに接してるんですけど、内面では自分は閻魔大王で、天子ちゃんは人間って線引きちゃんとしてるっぽいんですよ。
だからか、ごく稀に「天子ちゃん!」じゃなく「小野天子」って言うシーンがあります。フルネーム呼び。めっちゃいい。人外と人間の関係好きな読者のツボをついてくる台詞じゃありませんか。
その台詞言ったうちの一回はめちゃくちゃ怖い顔で言ってて、天子ちゃんも怯えてるしで、えっこれどうなるんだ……!?と自分も震え上がりました。
つまり人外と人間ってお互い分かってるけど、それでも互いに信頼し切ってる関係が最高最高最高〜〜(ARuFa)
個人的にVSユーリィ君(敵)のクライマックスシーンが熱すぎて最高に好きです。天子ちゃん抱えてウソだよ〜ってトコ。シチュエーションがほんとにオタクが死ぬヤツ。
また、最新刊ではゴクオーくんが天子ちゃんに「もしかしたらオレっちたち……〇〇だったんじゃないのか?」というウソをつくシーンがあります。ウソですよ。でもこんなウソつける時点で最高のコンビな気がしてたまりません。
そんな最高なウソの是非最新刊で!
好きな話
ここでは上にあげた話以外にも好きな話をピックアップしていきます。ちなみに上の話は全部好きでおすすめです。
基本は一巻から読むのがおすすめです。ウソゴクの基本的な作風が分かります。
ですが、大筋はあれど基本1話完結であり、公式ツイートでこの様な表も呟かれたのでどこから読んでもハマれると思います。
気になる話があればその巻から買ってもいけると思います。長編はどれも好きでほんとに1番が選べません…。
第56話 「犯人は天子!?緊迫の学級会!!」(12巻収録)
最高傑作の話だと思う。
まず導入がハラハラするんですよ。
ゴクオーくんでの事件は基本人間が起こし、(漫画内の)人間に可能なトリックが犯行に使われます。当然、物理法則を無視したトリックは基本使われません。
しかし、事件が「人外の者」に企てられた際は別です。この事件の真相は読者に早々に明かされますが、歓迎会の飾りを壊したのは「小野天子に化けた地獄の生物」です。
当然、ゴクオーくんはこの真実をクラスの皆に言えません。地獄のことを知ってるのは天子ちゃんだけ。人間の彼らに、このファンタジーすぎる真相を話したところで誰が信じるでしょうか。このままでは天子ちゃんの無実の罪を証明することは不可能。ほぼ詰みです。
それでも諦めず、ゴクオーくんは学級会を提案します。「真犯人を指摘する」ということが封じられ、探偵役として致命的な状況。天子ちゃんの味方はゴクオーくんのみ。
学級会でみんなから疑われる嫌〜な空気もバッチリ描かれます。
嫌な沈黙だな〜!
特にここまで読んだ読者には、黙ってる彼らがただのモブではなく「あの回でメイン張った、こういう性格をしたあの子」って言うのが分かってるんですよ。みんななんだかんだでいい子だし、天子ちゃんとも普通に話していた。だからこそ、悪意などはなく「本当に天子ちゃんが犯人じゃないと言える証拠がない」から黙らざるを得ないと言うことが読み取れてキツい。
この理不尽で絶望的な状況を、2人は切り抜けられるのか。
中盤で2人の関係性が揺さぶられたり、後半の怒涛の反論、真相が人間に言えないこの事件にどう落とし所をつけるのか、どのようにどこをとっても名場面ばっかりです。
第17話 「友だちとココロの距離」(4巻収録)
ウソゴクはリアルな小学生の心理を描いた回も多く、この話もそれに該当します。
この話が描くのは天子ちゃんの親友ポジ対決。
新しく友達になった茂部さんも、転校した桐森さんもどちらもお互いの存在を不安に感じる。「あっちのが天子ちゃんと親しいんじゃないか……」と。
でも表面上はニコニコしている。女子3人組の微妙な友情の揺らぎをリアルに描いててうわあ……なんかあったなあ……とあの時の苦々しさを思い出しました。好きです。
最後のゴクオーくんの立ち回りも粋で好きです。
第68話「ホントかウソか!?ウワサの真実を辿れ!」(15巻収録)
ウソゴクは学校の備品壊した!と言った小さめの事件から、重めの事件を扱う時もあります。この話は中々エゲツない手法だな〜と思わされました。
悪い噂と言うとたんぽぽ食べてって曲思い浮かびません? 狂ってて名曲です。
この話は、噂が犯人が意図して流布してることが物語序盤で読者には明かされます。何故そんなことをしたのか、その流布の手法を知ると、中々生々しいと思わされました。ゴクオーくんも「アンタのウソは闇が深いぜ。舌洗って待ってろよ」と言うほどです。舌を洗うとはまた斬新な言い回しである。また、悪質な事件だからこそ、犯人のウソがバレた理由があまりに切ない。
また、犯人とゴクオーくんの対決だけでなく、本当かウソか分からない噂を聞かされた天子ちゃんの葛藤、言わば静かな戦いも見どころです。
コロナ禍で真偽の分からない情報が氾濫したり、ツイッターがデマ拡散防止のため引用リツイートがデフォになったりなど、色んな情報惑わされやすい、そんな大人の読者に対しても考えさせられるテーマでした。
第21話 「地獄が危機!?天子の波乱のバースデー」5巻収録
人外と人間の関係に注目した回。
まじっく快斗とかにもあったけど、キャラの誕生日祝う回って良いですよね。大抵ドタバタする奴。
ゴクオーくんが地獄でドタバタしている間、天子ちゃんはとあるキャラからゴクオーくんは人外、天子ちゃんはただの人間に過ぎないということが強調されます。
「約束はウソだよ〜」ってね!
このページの1コマ目は2人の関係のシビアな真実を表しています。友達だと思っていたけど、約束したはずのゴクオーくんは誕生日に来てくれない。(絶賛仕事中)ゴクオーくんとの立場の違いを知り不安に駆られる天子ちゃん。読者もかられる。
果たして、ゴクオーくんは来るのか…!
この話で扱ったテーマは、後に単行本のオマケでも触れられます。2人はずっと一緒にはいられない。この2人の関係性が最後どうなるのか、それもまたウソゴクの見どころの一つだと思います。
第95話「悪だくみの落とし穴」20巻収録
この話は演出がとてもワクワクする。
殺人公開放送、ならぬウソ暴き公開放送。
昨今YouTubeで色んな生配信をやっていると思いますが、そこで演者も予想外のトラブルが起きると、リスナーはこれからどうなるんだ!ととてもハラハラさせられます。と、同時に少しワクワクもして、これが臨場感というものなのでしょう。
この話も後半、利砂くんだけでなく読者にとっても予想外の放送へ進んでいきます。生配信のようなスリルが味わえることでしょう。
「延長放送といこーか♪」
99話「過去で未来を取り戻せ!!」21巻収録
最新刊の内容。詳しいあらすじは伏せますが、大きな見所は1話のゴクオーくん視点のモノローグが見れること。ゴクオーくんはあまり内面のモノローグを出さないので、99話、章のクライマックスということもあって時の積み重ねを感じられてめちゃくちゃ感慨深かった話です。ゴクオーくんも変わったんだなあ。
【最後に】
筆者の独自見解とか妄想も入っていそうなこの記事。言いたいのはウソツキ!ゴクオーくんを読んで下さい!ただそれだけです。
↓一話試し読み
結構偏った視点の記事であり、他にも章ボス達とゴクオーくんの関係とか地獄の部下達との信頼関係とか語りきれなかった見所は沢山あるので読んでみてください。
kindle版もあります。画像の記事元々個人の保存用に撮りまくってたんですけど、めちゃくちゃブレたり、折り目近くのセリフが撮りにくいやらで電子書籍はスクショできるからいいよな…と思った次第です。
この記事は、コロコロという媒体の特性上、中々大人が出会う機会がないのは勿体無いな〜〜と思いながら書きました。小学館漫画賞とかで大人の知名度上がってる感じはありますけどね!!
自分自身も、たまたまポケモン(オメガルビーアルファサファイア)の体験版目当てでコロコロ買った時に出会ったんですよ。多分それが無ければずっと知らなかった。ポケモンはすげえ。その後災害の影響でたまたま無料公開していたコロコロも読んで、「ゴクオーくん二回面白いなら絶対おもしれーわ」と思い全巻買いました。
なのでまあ、アニメ化してくれたらもっと知名度上がるかな〜〜と思いました。ウソです。純粋にアニメ化はして欲しいだけです。もう9年近くもやってるし良いじゃないですかコロコロさん!!コロコロオールスターアニメでゴクオーくんだけは動いてるからアニメ化もその勢いでさ!!(必死)