さくらももこさんのこと
遠くで雷が鳴っていると思ったら、しばらくして土砂降りの雨が降り始めた。そんな空模様だから、今日は「遠雷」についてでも書こうかなと思っていたところ、スマートフォンにニュース速報が飛び込んできた。
「さくらももこさん、乳がんで死去 享年53」。
寝耳に水とはこのことである。本当にびっくりした。
私にとってのさくらももこさんは、『ちびまる子ちゃん』や『コジコジ』の作者よりも、エッセイ集『もものかんづめ』の作者。
この本自体の初版は1991年のようだけれど、私が読んだのは2001年初版の文庫版。中学1年生の時にクラスでこの本について話した記憶があるので、初版本を読んだことになる。
これが、抱腹絶倒もの。誰かが書いたものを読んでこんなに笑い転げたのは、生まれて初めてのことだったと思う。
そして、たぶんこれが、私が「エッセイ」というものを意識した初めての経験。それまで読んでいたのは基本的に小説で、子供の私にとって「本=現実のことではない、創作の世界が描かれたもの」だった。
初めて意識的に出会った「エッセイ」というものは、(もしかしたら多少の創作的部分はありつつも)基本的には自分の体験を基にして綴ったもの。「自分のことをこんなふうに素直に書き綴っていいんだ」と思えたのが新鮮だった。そして素直に書くからこそ、いわゆる「文章力」が問われるだろうし、書かれた文章には書き手の人柄がより如実に表れる。
その意味で、『もものかんづめ』から見えてくるさくらさんは、どこか不器用で、でもとても一生懸命に生きる、そんな人だった。
今でこそ「この前もつい哲学の本を買ってしまって…」などと嘯く私だが、その一方でやはり、腹の底から笑えるようなことも大好きだ。
「エッセイスト」に憧れて、自分でもそうなりたいと思うようになり、つらつらとnoteにエッセイの習作のようなものを書き連ねているが、元を辿ればたぶんそこにはさくらさんの『もものかんづめ』がある。
今の私を知っている方からすると、私がこの本にそんなに思い入れがあるのを不思議に思われるかもしれない。それくらい底抜けに明るい作品。中学生の私にとってはまさに、世界がひっくり返るほど笑わせられるものだったのだ。
今度読み返す時は、笑いながらもしんみりしてしまうだろう。
とにかく今は、さくらさんに心からのお礼を言いたい。