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電話注文、AIだけで対応。自治体によるAI活用の事例も

当記事では人工知能(AI)が電話に応答し、注文まで完結する通信販売におけるシステムの導入が話題となっている。通信販売では電話がオペレーターにつながるまで時間がかかり、途中で電話を切る消費者も存在したという。このような機会損失を防ぐとともに、顧客の満足度を高めること。さらにオペレーターを問い合わせ対応等に振り向け、AIとオペレーターの分業により限られた人員を有効活用することを目的にした動きで、国内では初めてとのことだ。

AIと雇用については、2013年に英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フライ研究員が発表した『雇用の未来』という論文がある。同論文では、今後10~20年程度で、米国の47%の仕事が機械によって置き換えられる可能性があるとされている。テクノロジーの発達は人の仕事を奪い、大量の失業が発生すると予想する悲観的な人々もいる。エリック・ブリニョルフソン氏とアンドリュー・マカフィー氏の著書『ザ・セカンド・マシン・エイジ』では、産業革命以降のテクノロジーの発達を「ファースト・マシン・エイジ」と呼び、現在起こっているテクノロジーの変化を「セカンド・マシン・エイジ」と呼んでいる。一般的にテクノロジーの変化は定型的な業務を駆逐し、低スキルの人間の賃金は下がり、さらに雇用を奪うと考えられている。このような悲観的な見方もあるが、機械にはモラベックのパラドックスという考え方もある。モラベックのパラドックスとは、「コンピューターに知能テストを受けさせたりチェッカーをプレイさせたりするよりも、1歳児レベルの知覚と運動のスキルを与える方が遥かに難しいか、あるいは不可能である」というものである。すなわち、人間にとって簡単なことが機械には難しいというものである。雇用が機械に代替されるという悲観的な見方がある一方、機械などの技術と雇用におけるスキルは補完的な関係にあるものもある。個人のスキル水準が高い/低い人ほど、AIなどの機械が自身の生活や雇用に及ぼす影響をポジティブ/ネガティブに捉える傾向があるという調査結果もある。機械とスキルが代替的にある場合、雇用へのネガティブな影響が考えられる。一方、機械とスキルが補完的な関係にある場合、AIなどの機械による技術は労働者を助け、労働生産性を向上させる側面もある。個人やチーム、組織で行う多くの仕事は異なる作業を組み合わせて行われる。一つの作業の生産性の向上は全体の生産性を向上させる。さらに、賃金の上昇につながる仕事の存在もあるだろう。

日本企業におけるAIの活用状況のある調査によれば(下図参照)、AIを活用する企業は83%となっており、自社製品の強化に活用している企業の多くが自社製品・サービスに活用しているとの結果となっている。また、その半数以上の企業がAIの活用により期待以上の効果を得られたとのことだ。

© tashirokouji

さらに、AIの活用は企業だけでなく、行政においても活用している自治体がある。長野県塩尻市は2018年9月26日、AIによる24時間自動応答システムの学校チャットボット「しおじり先生」の運用を開始した。しおじり先生は、授業や教科書、学校生活など、同市の小中学校に関係する保護者などからの質問に24時間自動で回答するというものだ。現在、教育現場では教員の長時間労働の是正に向けて、各自治体で働き方改革の取り組みが実施されている。教育現場は教員の働き方も含めて、保護者のPTAなど非効率が指摘されることも多い。長野県塩尻市の学校チャットボットは、教員および保護者等の非効率の改善や保護者の利便性の向上等につながれば、他の自治体でも参考になることが考えられる。

機械によって代替される仕事、補完される仕事の存在により、格差等が大きな問題となることも考えられる。そのため、所得再分配や教育の役割はますます重要になるだろう。私たちの現在はこれまでよりも将来が不確実な時代でもある。しかし、テクノロジーは人間の可能性の拡張や新しい産業を生み出す。また、私たちの働き方は生産性向上などの変化もあるだろう。不確実であるが、変化を乗り越えることができれば楽しみな時代とも考えられる。テクノロジーにより、仕事と遊びの融合が到来する可能性もあるだろう。

【参考文献】

「AI活用、独自調査で判明した9つの事実」(日経×TECH、2018年10月9日)

「「AI失業」は起こらない」(山口慎太郎のブログ、2017年9月11日)

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO37920580Z11C18A1000000/

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