【疑問が多く残った対戦】プレミアリーグ考察 第25節 バーンリーvsアーセナル
この試合のアーセナルのビルドアップに疑問が残ったので考察していきたい。
疑問①計画的なポジションチェンジだったのか?
疑問②ベジェリンは3バックのうちの一枚で良かったのか?
疑問③ダブルボランチのポジショニング
大きく分けてこの疑問が残った。
まずは、簡単にお互いのチーム情報やメンバー、スタッツなどを見ていきたい。
●チーム情報
・バーンリー(ホームチーム)
9勝3分12負 得失点−10
プレミアリーグでは、チェルシーに負けて以降、上位レスターとユナイテッド相手に2連勝中である。
・アーセナル(アウェイチーム)
6勝13分6負 得失点−2
プレミアリーグでは、ユナイテッドに勝って以降、クリスタルパレス、シェフィールドユナイテッド、チェルシー相手に3連分け中である。
●スターティングメンバー
スターティングメンバーに関してはアルテタ就任以降多く見られている4−2−3−1であった。
対して相手のバーンリーは4−4−2であった。
単純に組み合わせれば、エジルのところが浮いてしまいフリーになる。
試合前のメンバー表を見る限りでは、アーセナルはこのエジルをどう使うのか、バーンリーはどのように消すのかという予測が立てられる。
●試合後スタッツ(Goal.comより抜粋)
項目 バーンリー:アーセナル
ポゼッション 43:57
シュート数 15:13
総パス数 324:462
パス成功数 245:372
タックル成功率 70%:76%
デュエル勝利 60:54
空中戦勝利 22:18
1vs1成功数 7:11
ポゼッションはアーセナルの方が多いがシュート数はバーンリーの方が多い。バーンリーは相手ゴール向かったダイレクトなプレーが多いことがわかる。
タックルの成功率としては、アーセナルの方が高いが、デュエル勝利数と空中戦勝利数はバーンリーの方が多い。
●試合の大まかな流れ
・前半
バーンリーは前半から前からプレスを掛けていた。スペースを消しながら圧迫をしていくよりもマンマークを基準としながらアーセナルにプレッシャーをかけていた。
アーセナルも序盤はバーンリーのプレッシングを掻い潜れてはいたが、途中から行き詰まり相手の得意なロングボールを蹴ってしまうという展開であった。
・後半
後半開始直後からバーンリーがアーセナルの背後のスペースを突く攻撃を仕掛けてくる。そのボールをうまく処理できないまま、バーンリーにセカンドボールを拾われ2次、3次攻撃をされてしまう。60分過ぎにエジル交代後、相手を相手陣地に押し込むシーンが増える。
お互いにあったチャンスを決めきれないまま試合終了となる。
【疑問①】計画的なポジションチェンジだったのか?
アーセナルはこの試合の基本フォーメーションは4−2−3−1であった。試合開始から大きくポジションチェンジをせずに攻撃をしていた。しかし、途中からポジションチェンジをしながら攻撃を始める。そこからボールがうまく前に進まなくなっていき、相手陣地に入ったとしても攻め急ぐ形になり、ボールを早く失い、カウンタープレスもできず、また攻撃を受けるという循環になってしまっていた。
そこで、この疑問が生まれる…
計画的なポジションチェンジだったのか?
アーセナルのビルドアップを見ていきたい。
試合開始直後2分、ムスタフィーから真ん中にいたエジルへのキーパス。そこからオーバメヤンにパスを出してからラカゼットのシュートという攻撃。(下記図)
この直後3分にもアーセナルゴール前で奪ったボールをジャカからエジルへパス。マルティネッリへ展開してから中盤でボールを繋ぎ、左サイドに展開してからサカのアーリークロスという展開。(下記図)
図に見られるようにどの選手も基本フォーメーション通りにポジションをとっていた。しかし、時間が経つにつれて変化していく。(下記図)
これは前半6分の図である。相手がゾーン2 あたりからプレッシングを仕掛けている。
アーセナルは3−4−3のような形になっている。
この試合でよく見られたのは…
・他の試合でもあるが左SBのサカが高い位置を取り、オーバメヤンが中へ
・エジルが右サイドへ開きマルティネッリが中へ入る
・ベジェリンは開くわけではなく中にポジションを取り、ルイス、ムスタフィーと3バックのような形
ここから考えるアーセナルの攻撃の予測として…
相手をアーセナル側から見て右サイドに寄せて、基本フォーメーションから浮いた位置であったエジルへボールを入れて、左サイドへ展開していくというものである。
しかし、途中からこの位置でボールがうまく回らなくなる。
理由が2つある。
・3バックの距離感
ルイス、ムスタフィー、ベジェリンの距離が近すぎて相手の2FWに簡単にスライドされてしまっている。
後ろでゆったり回しながら相手陣地に入るところを探そうとする時間がなく、簡単に寄せられてパスコースを限定されるようになってしまう。結局はそのまま無理にラカゼット、オーバメヤン、マルティネッリに入れなければならなくなってしまう。バーンリーはラフなボールに関してはディフェンスが厳しくいったり、MFがプレスバックして対応していた。
・バーンリーの右サイドの選手のプレッシング
バーンリーの右サイドの選手が時々プレッシングに来て3vs3の状況にもなっていた
サカが高い位置を取りバーンリーの右サイドバックがサカのことを監視することができ、サカとルイスとの距離が長かったので、パスをするのが難しい。
浮いているバーンリーの右サイドバックがプレッシングをするチャンスがあった。
ここからこの形のポジションチェンジは計画的なものだったのかと疑問が残る…
◎解決策◎3バックが相手の間を覗くことができるポジショニングを取れなかかったのか?
先程記述した通り、右サイドに寄りすぎるのではなく3バックのどの選手も相手の間にパスを出せるポジショニングを取れれば自然と3人の距離は広がるので2人のFWもプレッシャーをかけることが難しく、もしプレッシャーをかけ続けたとしてもフィジカル的に90分間保つのは難しい。
且、間にパスを出せるポジショニングをとると、相手(バーンリー)がどこかのパスコースを切ろうとするとどこかのパスコースが空いてしまう。(下記図)
前に出てきても間にパスを出されてしまうと、一気にプレッシャーラインを超えられてしまうのでなかなか前に出てくるのは難しい。
前に出て来れなくなったら余裕も持って相手陣地に入るところを探す時間を手に入れることができる。
【疑問②】ベジェリンは3バックのうちの一枚で良かったのか?
この試合の前半ベジェリンは、ビルドアップする時、3バックの一枚のようなポジションを取っていた。つまり後方からのパス出し、キーパスを出す役割を担うことになった。
しかし、途中でボールを引っ掛けたり、中盤でフリーになっているエジルを見つけられなかったりしていた。
その中でこの疑問が生まれた。
ベジェリンは3バックのうちの一枚で良かったのか?
上記にある疑問①にあるように3バックのようなポジショニングを取っていて且、3人の距離がとても近かった為、ボール出しをする充分な時間がなかったかもしれない。しかし、それでも何度もエジル、マルティネッリやラカゼットにボールが出せるところを出さずに下げたり、パスを出してもコントロールが難しいパスになってしまっていた。
しかし、後半はジャカが左サイドバックに入った為、ベジェリンが高い位置を取ることができて、ボールを出す方から受ける方になった為、攻撃的なプレーも増えて、ベジェリンとオーバメヤンがサイドで高い位置を取っていることから後半60分過ぎから相手を押し込むプレーができていた。特にオーバメヤンが右サイドで受けて、ベジェリンがインナーラップをして、ドリブルで仕掛けてシュートを打った75分のシーンは得意なプレーだったと思う。
このことからベジェリンは悪い選手だということが言いたいわけではなく、後半のようにビルドアップ時から高い位置を取るべきだったのではないかということだ。
選手のポジショニング、チームとしての枠組みを変えればより良く相手陣地に入っていけたのではないかということだ。
上記の図のようにベジェリンは高い位置をとって、ジャカがCBの位置に落ちる。
後半のようなポジショニングを取れば、ベジェリンやジャカも選手の特性を活かすことができる。ジャカが低い位置にいることによって左サイドへサイドを変えることもできるし、ジャカからボール出しをすることもできる。それにより前半から落ち着いてビルドアップして 相手陣地に入ることができて、バーンリーも前からのプレッシングをやめたかもしれない。後半、相手を押し込んでいる時はバーンリーのJロドリゲスもディフェンスに帰ってきていることもあった。つまり相手はFW1人だけ 残っている状況での守備になる為バーンリーのカウンターのリスクも下がる。
【疑問③】ダブルボランチのポジショニング
ダブルボランチはサッカーを壊すといつも思っているが、この試合でも同じようなことになったと思う。前半は特にそうだった。ジャカとグエンドゥージが横並びになっていて、味方へのパスコースを切っているし、もしボールを受けても相手のプレッシャーを思い切り受けるポジショニングを取っていた。
相手のMFラインの背後に多くの選手を配置していたということは相手のMFラインを超えることを目的としていたことがわかるがそれをするには横並びのボランチがいるとスペースが生まれにくくキーパスを通すことは難しい。
4−2−3−1のポジションを崩さずダブルボランチのままビルドアップをすると考えて…
ダブルボランチのうちどちらかは高い位置を取りもう一方のボランチにスペースを与える。その空けたスペースにもう一方のボランチが入る。
この試合で言えば、バーンリーのボランチはほとんどマンマークでジャカとグエンドゥージを見ていた。少しポジションを変えても受け渡すよりもついて行く方が多かった。マンマークでついてくるという前提のもと、ジャカが高い位置を取り、グエンドゥージがそのスペースに入る。これによりCBにパスコースを開けられるし、グエンドゥージが真ん中にポジションを取るため、サカへサイドチェンジができる。
ダブルボランチが横並びになるとディフェンス面は良いかもしれないが攻撃面だと難しい面も出てくる。特に相手がマンマークであれば自分が受けるより、縦関係になることによって味方がパスを受けるコースを作る動きも必要である。
【まとめ】
アルテタ就任以降アーセナルの試合を見るのが楽しい。引き分けが多く、今回のような試合もあるが、よくない試合にもとても興味が出る。
ここから一度落ち着く時間があるのでその後、どんな試合になるのかが本当に楽しみである。
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