○○から見たトランスジェンダーの私その③男友達のふっちゃんから見た私
「ちーとはバカ話、下ネタ、何でも話したし、女の子のいる店にも一緒に行きました」(ふっちゃん)
ちーのことを知ったのは10年以上前。ちーと自分の嫁さんが児童発達支援センターの同僚職員でした。嫁さんから「身体は女性だけど、心は男なんだよ」と、そんな感じで聞いていました。
嫁さんは、障害のある子どもたちの療育に携わる仕事をしていたこともあって、当時からLGBTQに関して知識もあったと思います。でも、その頃の自分は、LGBTQのことをよくわかっていませんでした。まあ結局障害? 病気? 言葉は悪いけど、男でも女でもないどっちつかずのヤツってこと? 会うまでは、そんな感じでちーのことを想像していました。
でも、実際にちーを見たとき、見た目はボーイッシュな女の子だけど、「自分は男だ!」というオーラ、決意みたいなものをすごく感じたんです。おお、こいつは男として生きようとしている。そう思いました。
ちーとはすぐに仲良くなりました。ちーが性別適合手術を受ける前から、ちーと自分は、お互いに何でも話せる男友達でした。
2人だけのときはバカ話ばかりです。
ある時、下ネタで盛り上がっていると、ちーが「オレの夢は、立ちバッ○すること」と言い出しました。だから、「アホか! お前そもそも、チン○ないし」と突っ込んでやりました。「いいか? ちーは女の子にすごくモテるだろ。もしもチン○あったら女遊びして、きっと最低なヤツになっていた。だから神様がチン○とってしまったんだ!」。そんなひどいことを言ったこともあります。ちーは「ふっちゃん、ひどいこと言うなあ!」と大笑いしていました。
ちーが結婚する前には、女の子のいる店にも一緒に行きました。自分が行きたくて誘ったんじゃないですよ。ちーがそういう場所に行ったことがないと言うから仕方なく、です。
キャバクラにセクキャバ、ランパブ……店の看板を見るちーは、メチャクチャハイテンションでした。キャッチに「お兄さん、遊んでいこうよ!」と声をかけられると、ニコニコ顔で「ふっちゃん、こういうとき、どうやって断ればいい?」って聞いてきました。ちーは、「男だと思って声をかけてもらえるのがうれしい!」と言っていました。
よし、そんなに喜ぶのなら……と、適当な店に入って、「ちー! この店では、こんなふうにして遊ぶんだ!」と教えてやりました。
もちろん、男がみんな女の子のいる店で遊びたいわけではないけど、あの時、ちーは遊んでみたいと思っていた。そして、友達がそう願うのなら、絶対に経験させてやりたかった。男としての欲望があるのに、男として生きることがずっと許されなかったちーが、男として知りたい、体験したいと思ったことにできる限り付き合ってやりたかったんです。
ちーとは10年以上の付き合いですが、LGBTQのこととか、正直今も自分はよく理解できていないと思います。確かなことは、ちーという1人の人間がいて、心と体のことで悩んでいた。そして、そいつは自分の友達だった。ただそれだけです。
性的マイノリティに対して「隣に住んでいるのもちょっと嫌」みたいな言い方をして問題になったエライ人がいましたよね。そういう偏見がある人は、ちーみたいなヤツに会ったことがないんだろうなと思います。ちーと会って、話したら、LGBTQに対する偏見はなくなるんじゃないかな。だいたい、嫌なヤツかどうかは、LGBTQかどうかとは関係ないですよ。
ちーが性別適合手術を受けて乳房も子宮もとった後、2人で銭湯に行ったんです。もちろん男風呂です。ちーはシリコンで作った人工のチン○(エピテーゼ)つけていました。自分もそんなのは初めて見たのですが、本物そっくりで「これならバレないなあ!」と言うと、ちーは「だろ?」と笑っていました。
「隣に住んでいるのもちょっと嫌」みたいな偏見をなくしていくためには、LGBTQについての正しい知識も必要なんだろうけど、その人自身を知ることも大切なんだろうなと思います。ちーは自分に何でも話してくれたし、自分もちーに何でも話してきた。ちーと友達になれて本当によかったと思っています。
★これまでの「○○から見たトランスジェンダーの私」はこちらから
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?