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カップリング表記に関する意識調査(アンケート)結果速報版

平成という時代はカップリング表記が普及・発展した時代でもありました。そして令和という新時代が始まり、ここに一つの時代の区切れ目を迎えたということで、カップリング表記に関する本格的な意識調査(アンケート)を実施しました。

実施要項

調査期間:2019/05/02(木)22:50 ~ 2019/05/10(金)24:00
調査方法:GoogleフォームによるWebアンケート
設問数 :17(+自由記入欄3)
回答件数:28,634件
無効回答:5件(送信中に回線が切れたなどで記録されていませんでした)
有効回答:28,629件

調査結果について

公開当初は統計的精度を踏まえて「有効回答500件」を目標値として設定し、調査を開始しました。ところが、結果はご覧の通り予想を遥かに超え、最初の1日で18,000件、1週間で28,000件を上回る規模の大調査となりました。数多くのみなさまのご協力、本当にありがとうございました。

ただ、それは嬉しい誤算だった一方で、調査の規模が大きくなり信頼性が高まったことが、このアンケートに「大きな意味」を与えることとなりました。

これからその調査結果を発表していきますが、1点だけご注意ください。

「多い意見が正しいわけではありません」

本当に当たり前のことで、括弧書きでドヤ感を出すのも恥ずかしいのですが、あくまで念のため、再度ご認識頂きながら楽しんでもらえれば嬉しいです。

大切なことなのでもう一回、今度は少し砕けた表現でお願いしますが、

「このアンケ棒で人を殴らないようお願いいたします」

カップリング表記は自分の「好き」を表現する言葉です。
相互理解のため、平和に仲良く使って頂ければと思います。

【あなたについて】

Q1.国籍

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日本語のアンケートでしたので、やはりほとんどが日本国籍の方でした。次いで多かったのは「台湾」「韓国」「中国」で、結果的に東アジア中心の調査となりました。

Q2.性別

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女性率が約95%と圧倒的に偏りました。個人的な観測範囲では近年男性もカップリング表記を書くケースが増えているので、「カップリング表記自体への興味度」や「百合に特化した設問がなかったこと」などが影響しているかもしれません。

Q3.年齢

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こちらは少し予想外の結果で、20代が約半数と最大勢力となっています。個人的には20代と30代は同じくらいかと思っていましたが、募集がTwitterのみだったことが影響してるかもしれません。Twitter自体のユーザ層と比較してみるとより傾向が見えてきそうです。それと今回60歳以上の方にもご回答頂いていて、個人的に普段接点のない層の方々ですので、とても嬉しいです。

Q4.好みのカップリング傾向(あてはまるものすべて)

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男性同士が9割以上。アンケート層の偏りが大きく現れています。ただその一方で、男女・女性同士もかなり多く、男性同士に特化している方のほうが少ないことが分かります。

それとこの回答、「その他」が1,500件以上もあり、みなさまの熱いパッションを感じました。詳細は同人誌に掲載予定ですが、人外とか無性もいいですよね。

【攻めと受け】

Q5.「A×B」は

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ここからが本題です。まずは基本的な表記から。「Aが攻め」でほぼ100%かと思いましたが、思ったより割れました。

「その他」の回答を見ると、「百合は攻め受けを意識しない」「響き・語呂で左右を決めている」「男女は攻め受けに関わらず左が男」などがありました。普段カップリング表記の調査をしているとどうしてもBLカップリングの表記を見ることが多いので、私も頭が固くなってるなと反省しています。

※次回改善ポイント:BL・百合・男女などで質問を分割

Q6.縦書きの表記は(画像は例)

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普段サークルカットを調査していていつも気になる表記なので質問させて頂きました。名前の書き始めに段差があれば上側が攻めだろうとは分かるのですが、画像のようにフラットだと「カップリング表記は左が攻め」なのか「縦書きは右から読むのが基本」なのか、どちらを意識して書いてるのか判然としません。

結果は「左が攻め」が多いですが、やはり少し割れました。私がこれまでサークルカットの調査をしたところでは、「縦書きは右が攻め」のケースが多かったので、この認識の差異は危険な気がしました。

総合的に見て、縦書き表記は誤解を招く可能性があるので、ご利用の際は注意が必要と思われます。

Q7.男性同士のカップリングで、作品中に性描写がある場合の「攻め」は

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カップリング表記を巡る課題の本丸、「肉体基準」「精神基準」の話です。アンケート結果は「挿入側が攻め」が大多数(83%)ではありますが、性描写がある場合でも必ずしも「挿入側が攻め」という認識ではないことが分かります。

Q8.男性同士のカップリングで、作品中に性描写がない場合の「攻め」は

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一方で「性描写がない」場合ですが、かなり回答が分かれました。これまでよく聞いたのは「性行為があった場合を想定して挿入側が攻め」なのですが、それでも6割程度に留まっています。「性描写がある」ケースと比較してみると、「攻め受けを意識しない」「その他」が大きく増えているので、性描写のない場合のカップリング表記については、相互理解の難度が高まっていることが分かります。少なくとも体操で言えばD難度以上はありそうです。

それと、完全に個人の感想ですが、研究発表などでまず「攻め」「受け」の定義をするのが難しいのはこの辺りの話が原因です。

【カップリング表記の記法】

Q9.「ABC」という表記は

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こちらも普段サークルカットを調査していて気になる表記です。アンケート開始時からツイッター上でも話題になっていましたが、ご覧の通り回答が大きく割れました。最多は「ABCのトリオ」だったものの、約4割と過半数には至らず。サンド型とドミノ型も一定の勢力はあるものの、決定打に欠ける結果となりました。

これまでの調査でよく見たのは「サンド型」で、例えば『リボーン』には「ツナサンド」、『黒子のバスケ』には「光サンド」などがあり、それらがABC型で書かれることがあります。このあたりは世代・作品・キャラによっても認識が変わってきそうです。

総合的に、「ABC表記」は使う際に注意が必要な表記となっています。

Q10.各記法に対する印象(感覚的に最も近いもの)

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ここは質問の選択肢がよくなかった所で、「友達以上恋人未満」という書き方が誤解を招いてしまったようです。理系的発想で「友達以上=友情関係も含む」意味で書いていましたが、素直に「友情関係」と書いた方が明確でした。個人的に「カップリング=恋愛要素を含む」という先入観に囚われていたようです。申し訳ありませんでした。

※次回改善ポイント:友達以上恋人未満→友情関係に変更

ただ、それを踏まえても記号によって印象の違いが現れていますので、これから順に見ていきたいと思います。

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×表記は肉体関係を想起する方が約8割。次いで恋愛関係が約2割とほぼこの2つが占めています。コミケには1987年から登場し、30年以上現役で使われてる表記だけあって、ある程度の統一認識は担保されているようです。

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❤表記は恋愛関係と肉体関係で真っ二つ。記号的にもラブラブ感満載なので、そのラブのイメージをどこにおくかで回答が分かれたものと思われます。

❤表記は×表記がまだ普及していない1980年代に最も多く使われた記法で、平成元年の1989年は全体の3割近くがこの表記でした。その一方で近年は全体の1%程度しかなく、感想欄では「初めて見た」という声もありました。

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「どれでもない」が多いのは質問がよくない証拠、ということで前述の選択肢の不備が大きく現れてしまった項目です。感想欄には「恋愛未満にも至らない友人・同僚などのコンビ」というご意見がありましたが、そのイメージが強いと推測されます。(詳細は再調査予定です)

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「どれでもない」が多いのは(略。本当に申し訳ありませんでした。感想欄を見ると、ほぼ+表記に近いイメージで「恋愛要素のないコンビ」の認識が強いようです。

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「どれでもない」が(略。そろそろ泣きそうになっていますが、真摯に受け止め、次回に活かしたいと思います。

/表記は「Slash」と呼ばれる古来から英語圏で使われている記法で、洋ドラ・洋画クラスタの方には馴染みがあるのではないでしょうか。コミケカタログでもほぼ特定ジャンルでのみ見かける表記です。

原義的には「&表記よりも恋愛的・性的なニュアンスを含む」とされているためか、今回の調査結果も肉体関係の割合が高くなっています。

ただ、よく言われることですが、英語圏のカップリング表記は攻め受けの認識が薄いらしく、/記号の左が攻め・右が受けとは限らないので注意が必要です。

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記号を使わない「連結表記」と呼ばれる記法で、2000年代・2010年代に最も多く使われている近年代表的なカップリング表記です。

回答の分布としては「A×B」に近い形ですが、「友達以上恋人未満」「どれでもない」が若干多く、×表記より広い意味で使われていることが分かります。つまり「単純にA×Bを短縮したもの」という認識ではない点に注意が必要です。

【リバ(リバーシブル)について】

Q11.あなたにとってリバは

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ここは表記とは関係なく好みの話です。時々ネット上で「左右固定」というキーワードで話題になっているので質問に入れてみました。

回答が大きく割れていますが、総合すると「カップリングによる」が過半数、「大好き・ok」が3割強、「NG」が1割強となっています。

少し安全側によった見方をすると、okが3割強ということは、何らかのNGパターンがあるのは7割弱となるので、リバの取り扱いには慎重になる必要がありそうです。(必要以上に萎縮する必要はないと思いますが)

Q12.「ABA」という表記を見た時、その成分比は?

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この質問の背景にあるのは、こちらも度々話題になる「ABA」と「BAB」に違いがあるのかという疑問です。

結果として最多は「A×BがメインでB×Aもある」という重み付けを意識した結果になりました。ただ、それでも過半数には至ってないこと、「同じくらい」も3割と多いことから、統一された認識とは言い難いです。

また、「その他」でよく見た回答は「Aが2人いる」というもので、正直完全に予想外でした。本当に同人の可能性は無限大ですね。

Q13.「ABA」という表記を見た時、その世界設定は?

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こちらはかなり偏りました。「ABA」と書いたら基本「同軸リバ」を想定されると考えたほうがいいでしょう。「その他」の回答には「同軸・別軸どちらもある」が多かったです。

【性別について】

Q14.男性キャラクターを女体化した際の表記方法で、最もしっくりくるのは

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まず最初に懺悔を。この設問には2つの欠点があります。1つ目は「女体化自体NG」は主旨と別軸の質問なので、選択肢として必要ありませんでした。少し混乱を招いてしまったようで申し訳ありません。2つ目は「にょたろ」を選択肢に入れ忘れたことです。「その他」でたくさんのご指摘を頂き、ありがとうございました。たしかに近年「にょ」は多いと思います。

※次回改善ポイント:「女体化自体NG」削除「にょたろ」追加

それを踏まえて結果を見ると、「♀」を使った表記が66%と全体の3分の2を占めています。サークルカットでもよく見る書き方で、女体化以外でもゲームジャンルで主人公の男女が選択できる場合にもよく♀記号が使われています。

特殊な例としては『NARUTO』の主人公ナルトは原作で女性に変身していることもあり「ナルコ」と固有の名称が与えられたりしています。同じく『銀魂』の銀時は「銀子」だったりと、作品によってはコンセンサスが取れている書き方もあります。ただ、「ナルコ」はあくまでおいろけの術で変身したものであって、女体化したナルトとは異なるという解釈もあるそうです。難しい。

Q15.女性×男性の表記(例:華子×太郎)は

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「その他」が多いのは質問がよくない証拠、ということで反省しています。この質問をした背景は、つい最近「女性×男性の表記はありえない」(肉体基準だから)というご意見を伺ったことです。そのため思想的に偏った選択肢になってしまい申し訳ありませんでした。

調査結果を見てみると、「ありえない」派の方もいらっしゃいますが、5%と少数派。過半数の方は「気にならない」となっています。その一方で、「違和感がある」も24%と多く、特に攻め受けを肉体基準とされている方には違和感があるのかもしれません。ただ、「その他」の回答には「女性が男性に挿入している(手段は応相談)」という解釈も多く、肉体基準の方にも矛盾なく受け入れられる土壌も育まれているようです。

※次回改善ポイント:「好き」を追加・「ふたなり」の観点を整理

【ナマモノについて】

Q16.ナマモノのカップリング表記をネット上に書くことについて

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定期的に話題になるナマモノについてですが、結果は「閲覧制限」が最多で約6割、次いで「推測できない表記」が3割弱となっています。主に検索避けを意識し、普段二次創作を見ないファンへ見せない、本人のエゴサに引っかからないという配慮かと思われます。

「その他」で多かったのは「上記2つの併用」、それと「ジャンル・本人による」でした。たしかにジャンルによっては日常的にカップリング表記のようなコンビ名が使われていたりするので、TLで見かけるたびに気になったりしています。

※次回改善ポイント:歴史上の人物(非存命)についての注意書き

Q17.ハンナマのカップリング表記(作中の役名での表記)をどこまでオープンに使っていいかは

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こちらは昨年特に話題になった件です。一時期はTLで毎日のように表記を見かけたので、以前に比べて認識が変わってきたのかと思い、質問させて頂きました。結果としては「ナマモノの基準に準じる」が最多、ほぼ同レベルで「ナマモノより緩いが二次元よりは制限」が続きました。

こちらもジャンル・作品による空気感の違いが大きいようで、「その他」の回答には「公式の動向による」「公式カップリングであればオープン」などがあり、「ハンナマ」と一概に括れないことが分かります。

【フリーダム欄】

あなたが現在ハマっているカップリング(沼)

多数の方にアツいプレゼンを頂き、本当にありがとうございます。表記ゆれなどは一旦考慮せず単純集計してみると、トップ10は↓になります。

ヴィク勇 236
赤安   235
兎虎     60
燭へし    49
どひふ    49
ひふど    47
切爆     43
降風     41
環壮     39
くにちょぎ  36

記法に注目すると、上位には記号を使わない「連結表記」しかありません。やはり現代では「好きなカップリング」と言われたら連結表記で書くのが一般的と言えるでしょう。

普段カップリング表記について気になっていること

こちらの自由記入欄に関して8,000人以上の方にご記入頂きました。ありがとうございます。自由記入欄にこんなにたくさん書いてあるアンケートは初めて見ました。感動です。正直、この件だけで論文が書けそうな量と濃度があります。

詳細は夏コミの新刊の方に書く予定ですが、ざっくり見たところ「カップリングとコンビとブロマンス」「肉体基準と精神基準」「固定擬態」「苗字と名前どっちとる問題」「3Pの書き方」「絵文字表記」あたりがトレンドのようです。

最後に、このアンケートに対するご意見・ご感想などありましたらご記入ください。

こちらについても5,000件近くのご記入を頂きました。ありがとうございます。当初は「壮絶に叩かれたらどうしよう」と不安に思っていましたが、実際には労いのお言葉が多く、救われた気持ちになりました。

もちろん、アンケートに関してのご意見につきましても全て読ませて頂き、次回以降の調査や今後の研究に活かしていきたいと思います。

速報版レポートは以上になります。詳細版レポートにつきましては、夏コミ(受かったら)新刊『カップリング表記史(仮)』に掲載予定です。

アンケートにご協力頂いたみなさま、本当にありがとうございました。

【2020/04/27追記】
アンケート結果の詳細をまとめた同人誌の通販を始めました。

「その他」回答の詳細や性別・年代別の集計結果については、こちらをご覧ください。実際に見てみると、かなり年代で回答が分かれていて興味深いです。

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タルト@カップリング表記研究家
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