茶ノ湯の掛物;006 彩鳳舞丹霄
彩鳳舞丹霄
さいほうたんしょうにまう
茶席にて
「まあ、なんとも、おめでたいお軸ですね・・・」
というだけで、終わらせるにはもったいない語だと思います。
彩鳳の鳳は「鳳凰」のことです。
皆さんは見たことがありますでしょうか。
ポケット●ンスターにも出てくるので、子どもたちとも共有できますね。
また、一万円札にも登場します。
中国神話の伝説の霊鳥で、頭は鶏、頷は燕、頸は蛇、背は亀、尾は魚で、色は黒・白・赤・青・黄の五色で、高さは六尺程とされています。
日本では背丈が4-5尺ほどで、頭と嘴が鶏、頸は蛇、胴体の前部が麟、後部が鹿、背は亀、頷は燕、尾は魚であるとも伝わっているようです。
今回の語にはまず、「五色絢爛な羽のある鳳凰」が登場します。
五色とは陰陽五行思想に基づくもので、木(青)、火(赤)、土(黄)、金(白)、水(黒)と呼応していると考えられます。
鳳凰は、霊泉だけを飲み、60~120年に一度だけ実を結ぶという竹の実のみを食べ、梧桐の木にしか止まらないという話も残っているようです。
また、鳳凰の卵は不老長寿の霊薬であるとされています。
ちなみに、、、
鳳は雄、凰は雌だそうです。
随分それてしまいましたが、
その鳳凰が何をしているのか、
「丹霄を舞っている」
のです。
舞うはなんとなくわかりますが、
「丹霄」とは何でしょう。
丹は硫化水銀、またその色を示します。辰砂の色です。
私たちのイメージできる身近なものとしては、
鳥居の色でしょうか。
また、色のほかに「道家における長寿・不老不死の薬」という意味もあるようです。
賢者の石と呼ばれることもあるようです。
こちらはハ●ーポッターの世界ですね。
また、そのほかに「真実の心」という意味も含むようです。
「霄」とは大空、はるかな天という意味があります。
つまり、、、
「彩鳳舞丹霄」とは
夜明けの朝焼けの大空に、
色彩鮮やかな鳳凰が舞うという情景を示しています。
また、丹を赤ととらず、澄み渡る空という解釈もあるようです。
この実に美しく、めでたき情景はまさに、心の情景であるように思います。
清らかなる心にこそ、こういう情景が宿るように感じます。
そして、
これは『五家正宗賛』の引用です。
師同佛鑑佛眼。
侍五祖於亭上。
夜坐。歸方丈。
燈已滅。
祖暗中云。各人下一轉語。
鑑云。彩鳳舞丹霄。
眼云。鐵蛇橫古路。
師云。看脚下。
祖云。滅吾宗者。
克勤爾。
(師、佛鑑、佛眼と、亭上に五祖に侍し、夜坐、方丈に帰るに、灯已滅す。祖、暗中に云く、各人一転語を下せと。鑑云く、彩鳳、丹霄に舞う。眼云く、鉄蛇、古路に横たわる。師云く、脚下を看よ。祖云く、吾宗を滅する者は、克勤のみ。)とあります。
暗闇の中、光がなく、色彩など全くない、修行中において、この句を発句したところに、この語の凄みがあるように感じます。
先行き見えぬ、苦しみの日々の中において、
どこに彩鳳がおり、どこに丹霄が広がっているのか、
何も見えない・・・
実は極近く、自分の心の中に
彩鳳が丹霄に舞っているのかもしれません。。。
そういう境地は、
今の自分にはまだまだ、本当に何もわかりません・・・
と、寒空の下でまるまるとふくらむ雀に、
鳳凰を夢見るあかつきのひと時です。。。
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