第13章 マッド・アイ・ムーディ 5
「写真まで載ってるぞ、ウィーズリー!」
マルフォイが新聞を裏返して掲げて見せた。
「君の両親が家の前で写ってる__もっとも、これが家と言えるかどうか!君の母親は少し減量したほうがよくないか?」
ロンは怒りで震えていた。みんながロンを見つめている。
「失せろ、マルフォイ」ハリーが言った。「ロン、行こう……」
「そうだ、ポッター、君は夏休みにこの連中のところに泊まったそうだね?」
マルフォイがせせら笑った。
「それじゃ、教えてくれ。ロンの母親は、ほんとにこんなデブチンなのかい?それとも単に写真映りかねぇ?」
「マルフォイ、君の母親はどうなんだ?」
ハリーが言い返した__ハリーもハーマイオニーも、ロンがマルフォイに飛びかからないよう、ロンのローブの後ろをがっちり押さえていた__。
「あの顔つきはなんだい?鼻の下に糞でもぶら下げているみたいだ。いつもあんな顔してるのかい?それとも単に君がぶら下がっていたからなのかい?」
マルフォイの青白い顔に赤味が差した。
「僕の母上を侮辱するな、ポッター」
「それなら、その減らず口を閉じとけ」ハリーはそう言って背を向けた。
バーン!
数人が悲鳴をあげた__ハリーは何か白熱した熱いものが頬をかすめるのを感じた__ハリーはローブのポケットに手を突っ込んで杖を取ろうとした。
しかし、杖に触れるよりも早く、二つ目のバーンだ。そして吼え声が玄関ホールに響き渡った。
「若造、そんなことをするな!」
ハリーが急いで振り返ると、ムーディ先生が大理石の階段をコツッ、コツッと下りてくるところだった。
杖を上げ、まっすぐに純白のケナガイタチに突きつけている。石畳を敷き詰めた床で、ちょうどマルフォイが立っていたあたりに、白イタチが震えていた。
玄関ホールに恐怖の沈黙が流れた。ムーディ以外は身動き一つしない。
ムーディがハリーのほうを見た__少なくとも普通の目のほうはハリーを見た。もう一つの目は引っくり返って、頭の後ろのほうを見ているところだった。
「やられたかね?」
ムーディが唸るように言った。低い、押し殺したような声だ。
「いいえ、外れました」ハリーが答えた。
「触るな!」ムーディが叫んだ。
「触るなって__何に?」ハリーは面食らった。
「おまえではない__あいつだ!」
ムーディは親指で背後にいたクラッブをグイと指し、唸った。
白ケナガイタチを拾い上げようとしていたクラッブは、その場に凍りついた。ムーディの動く目は、どうやら魔力を持ち、自分の背後が見えるらしい。
ムーディはクラッブ、ゴイル、ケナガイタチのほうに向かって、足を引きずりながらまたコツッ、コツッと歩き出した。
イタチはキーキーと怯えた声を出して、地下牢のほうにサッと逃げだした。
「そうはさせんぞ!」
ムーディが吼え、杖を再びケナガイタチに向けた__イタチは空中に二、三メートル飛び上がり、バシッと床に落ち、反動でまた跳ね上がった。
「敵が後ろを見せたときに襲うやつは気にくわん」
ムーディは低く唸り、ケナガイタチは何度も床にぶつかっては跳ね上がり、苦痛にキーキー鳴きながら、だんだん高く跳ねた。
「鼻持ちならない、臆病で、下劣な行為だ……」
ケナガイタチは脚や尻尾をばたつかせながら、なす術もなく跳ね上がり続けた。
「二度と__こんな__ことは__するな__」
ムーディはイタチが石畳にぶつかって跳ね上がるたびに、一語一語を打ち込んだ。
「ムーディ先生!」ショックを受けたような声がした。
マクゴナガル先生が、腕いっぱいに本を抱えて、大理石の階段を下りてくるところだった。
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