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第6章 移動キー 2

「どうしてこんなに早起きしなきゃいけないの?」
ジニーが目を擦りながらテーブルについた。
「結構歩かなくちゃならないんだ」おじさんが言った。
「歩く?」ハリーが言った。「え?僕たち、ワールドカップのところまで、歩いていくんですか?」
「いや、いや、それは何キロもむこうだ」ウィーズリーおじさんが微笑んだ。
「少し歩くだけだよ。マグルの注意を引かないようにしながら、大勢の魔法使いが集まるのは非常に難しい。わたしたちは普段でさえ、どうやって移動するかについては細心の注意を払わなければならない。ましてや、クィディッチ・ワールドカップのような一大イベントななおさらだ__」

「ジョージ!」
ウィーズリーおばさんの鋭い声が飛んだ。全員が飛び上がった。
「どうしたの?」
ジョージがしらばっくれたが、だれも騙されなかった。
「ポケットにあるものは何?」
「なんにもないよ!」
「嘘おっしゃい!」
おばさんは杖をジョージのポケットに向けて唱えた。
アクシオ!出てこい!
鮮やかな色の小さいものが数個、ジョージのポケットから飛び出した。
ジョージが捕まえようとしたが、その手をかすめ、小さいものはウィーズリーおばさんが伸ばした手にまっすぐ飛び込んだ。

「捨てなさいって言ったでしょう!」
おばさんはカンカンだ。紛れもなくあの「ベロベロ飴トン・タン・トフィー」を手に掲げている。
「全部捨てなさいって言ったでしょう!ポケットの中身を全部お出し。さあ、二人とも!」
情けない光景だった。どうやら双子はこの飴を、隠密にできるだけたくさん持ち出そうとしたらしい。「呼び寄せ呪文」を使わなければ、ウィーズリーおばさんはとうてい全部を見つけだすことができなかったろう。
アクシオ!出てこい!アクシオ!
おばさんは叫び、飴は思いもかけないところから、ピュンピュン飛び出してきた。ジョージのジャケットの裏地や、フレッドのジーンズの折り目からまで出てきた。
「僕たち、それを開発するのに六ヶ月もかかったんだ!」
「ベロベロ飴」を放り棄てる母親に向かって、フレッドが叫んだ。
「おや、ご立派な六ヶ月の過ごし方ですこと!」母親も叫び返した。
「『O・W・L試験ふくろうしけん』の点が低かったのも当然だわね」

そんなこんなで、出発のときはとても和やかとは言えない雰囲気だった。
ウィーズリーおばさんは、しかめっ面のままでおじさんの頬にキスしたが、双子はおばさんよりもっと恐ろしく顔をしかめていた。
双子はリュックサックを背負い、母親に口もきかずに歩き出した。
「それじゃ、楽しんでらっしゃい」おばさんが言った。
お行儀よくするのよ
離れていく双子の背中に向かっておばさんが声をかけたが、二人は振り向きもせず、返事もしなかった。

「ビルとチャーリー、パーシーはお昼ごろそっちへやりますから」
おばさんがおじさんに言った。おじさんは、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニーを連れて、ジョージとフレッドに続いて、まだ暗い庭へと出ていくところだった。

外は肌寒く、まだ月が出ていた。右前方の地平線が鈍い緑色に縁取られていることだけが、夜明けの近いことを示している。
ハリーは、何千人もの魔法使いがクィディッチ・ワールドカップの地を目指して急いでいる姿を想像していたので、足を速めてウィーズリーおじさんと並んで歩きながら聞いた。
「マグルたちに気づかれないように、みんないったいどうやってそこに行くの?」
「組織的な大問題だったよ」
おじさんがため息をついた。

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