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第12章 ポリジュース薬 1

二人は石の螺旋階段の一番上で降り、マクゴナガル先生が扉を叩いた。音もなく扉が開き、二人は中に入った。マクゴナガル先生は待っていなさいと、ハリーをそこに一人残し、どこかに行った。

ハリーはあたりを見回した。今学期になってハリーはいろいろな先生の部屋に入ったが、ダンブルドアの校長室が、ダントツに一番おもしろい。学校からまもなく放り出されるのではないかと、恐怖で縮み上がっていなかったら、きっとハリーは、こんなふうに、じっくりと部屋を眺めるチャンスができて、とても嬉しかったことだろう。

そこは広くて美しい円形の部屋で、おかしな小さな物音で満ち溢れていた。紡錘形の華奢な脚がついたテーブルの上には、奇妙な銀の道具が立ち並び、クルクル回りながらポッポッと小さな煙を吐いている。壁には歴代の校長先生の写真が掛かっていたが、額縁の中でみんなすやすや眠っていた。大きな鉤爪脚の机もあり、その後ろの棚には、みすぼらしいボロボロの三角帽子が載っている__「組分け帽子」だ。

ハリーは眠っている壁の校長先生たちをそーっと見渡した。帽子を取って、もう一度かぶって見ても、かまわないだろうか?ハリーはためらった。かまわないだろう。ちょっとだけ…確認するだけなんだ。僕の組分けは正しかったのかどうかって__。

ハリーはそっと机の後ろに回り込み、棚から帽子を取り上げ、そろそろとかぶった。帽子が大き過ぎて、前のときもそうだったが、今度も、目の上まで滑り落ちてきた。ハリーは帽子の内側の闇を見つめて、待った。すると、かすかな声がハリーの耳にささやいた。
「何か、思いつめてるね?ハリー・ポッター」
「えぇ、そうです」ハリーは口ごもった。
「あの__おじゃましてごめんなさい__お聞きしたいことがあって__」
「私が君を組分けした寮が、まちがいではないかと気にしてるね」帽子はさらりと言った。
「さよう…君の組分けは特に難しかった。しかし、わたしが前に言った言葉は今も変わらない__」ハリーは心が躍った。
「__君はスリザリンでうまくやれる可能性がある
ハリーの胃袋がズシンと落ち込んだ。帽子のてっぺんをつかんでぐいっと脱ぐと、薄汚れてくたびれた帽子が、だらりとハリーの手からぶら下がっていた。気分が悪くなり、ハリーは帽子を棚に押し戻した。
「あなたはまちがっている」
動かず物言わぬ帽子に向かって、ハリーは声を出して話しかけた。帽子はじっとしている。ハリーは帽子を見つめながらあとずさりした。ふと、奇妙なゲッゲッという音が聞こえて、ハリーはくるりと振り返った。

ハリーは一人きりではなかった。扉の裏側に金色の止まり木があり、羽を半分むしられた七面鳥のようなよぼびよぼの鳥が止まっていた。ハリーがじっと見つめると、鳥はまたゲッゲッと声をあげながら邪悪な目つきで見返した。ハリーは鳥が重い病気ではないかと思った。目はどんよりとし、ハリーが見ている間にもまた尾羽が二、三本抜け落ちた。
__ダンブルドアのペット鳥が、僕の他には誰もいないこの部屋で死んでしまったら、万事休すだ、僕はもうダメだ__そう思った途端、鳥が炎に包まれた。

ハリーは驚いて叫び声をあげ、あとずさりして机にぶつかった。どこかにコップ一杯の水でもないかと、ハリーは夢中で周りを見回した。が、どこにも見当たらない。その間に鳥は火の玉となり、一声鋭く鳴いたかと思うと、次の瞬間、跡形もなくなってしまった。一握りの灰が床の上でブスブスと煙を上げているだけだった。

校長室のドアが開いた。ダンブルドアが陰鬱な顔をして現れた。


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