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第8章 絶命日パーティ 2

ミセス・ノリス__管理人のアーガス・フィルチが、生徒たちとの果てしなき戦いに、いわば助手として使っている、骸骨のような灰色猫だ。
「ハリー、早くここを立ち去る方がよい」即座にニックが言った。
「フィルチは機嫌が悪い。風邪を引いた上、三年生の誰かが起こした爆発事故で、第五地下牢の天井いっぱいに蛙の脳みそがくっついてしまったものだから、フィルチは午前中ずっと、それを拭き取っていた。もし君が、そこら中に泥をボトボト垂らしているのをみつけたら…」
「わかった」ハリーはミセス・ノリスの非難がましい目つきから逃れるように身を引いたが、遅かった。飼い主と性悪猫との間に不思議な絆があるかのようにアーガス・フィルチがその場に引き寄せられ、ハリーの右側の壁にかかったタピストリーの裏から突然飛び出した。規則破りはいないかと鼻息も荒く、そこら中をギョロギョロ見回している。頭を分厚いタータンの襟巻でぐるぐる巻きにし、鼻は異常にどす赤かった。

「汚い!」
フィルチが叫んだ。ハリーのクィディッチのユニフォームから、泥水が滴り落ちて水溜りになっているのを指差し、頬をピクピク痙攣させ、両目が驚くほど飛び出していた。
「あっちもこっちもめちゃくちゃだ!ええい、もうたくさんだ!ポッター、ついてこい!」
ハリーは暗い顔で「ほとんど首無しニック」にさよならと手を振り、フィルチのあとについてまた階段を下りた。泥だらけの足跡が往復で二倍になった。

ハリーはフィルチの事務室に入ったことがなかった。そこは生徒たちがなるべく近寄らない場所でもあた。薄汚い窓のない部屋で、低い天井からぶら下がった石油ランプが一つ、部屋を照らしていた。魚のフライの臭いが、かすかにあたりを漂っている。周りの壁に沿って木製のファイル・キャビネットが並び、ラベルを見ると、フィルチが処罰した生徒一人一人の細かい記録が入っているらしい。フレッドとジョージはまるまる一つの引き出しを占領していた。
フィルチの机の後ろの壁には、ピカピカに磨き上げられた鎖や手枷が一揃い掛けられていた。生徒の足首を縛って天井から逆さ吊りにすることを許して欲しいと、フィルチがしょっちゅうダンブルドアに懇願していることは、みんな知っていた。

フィルチは机の上のインク瓶から羽ペンを鷲掴みにし、羊皮紙を探してそこら中引っかき回した。
「くそっ」フィルチは怒り狂って吐き出すように言った。
「煙の出ているドラゴンのでかい鼻くそ…蛙の脳みそ…ねずみの腸…もううんざりだ…見せしめにしてくれる…書類はどこだ…よし…」
フィルチは机の引き出しから大きな羊皮紙の巻紙を取り出し、目の前に広げ、インク瓶に長い黒い羽ペンを突っ込んだ。
名前…ハリー・ポッター…罪状…」
「ほんのちょっぴりの泥です!」ハリーが言った。
「そりゃ、おまえさんにはちょっぴり泥でござんしょうよ。だけどこっちは一時間も余分に床をこすらなけりゃならないんだ!」
団子鼻からゾローッと垂れた鼻水を不快そうに震わせながらフィルチが叫んだ。
「罪状…城を汚した…ふさわしい判決…」
鼻水を拭き拭き、フィルチは目をすがめてハリーの方を不快げに眺めた。ハリーは息をひそめて判決が下るのを待っていた。

フィルチがまさにペンを走らせようとしたとき、天井の上でバーン!と音がして、石油ランプがカタカタ揺れた。
「ピーブズめ!」フィルチは唸り声をあげ、羽ペンに八つ当たりして放り投げた。
「今度こそ取っ捕まえてやる。今度こそ!」
はりーの方を見向きもせず、フィルチはぶざまな走り方で事務室を出て行った。ミセス・ノリスがその脇を流れるように走った。

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