見出し画像

第7章 穢れた血と幽かな声 6

バーンという大きな音が競技場にこだまし、緑の閃光が、ロンの杖先ではなく反対側から飛び出し、ロンの胃のあたりに当たった。ロンはよろめいて芝生の上に尻もちをついた。
「ロン!ロン!大丈夫?」ハーマイオニーが悲鳴をあげた。
ロンは口を開いたが、言葉が出てこない。くぁりにとてつもないゲップが一発と、ナメクジが数匹ボタボタと膝にこぼれ落ちた。

スリザリン・チームは笑い転げた。フリントなど、新品の箒にすがって腹をよじって笑い、マルフォイは四つん這いになり、拳で地面を叩きながら笑っていた。グリフィンドールの仲間は、ヌメヌメ光る大ナメクジを次々と吐き出しているロンの周りに集まりはしたが、誰もロンに触れたくはないようだ。
「ハグリッドのところに連れていこう。一番近いし」
ハリーがハーマイオニーに呼びかけた。ハーマイオニーは勇敢にもうなずき、二人でロンの両側から腕をつかんで助け起こした。
ハリー、どうしたの?ねえ、どうしたの?病気なの?でも君なら治せるよね?」
コリンがスタンドから駆け下りてきて、グラウンドから出て行こうとする三人にまつわりついて周りを飛び跳ねた。ロンがゲボッと吐いて、またナメクジがボタボタと落ちてきた。
「おわぁー」コリンは感心してカメラを構えた。
「ハリー、動かないように押さえててくれる?」
「コリン、そこをどいて!」
ハリーはコリンを叱りつけ、ハーマイオニーと一緒にロンを抱えてグラウンドを抜け、森の方に向かった。

森番の小屋が見えてきた。
「もうすぐよ、ロン。すぐ楽になるから…もうすぐそこだから…」
ハーマイオニーがロンを励ました。

あと五、六メートルというときに、小屋の戸が開いた。が、中から出てきたのはハグリッドではなかった。今日は薄い藤色のローブを纏って、ロックハートがさっそうと現れた。
「早く、こっちに隠れて」
ハリーはそうささやいて、脇の茂みにロンを引っ張り込んだ。ハーマイオニーはなんだか渋々従った。
「やり方さえわかっていれば簡単なことですよ」
ロックハートが声高にハグリッドに何か言っている。
「助けてほしいことがあれば、いつでも私のところにいらっしゃい!私の著書を一冊進呈しましょう__まだ持っていないとは驚きましたね。今夜サインをして、こちらにおくりますよ。では、おいとましましょう!」
ロックハートは城の方にさっそうと歩き去った。

ハリーはロックハートの姿が見えなくなるまで待って、それからロンを茂みの中から引っ張り出し、ハグリッドの小屋の戸口まで連れて言った。そして慌しく戸を叩いた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?