見出し画像

第21章 ハーマイオニーの秘密 7

「やる?」ハリーが囁いた。
「だめ!」とハーマイオニー。
「今バックビークを連れ出したら、委員会の人たちはハグリッドが逃がしたと思うわ!外に繋がれているところを、あの人たちが見るまでは待たなくちゃ!」
「それじゃ、やる時間が六十秒くらいしかないよ」
不可能なことをやっている、とハリーは思いはじめた。

そのとき、陶器の割れる音が、ハグリッドの小屋から聞こえてきた。
「ハグリッドがミルク入れを壊したのよ」ハーマイオニーが囁いた。「もうすぐ、私がスキャバーズを見つけるわ__」

たしかに、それから数分して、二人はハーマイオニーが驚いて叫ぶ声を聞いた。
「ハーマイオニー」ハリーは突然思いついた。「もし、僕たちが__中に飛び込んで、ペティグリューを取っ捕まえたらどうだろう__」
「だめよ!」ハーマイオニーは震え上がって囁いた。
「わからないの?私たち、もっとも大切な魔法界の規則を一つ破っているところなのよ!時間を変えるなんて、誰もやってはいけないことなの。だーれも!ダンブルドアの言葉を聞いたわね。もし誰かに見られたら__」
「僕たち自身とハグリッドに見られるだけじゃないか!}
「ハリー、あなた、ハグリッドの小屋に自分自身が飛び込んでくるのを見たら、どうすると思う?」
「僕__たぶん気が狂ったのかなと思う。でなければ、何か闇の魔術がかかってると思う__」
「その通りよ!事情が理解できないでしょうし、自分自身を襲うこともありうるわ!わからないの?
マクゴナガル先生が教えてくださったの。魔法使いが時間にちょっかいを出したとき、どんなに恐ろしいことが起こったか……何人もの魔法使いが、ミスを犯して、過去や未来の自分自身を殺してしまったのよ!」
「わかったよ!ちょっと思いついただけ。僕、ただ考えて__」
しかし、ハーマイオニーはハリーを小突いて、城の方を指差した。
ハリーは首を少し動かして、遠くの正面玄関をよく見ようとした。
ダンブルドア、ファッジ、年老いた委員会のメンバー、それに死刑執行人のマクネアが石段を下りてくる。

「間もなく私たちが出てくるわよ!」ハーマイオニーが声をひそめた。
まさに、間もなく、ハグリッドの小屋の裏口が開き、ハリーは自分自身と、ロンとハーマイオニーがハグリッドと一緒に出てくるのを見た。
木の陰に立って、かぼちゃ畑の自分自身の姿を見るのは、いままで感じたこともない、まったく奇妙な感覚だった。

「大丈夫だ、ビーキー。大丈夫だぞ……」
ハグリッドがバックビークに話しかけている。それからハリー、ロン、ハーマイオニーに向かって「行け。もう行け」と言った。
「ハグリッド、そんなことできないよ__」
「僕たち、ほんとうは何があったのか、あの連中に話すよ__」
「バックビークを殺すなんて、ダメよ__」
「行け!おまえさんたちが面倒なことになったら、ますます困る!」
ハリーが見ていると、かぼちゃ畑のハーマイオニーが「透明マント」をハリーとロンにかぶせた。
「急ぐんだ。聞くんじゃねえぞ……」
ハグリッドの小屋の戸口を叩く音がした。死刑執行人の一行の到着だ。
ハグリッドは振り返り、裏戸を半開きにして小屋の中に入っていった。

いいなと思ったら応援しよう!