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第18章 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ 4
「あわや、ということがあった。何回もね。あとになってみんなで笑い話にしたものだ。若かったし、浅はかだった__自分たちの才能に酔っていたんだ。
もちろん、ダンブルドアの信頼を裏切っているという罪悪感を、わたしは時折感じていた……ほかの校長なら決して許さなかっただろうに、ダンブルドアはわたしがホグワーツに入学することを許可した。
わたしと周りの者の両方の安全のために、ダンブルドアが決めたルールを、わたしが破っているとは、夢にも思わなかっただろう。わたしのだめに、三人の学友を非合法の『動物もどき』にしてしまったことを、ダンブルドアは知らなかった。しかし、みんなで翌月の冒険を計画するたびに、わたしは都合よく罪の意識を忘れた。
そして、わたしはいまでもそのときと変わっていない……」
ルーピンの顔がこわばり、声には自己嫌悪の響きがあった。
「この一年というもの、わたしは、シリウスが『動物もどき』だとダンブルドアに告げるべきかどうか迷い、心の中でためらう自分と闘ってきた。
しかし、告げはしなかった。なぜかって?それは、わたしが臆病者だからだ。告げれば、学生時代に、ダンブルドアの信頼を裏切っていたと認めることになり、わたしがほかの者を引き込んだと認めることになる……ダンブルドアの信頼がわたしにとってはすべてだったのに。
ダンブルドアは少年のわたしをホグワーツに入れてくださったし、大人になっても、すべての社会から締め出され、正体が正体なので、まともな仕事にも就けないわたしに、職場を与えてくださった。
だから、わたしはシリウスが学校に入り込むのに、ヴォルデモートから学んだ闇の魔術を使っているに違いないと思いたかったし、『動物もどき』であることは、それとはなんの関わりもないと自分に言い聞かせた……だから、ある意味ではスネイプの言うことが正しかったわけだ」
「スネイプだって?」ブラックが鋭く聞いた。初めてスキャバーズから目を離し、ルーピンを見上げた。
「スネイプがなんの関係がある?」
「シリウス、スネイプがここにいるんだ」ルーピンが重苦しく言った。「あいつもここで教えているんだ」
ルーピンはハリー、ロン、ハーマイオニーを見た。
「スネイプ先生はわたしたちと同期なんだ。わたしが『闇の魔術の防衛術』の教職に就くことに、先生は強硬に反対した。
ダンブルドアに、わたしは信用できないと、この一年間言い続けていた。スネイプにはスネイプなりの理由があった……それはね、このシリウスが仕掛けた悪戯で、スネイプが危うく死にかけたんだ。その悪戯にはわたしも関わっていた__」
ブラックが嘲るような声を出した。
「当然の見せしめだったよ」ブラックがせせら笑った。「こそこそ嗅ぎ回って、我々のやろうとしていることを詮索して……我々を退学に追い込みたかったんだ……」
「セブルスはわたしが月に一度どこに行くのか非常に興味を持った」
ルーピンはハリー、ロン、ハーマイオニーに向かって話し続けた。
「わたしたちは同学年だったんだ。それに__つまり__ウム__お互いに好きになれなくてね。セブルスはとくにジェームズを嫌っていた。妬み、それだったと思う。クィディッチ競技のジェームズの才能をね……とにかく、セブルスはある晩、わたしが校医のポンフリー先生と一緒に校庭を歩いているのを見つけた。ポンフリー先生はわたしの変身のために『暴れ柳』の方に引率していくところだった。
シリウスが__その__からかってやろうと思って、木の幹のコブを長い棒でつつけば、あとをつけて穴に入ることができるよ、と教えてやった。
そう、もちろん、スネイプは試してみた__もし、スネイプがこの屋敷までつけてきていたら、完全に人狼になりきったわたしに出会っただろう__しかし、君のお父さんが、シリウスのやったことを聞くなり、自分の身の危険も顧みず、スネイプのあとを追いかけて、引き戻したんだ……しかし、スネイプは、トンネルのむこう側にいるわたしの姿をチラリと見てしまった。
ダンブルドアが、決して人に言ってはいけないと口止めした。だが、そのときから、スネイプはわたしが何者なのかを知ってしまった……」
「だからスネイプはあなたが嫌いなんだ」ハリーは考えながら言った。「スネイプはあなたもその悪ふざけに関わっていたと思ったわけですね?」
「その通り」ルーピンの背後の壁のあたりから、冷たい嘲けるような声がした。
セブルス・スネイプが「透明マント」を脱ぎ捨て、杖をピタリとルーピンに向けて立っていた。