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第8章 絶命日パーティ 3

ピーブズはこの学校のポルターガイストだ。ニヤニヤしながら空中を漂い、大騒ぎを引き起こしたり、みんなを困らせるのを生き甲斐にしている厄介者だった。ハリーはピーブズが好きではなかったが、今はそのタイミングのよさに感謝しないわけにはいかなかった。ピーブズが何をしでかしたにせよ(あの音では今度は何かとても大きな物を壊したようだ)、フィルチがそちらに気を取られて、ハリーのことを忘れてくれるかもしれない。

フィルチが戻るまで待たなきゃいけないだろうな、と思いながら、ハリーは机の脇にあった虫食いだらけの椅子にドサッと腰掛けた。机の上には書きかけのハリーの書類の他に、もう一つ何かが置いてあった。大きな、紫色の光沢のある封筒で、表に銀文字で何か書いてある。ドアをチラリと見て、フィルチが戻ってこないことを確かめてから、ハリーは封筒を取り上げて文字を読んだ。

クイックスペル
KWIKSPELL
初心者のための
魔法速習通信講座

興味をそそられて、ハリーは封筒を指でポンとはじいて開け、中から羊皮紙の束を取り出した。最初のページには、丸みのある銀文字でこう書いてあった。

現代魔法の世界についていけないと、感じていませんか?
簡単な呪文もかけられないことで、言い訳に苦労していませんか?
杖の使い方がなっていないと、冷やかされたとはありませんか?
お任せください!
クイックスペルはまったく新しい、誰にでもできる、すぐに効果が上がる、楽な学習コースです。何百人という魔法使いや魔女がクイックスペル学習法に感謝しています!
トップシャムのマダム・Z・ネットルズのお手紙
「私は呪文がまったく覚えられず、私の魔法薬は家中の笑い者でした。でも、クイックスペル・コースを終えたあとは、パーティの花形はこの私!友人が発光液のつくり方を教えてくれと拝むようにして頼むのです」
ディズベリーのD・J・プロッド魔法戦士のお手紙
「妻は私の魔法呪文が弱々しいとあざ笑っていました。でも、貴校のすばらしいコースを一か月受けた後、見事、妻をヤクに変えてしまいました!クイックスペル、ありがとう!」

ハリーはおもしろくなって、封筒の中身をぱらぱらめくった__いったいどうしてフィルチはクイックスペル・コースを受けたいんだろう?彼はちゃんとした魔法使いではないんだろうか?ハリーは第一科を読んだ。「杖の持ち方(大切なコツ)」。そのとき、ドアの外で足を引きずるような音がして、フィルチが戻ってくるのがわかった。ハリーは羊皮紙を封筒に戻し、机の上に放り投げた。ちょうどドアが開いたときだった。

フィルチは勝ち誇っていた。
「あの『姿をくらます飾り棚』は非常に値打ちのあるものだった!」
フィルチはミセス・ノリスに向かっていかにも嬉しそうに言った。
「なあ、おまえ、今度こそピーブズめを追い出せるなぁ」
フィルチの目がまずハリーに、それから矢のようにクイックスペルの封筒へと移った。ハリーは「しまった」と思った。封筒は元の位置から六十センチほどずれたところに置かれていた。

フィルチの青白い顔が、レンガのように赤くなった。フィルチの怒りが津波のように押し寄せるだろうと、ハリーは身構えた。フィルチは机のところまで不格好に歩き、封筒をさっと取り、引き出しに放り込んだ。
「おまえ、もう…読んだか?__」フィルチがぶつぶつ言った。
「いいえ」ハリーは急いで嘘をついた。
フィルチはごつごつした両手を絞るように握り合わせた。
「おまえがわたしの個人的な手紙を読むとわかっていたら…わたし宛の手紙ではないが…知り合いのものだが…それはそれとして…しかし…」
ハリーは唖然としてフィルチを見つめた。フィルチがこんなに怒ったのは見たことがない。目は飛び出し、垂れ下がった頬の片方がピクピク痙攣して、タータンチェックの襟巻までも、怒りの形相を際立たせていた。
「もういい…行け…ひとことも漏らすな…もっとも…読まなかったのなら別だが…さあ、行くんだ。ピーブズの報告書を書かなければ…行け…」
なんて運がいいんだろうと驚きながら、ハリーは急いで部屋を出て、廊下を渡り、上の階へと戻った。なんの処罰もなしにフィルチの事務所を出られたなんて、開校以来の出来事かもしれない。

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