第15章 ボーバトンとダームストラング 3
「『O・W・L』、一般に『ふくろう』と呼ばれる『普通魔法レベル試験』が近づいています__」
「『O・W・L』を受けるのは五年生になってからです!」ディーン・トーマスが憤慨した。
「そうかもしれません、トーマス。しかし、いいですか。皆さんは十二分に準備をしないといけません!このクラスでハリネズミをまともな針山に変えることができたのは、ミス・グレンジャーただ一人です。
お忘れではないでしょうね、トーマス、あなたの針山は、何度やっても、だれかが針を持って近づくと、怖がって、丸まってばかりいたでしょう!」
ハーマイオニーはまた頬を染め、あまり得意げに見えないよう努力しているようだった。
次の「占い学」の授業のときに、トレローニー先生が、ハリーとロンの宿題が最高点をとったと言ったので、二人ともとても愉快だった。
先生は二人の予言を長々と読みあげ、待ち受ける恐怖の数々を、二人が怯まずに受け入れたことを褒め上げた__ところが、その次の一ヵ月についても同じ宿題を出され、二人の愉快な気持も萎んでしまった。
悲劇は、二人とももうネタ切れだった。
一方、「魔法史」を教えるゴーストのビンズ先生は、十八世紀の「小鬼の反乱」についてのレポートを毎週提出させた。
スネイプ先生は、解毒剤を研究課題に出した。クリスマスが来るまでに、だれか生徒の一人に毒を飲ませて、みんなが研究した解毒剤が効くかどうかを試すと、スネイプが仄めかしたので、みんな真剣に取り組んだ。
フリットウィック先生は、「呼び寄せ呪文」の授業に備えて、三冊も余計に参考書を読むように命じた。
ハグリッドまでが、生徒の仕事を増やしてくれた。「尻尾爆発スクリュート」は、何が好物かを、まだだれも発見していないのに、すばらしいスピードで成長していた。
ハグリッドは大喜びで、「プロジェクト」の一環として、生徒が一晩おきにハグリッドの小屋に来て、スクリュートを観察し、その特殊な生態についての観察日記をつけることにしようと提案したのだ。
ハグリッドは、まるでサンタクロースが袋から特大のおもちゃを取り出すような顔をした。
「僕はやらない」ドラコ・マルフォイがピシャリと言った。
「こんな汚らしいもの、授業だけでたくさんだ。お断りだ」
ハグリッドの顔から笑いが消し飛んだ。
「言われたとおりにしろ」ハグリッドが唸った。
「じゃねえと、ムーディ先生のしなさったことを、俺もやるぞ……おまえさん、なかなかいいケナガイタチになるっていうでねえか、マルフォイ」
グリフィンドール生が大爆笑した。
マルフォイは怒りで真っ赤になったが、ムーディに仕置きされたときの痛みをまだ十分覚えているらしく、口応えしなかった。
ハリー、ロン、ハーマイオニーは、授業のあと、意気揚々と城に帰った。
昨年、マルフォイがハグリッドをクビにしようとして、あの手この手を使ったことを思うと、ハグリッドがマルフォイをやり込めたことで、ことさらいい気分になった。
玄関ホールに着くと、それ以上先に進めなくなった。
大理石の階段の下に立てられた掲示板の周りに、大勢の生徒が群れをなして右往左往していた。三人の中で一番のっぽのロンが爪先立ちして、前の生徒の頭越しに、二人に掲示を読んで聞かせた。
「いいぞ!」ハリーが声をあげた。
「金曜の最期の授業は、『魔法薬学』だ。スネイプは、僕たち全員に毒を飲ませたりする時間がない!」
「たった一週間後だ!」
ハッフルパフのアーニー・マクラミンが、目を輝かせて群れから出てきた。
「セドリックのやつ、知ってるかな?僕、知らせてやろう……」
「セドリック?」
アーニーが急いで立ち去るのを見送りながら、ロンが放心したように言った。
「ディゴリーだ」ハリーが言った。
「きっと、対抗試合に名乗りを上げるんだ」
「あのウスノロが、ホグワーツの代表選手?」
ペチャクチャとしゃべる群れを掻き分けて階段のほうに進みながら、ロンが言った。
「あの人はウスノロじゃないわ。クィディッチでグリフィンドールを破ったものだから、あなたがあの人を嫌いなだけよ」
ハーマイオニーが言った。
「あの人、とっても優秀な学生だそうよ__その上、監督生です!」
ハーマイオニーは、これで決まりだ、という口調だった。
「君は、あいつがハンサムだから好きなだけだろ」ロンが痛烈に皮肉った。
「お言葉ですが、私、だれかがハンサムだというだけで好きになったりいたしませんわ」
ハーマイオニーは憤然とした。
ロンはコホンと大きな空咳をしたが、それがなぜか「ロックハート!」と聞こえた。
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