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第21章 ハーマイオニーの秘密 5

「ハリー、こっちに来て」ハーマイオニーが急き込んで言った。
早く!
ハリーはさっぱりわからないまま、ハーマイオニーのそばに行った。
ハーマイオニーは鎖を突き出していた。ハリーはその先に、小さなキラキラした砂時計を見つけた。

「さあ__」
ハーマイオニーはハリーの首にも鎖をかけた。
「いいわね?」ハーマイオニーが息を詰めて言った。
「僕たち、何してるんだい?」ハリーにはまったく見当がつかなかった。
ハーマイオニーは砂時計を三回引っくり返した。

暗い病室が溶けるようになくなった。ハリーはなんだか、とても速く、後ろ向きに飛んでいるような気がした。
ぼやけた色や形が、どんどん二人を追い越していく。耳がガンガン鳴った。叫ぼうとしても、自分の声が聞こえなかった__。

やがて固い地面に足が着くのを感じた。するとまた周りの者がはっきり見え出した__。

誰もいない玄関ホールに、ハリーはハーマイオニーと並んで立っていた。
正面玄関の扉が開いていて、金色の太陽の光が、流れるように石畳の床に射し込んでいる。
ハリーがくるりとハーマイオニーを振り返ると、砂時計の鎖が首に食い込んだ。
「ハーマイオニー、これは__?」
「こっちへ!」
ハーマイオニーはハリーの腕をつかみ、引っ張って、玄関ホールを急ぎ足で横切り、箒置き場の前まで連れてきた。
箒置き場の戸を開け、バケツやモップの中にハリーを押し込み、そのあとで自分も入って、ドアをバタンと閉めた。
「なにが__どうして___ハーマイオニー、いったい何が起こったんだい?」
「時間を逆戻りさせたの」真っ暗な中で、鎖をハリーの首からはずしながら、ハーマイオニーが囁いた。
「三時間前まで……」

ハリーは暗い中で自分の脚の見当をつけて、いやというほどつねった。相当痛かった。ということは、奇々怪々ききかいかいな夢を見ているというわけではない。
「でも__」
「しっ!聞いて!誰か来るわ!たぶん__たぶん私たちよ!」
ハーマイオニーは箒置き場の戸に耳を押しつけていた。
「玄関ホールを横切る足音だわ……そう、たぶん、私たちがハグリッドの小屋に行くところよ!」
「つまり」ハリーが囁いた。「僕たちがこの中にいて、しかも外にも僕たちがいるってこと?」
「そうよ」ハーマイオニーの耳はまだ戸に張りついている。
「絶対私たちだわ……あの足音は多くても三人だもの……それに、私たち『透明マント』をかぶってるから、ゆっくり歩いているし__」
ハーマイオニーは言葉を切って、じっと耳を澄ました。
「私たち、正面の石段を下りたわ……」
ハーマイオニーは逆さにしたバケツに腰かけ、ピリピリ緊張していた。
ハリーはいくつか答えがほしかった。
「その砂時計みたいなもの、どこで手に入れたの?
「これ、『逆転時計タイムターナー』っていうの」ハーマイオニーが小声で言った。

「これ、今学期、学校に戻ってきた日に、マクゴナガル先生にいただいたの。授業を全部受けるのに、今学期、ずっとこれを使っていたわ。
誰にも言わないって、マクゴナガル先生と固く約束したの。先生は魔法省にありとあらゆる手紙を書いて、私に一個入手してくださったの。
私が模範生だから、勉強以外には絶対これを使いませんって、先生は魔法省に、そう言わなければならなかったわ……。
私、これを逆転させて、時間を戻していたのよ。だから、同時にいくつもの授業を受けられたの。わかった?でも……。
ハリー、ダンブルドアが私たちに何をさせたいのか、私、わからないわ。どうして三時間戻せっておっしゃったのかしら?それがどうしてシリウスを救うことになるのかしら?」

ハリーは影のようなハーマイオニーの顔を見つめた。
「ダンブルドアが変えたいと思っている何かが、この時間帯に起こったに違いない」
ハリーは考えながら言った。

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