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第十七章 二つの顔をもつ男 2

「僕、あなたが森の中でスネイプと一緒にいるところを見た…」
ハリーが出し抜けに言った。
「ああ」
クィレルは鏡の裏側に回り込みながら生返事をした。
「スネイプは私に目をつけていて、私がどこまで知っているかをたしかめようとしていた。初めからずっと私のことを疑っていた。私を脅そうとしたんだ。私にはヴォルデモート卿がついているというのに…それでも脅せると思っていたのだろうかね」
クィレルは鏡の裏を調べ、また前に回って、食い入るように鏡に見入った。
「『石』が見える…ご主人様にそれを差し出しているのが見える…でもいったい石はどこだ?」
ハリーは縄をほどこうともがいたが、結び目は固かった。なんとかしてクィレルの注意を鏡からそらさなくては。
「でもスネイプは僕のことをずっと憎んでいた」
「ああ、そうだ」
クィレルがこともなげに言った。
「まったくそのとおりだ。おまえの父親と彼はホグワーツの同窓だった。知らなかったのか?互いに毛嫌いしていた。だがけっしておまえを殺そうとは思わなかった」
「でも二、三日前、あなたが泣いている声を聞きました…スネイプが脅しているんだと思った」
クィレルの顔に初めて恐怖がよぎった。
「時には、ご主人様の命令に従うのが難しいこともある…あの方は偉大な魔法使いだし、私は弱い…」
「それじゃ、あの教室で、あなたは『あの人』と一緒にいたんですか?」
ハリーは息をのんだ。
「私の行くところ、どこにでもあの方がいらっしゃる」
クィレルが静かに言った。
「世界旅行をしていたとき、あの方に初めて出会った。当時私は愚かな若輩だったし、善悪についてばかげた考えしかもっていなかった。ヴォルデモート卿は、私がいかに誤っているかを教えてくださった。善と悪が存在するのではなく、力と、力を求めるには弱すぎる者とが存在するだけなのだと…それ以来、私はあの方の忠実な下僕になった。だがあの方を何度も失望させてしまった。だから、あの方は私にとても厳しくしなければならかった」
突然クィレルが震え出した。
「過ちは簡単に許してはいただけない。グリンゴッツから『石』を盗みだすのにしくじったときは、とてもご立腹だった。私を罰した…そして、私をもっと間近で見張らなければならないと決心なさった…」
クィレルの声が次第に小さくなっていった。ハリーはダイアゴン横丁に行ったときのことを思い出していた__なんで今まで気がつかなかったんだろう? ちょうどあの日にクィレルに会っている。「もれ鍋」で握手までしたじゃないか。

クィレルは低い声でののしった。
「いったいどうなってるんだ…『石』は鏡の中に埋まっているのか?鏡を割ってみるか?」
ハリーは目まぐるしくいろいろなことを考えていた。

__今、僕が一番望んでいるのは、クィレルより先に『賢者の石』を見つけることだ。だからもし今鏡を見れば、『石』を見つけた自分の姿が映るはずだ。つまり、『石』がどこに隠されているかが見えるはずだ!クィレルに悟られないように鏡を見るにはどうしたらいいんだろう?


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