第17章 猫、ネズミ、犬 3
「このトンネル、どこに続いているのかしら?」後ろからハーマイオニーが息を切らして聞いた。
「わからない……『忍びの地図』には書いてあるだんだけど、フレッドとジョージはこの道は誰も通ったことがないって言ってた。この道の先は地図の端からはみ出してる。でもどうもホグズミードに続いてるみたいなんだ……」
二人はほとんど体を二つ折りにして急ぎに急いだ。クルックシャンクスの尻尾が見え隠れした。通路は延々と続く。少なくともハニーデュークス店に続く通路と同じくらい長く感じられた。
ハリーはロンのことしか頭になかった。あの巨大な犬はロンに何かしてはいないだろうか……背を丸めて走りながら、ハリーの息遣いは荒く、苦しくなっていた。
トンネルがそこから上り坂になった。やがて道がねじ曲がり、クルックシャンクスの姿が消えた。
そのかわりに、小さな穴から漏れるぼんやりした明りがハリーの目に入った。
ハリーとハーマイオニーは小休止して息を整え、ジリジリと前進した。二人ともむこうにあるものを見ようと杖をかまえた。
部屋があった。雑然とした埃っぽい部屋だ。壁紙ははがれかけ、床は染みだらけで、家具という家具は、まるで誰かが打ち壊したかのように破損していた。窓には全部板が打ちつけてある。
ハリーはハーマイオニーをチラリと見た。恐怖にこわばりながらもハーマイオニーは、コクリと頷いた。
ハリーは穴をくぐり抜け、あたりを見回した。部屋には誰もいない。
しかし、右側のドアが開きっぱなしになっていて、薄暗いホールに続いていた。
突然、ハーマイオニーがまたしてもハリーの腕をきつく握った。目を見開き、ハーマイオニーは板の打ちつけられた窓をズーッと見回していた。
「ハリー、ここ、『叫びの屋敷』の中だわ」ハーマイオニーが囁いた。
ハリーもあたりを見回した。そばにあった木製の椅子に目が止まった。
一部が大きく抉れ、脚の一本が完全にもぎ取られていた。
「ゴーストがやったんじゃないな」少し考えてからハリーが言った。
そのとき頭上で何かが軋む音がした。何かが上の階で動いたのだ。
二人は天井を見上げた。ハーマイオニーがハリーの腕をあまりにきつく握っているので、ハリーの指の感覚がなくなりかけていた。
眉をちょっと上げてハーマイオニーに合図すると、ハーマイオニーはまたコクリと頷いて腕を放した。
できるだけこっそりと、二人は隣のホールに忍び込み、崩れ落ちそうな階段を上がった。どこもかしこも厚い埃をかぶっていたが、床だけは違った。
何かが上階に引きずり上げられた跡が、幅広い縞模様になって光っていた。
二人は踊り場まで上った。
「ノックス、消えよ!」
二人が同時に唱え、二人の杖先の灯りが消えた。
開いているドアが一つだけあった。二人がこっそり近づくと、ドアのむこうから物音が聞こえてきた。低い呻き声、それと、太い、大きなゴロゴロという声だ。
二人はいよいよだと、三度目の目配せをし、三度目のコックリをした。
杖をしっかり先頭にたて、ハリーはドアをバッと蹴り開けた。
埃っぽいカーテンのかかった壮大な四本柱の天蓋ベッドに、クルックシャンクスが寝そべり、二人の姿を見ると大きくゴロゴロ言った。そのわきの床には、妙な角度に曲がった脚を投げ出して、ロンが座っていた。
ハリーとハーマイオニーはロンに駆け寄った。
「ロン__大丈夫?」
「犬はどこ?」
「犬じゃない」ロンが呻いた。痛みで歯を食いしばっている。「ハリー、罠だ__」
「え__?」
「あいつが犬なんだ……あいつは『動物もどき』なんだ……」
ロンはハリーの肩越しに背後を見つめた。
ハリーがくるりと振り向いた。
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