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第21章 ハーマイオニーの秘密 1

「言語道断……あろうことか……誰も死ななかったのは奇跡だ……こんなことは前代未聞……いや、まったく、スネイプ、君が居合わせたのは幸運だった」
「恐れ入ります、大臣閣下」
「マーリン勲章、勲二等、いや、もしわたしが口やかましく言えば、勲一等ものだ」
「まことにありがたいことです、閣下」
「ひどい切り傷があるねぇ……ブラックの仕業、だろうな?」
「実は、ポッター、ウィズリー、グレンジャーの仕業です、閣下……」
まさか!
「ブラックが三人に魔法をかけたのです。我輩にはすぐわかりました。
三人の行動から察しますに、錯乱の呪文でしょうな。三人はブラックが無実である可能性があると考えていたようです。三人の行動に責任はありません。
しかしながら、三人がよけいなことをしたため、ブラックを取り逃がしたかもしれないわけでありまして……三人は明らかに、自分たちだけでブラックを捕まえようと思ったわけですな。
この三人は、これまでもいろいろとうまくやりおおせておりまして……どうも自分たちの力を過信しているふしがあるようで……それに、もちろん、ポッターの場合、校長が特別扱いで、相当な自由を許してきましたし__」
「ああ、それは、スネイプ……なにしろ、ハリー・ポッターだ……我々はみな、この子に関しては多少甘いところがある」
「しかし、それにしましても__あまりの特別扱いは本人のためにならぬのでは?我輩、個人的には、ほかの生徒と同じように扱うよう心がけております。
そこでですが、ほかの生徒であれば、停学でしょうな__少なくとも__友人をあれほどの危険に巻き込んだのですから。
閣下、お考えください。校則のすべてに違反し__しかもポッターを護るために、あれだけの警戒措置が取られたにもかかわらずですぞ__規則を破り、夜間、人狼や殺人者と連るんで__それに、ポッターは、規則を犯して、ホグズミードに出入りしていたと信じるに足る証拠を我輩はつかんでおります__」
「まあまあ……スネイプ、いずれそのうち、そのうち……あの子はたしかに愚かではあった……」

ハリーは目をしっかり閉じ、横になったまま聞いていた。なんだかとてもフラフラした。
聞いている言葉が、耳から脳に、ノロノロと移動するような感じで、なかなか理解できなかった。手足が鉛のようだった。
まぶたが重くて開けられない……ここに横たわっていたい。この心地よいベッドに、いつまでも……。

「一番驚かされたのが、吸魂鬼ディメンターの行動だよ……どうして退却したのか、君、ほんとうに思い当たる節はないのかね、スネイプ?」
「ありません、閣下。我輩の意識が戻ったときには、吸魂鬼ディメンターは全員、それぞれの持ち場に向かって校門に戻るところでした……」
不思議千万ふしぎせんばんだ。しかも、ブラックも、ハリーも、それにあの女の子も__」
「全員、我輩が追いついたときには意識不明でした。我輩は当然、ブラックを縛り上げ、さるぐつわを噛ませ、担架をつくり出して、全員をまっすぐ城まで連れてきました」

しばし会話が途切れた。ハリーの頭は少し速く回転するようになった。それと同時に胸の奥が、ざわめいた。

ハリーは目を開けた。
何もかもぼんやりしていた。誰かがハリーのメガネをはずしたのだ。
ハリーは暗い病室に横たわっていた。
部屋の一番端に、校医のマダム・ポンフリーがこちらに背中を向けてベッドの上にかがみ込んでいるのがやっと見えた。
ハリーは目を細めた。ロンの赤毛がマダム・ポンフリーの腕の下に垣間見えた。

ハリーは枕の上で頭を動かした。右側のベッドにハーマイオニーが寝ていた。月光がそのベッドを照らしている。
ハーマイオニーも目を開けていた。緊張で張りつめているようだった。
ハリーも目を覚ましているのに気づいたハーマイオニーは、唇に人差し指を当て、それから病室のドアを指差した。

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