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第21章 ハーマイオニーの秘密 6

「何が起こったかな?僕たち三時間前にハグリッドのところへ向かっていた……」
「いまが、その三時間前よ。私たち、たしかに、ハグリッドのところに向かっているわ。たったいま、私たちがここを出ていく音を聞いた……」
ハリーは顔をしかめた。精神を集中させ、脳みそを全部絞りきっているような感じがした。

「ダンブルドアが言った……僕たち、一つといわずもっと、罪なき命を救うことができるって……」
ハリーはハッと気がついた。
「ハーマイオニー、僕たち、バックビークを救うんだ!」
「でも__それがどうしてシリウスを救うことになるの?」
「ダンブルドアが__窓がどこにあるか、いま教えてくれたばかりだ__フリットウィック先生の事務所の窓だ!そこにシリウスが閉じ込められている!僕たち、バックビークに乗って、その窓まで飛んでいき、シリウスを救い出すんだよ!シリウスはバックビークに乗って逃げられる__バックビークと一緒に逃げられるんだ!」

暗くてよくは見えなかったが、ハーマイオニーの顔は、怖がっているようだった。
「そんなこと、誰にも見られずにやり遂げたら、奇跡だわ!」
「でも、やってみなきゃ。そうだろう?」ハリーは立ち上がって戸に耳を押しつけた。
「外には誰もいないみたいだ……さあ、行こう……」
ハリーは戸を押し開けた。玄関ホールには誰もいない。できるだけ静かに、急いで、二人は箒置き場を飛び出し、石段を下りた。
もう影が長く伸び、禁じられた森の木々の梢が、さっきと同じように金色に輝いていた。

「誰かが窓から覗いていたら__」
ハーマイオニーが背後の城の窓を見上げて上ずった声を出した。
「全速力で走ろう」ハリーは決然と言った。
「まっすぐ森に入るんだ。いいね?木の陰かなんかに隠れて、様子をうかがうんだ__」
「いいわ。でも温室を回り込んで行きましょう!」ハーマイオニーが息を弾ませながら言った。
「ハグリッドの小屋の戸口から見えないようにしなきゃ。じゃないと、私たち、自分たちに見られてしまう!ハグリッドの小屋に私たちがもう着くころだわ!」

ハーマイオニーの言ったことがよく読み込めないまま、ハリーは全力で走りだした。ハーマイオニーがあとに続いた。
野菜畑を突っ切り、温室に辿り着き、その陰で一呼吸入れてから、二人はまた走った。全速力で、「暴れ柳」を避けながら、隠れ場所となる森まで駆け抜けた。

木々の影に入って安全になってから、ハリーは振り返った。数秒後、ハーマイオニーも息を切らしてハリーのそばに辿り着いた。
「これでいいわ」ハーマイオニーが一息入れた。
「ハグリッドのところまで忍んでいかなくちゃ。見つからないようにね、ハリー……」

二人は森の端を縫うように、こっそりと木々の間を進んだ。やがて、ハグリッドの小屋の戸口が垣間見え、戸を叩く音が聞こえた。
二人は急いで太いかしの木の陰に隠れ、幹の両脇から覗いた。
ハグリッドが、青ざめた顔で震えながら、戸口に顔を出し、誰が戸を叩いたのかとそこら中を見回した。そして、ハリーは自分自身の声を聞いた。
「僕たちだよ。『透明マント』を着てるんだ。中に入れて。そしたらマントを脱ぐから」
「来ちゃなんねえだろうが!」
ハグリッドはそう囁きながらも、一歩下がった。それから急いで戸を閉めた。

「こんな変てこなこと、僕たちいままでやったことないよ!」ハリーが夢中で言った。
「もうちょっと行きましょう」ハーマイオニーが囁いた。
「もっとバックビークに近づかないと!」
二人は木々の間をこっそり進み、かぼちゃ畑の柵に繋がれて落ち着かない様子のヒッポグリフが見えるところまでやってきた。


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