第21章 ハーマイオニーの秘密 2
廊下にいるコーネリウス・ファッジとスネイプの声が、半開きになったドアから入り込んでいた。
マダム・ポンフリーが、キビキビと暗い病室を歩き、今度はハリーのベッドにやってくる。ハリーは寝返りを打ってそちらを見た。
マダム・ポンフリーはハリーが見たこともないような大きなチョコレートを一塊手にしていた。ちょっとした小岩のようだ。
「おや、目が覚めたんですか!」
キビキビした声だ。チョコレートをハリーのベッドわきの小机に置き、マダム・ポンフリーはそれを小さいハンマーで細かく砕きはじめた。
「ロンは、どうですか?」ハリーとハーマイオニーが同時に聞いた。
「死ぬことはありません」マダム・ポンフリーは深刻な表情で言った。
「あなたたち二人は……ここに入院です。わたしが大丈夫だというまで__ポッター、何をしてるんですか?」
ハリーは上半身を起こし、メガネをかけ、杖を取り上げていた。
「校長先生にお目にかかるんです」ハリーが言った。
「ポッター」マダム・ポンフリーがなだめるように言った。「大丈夫ですよ。ブラックは捕まえました。上の階に閉じ込められています。吸魂鬼が間もなく『キス』を施します__」
「えーっ!」
ハリーはベッドから飛び降りた。ハーマイオニーも同じだった。
しかし、ハリーの叫び声が、廊下まで聞こえたらしく、つぎの瞬間、コーネリウス・ファッジとスネイプが病室に入ってきた。
「ハリー、ハリー、何事だね?」ファッジが慌てふためいて言った。
「寝てないといけないよ__ハリーにチョコレートをやったのかね?」
ファッジが心配そうにマダム・ポンフリーに聞いた。
「大臣、聞いてください!シリウス・ブラックは無実です!ピーター・ペティグリューは自分が死んだと見せかけたんです!今夜、ピーターを見ました!大臣、吸魂鬼にあれをやらせてはだめです。シリウスは__」
しかし、ファッジは微かに笑いを浮かべて首を振っている。
「ハリー、ハリー、君は混乱している。あんな恐ろしい試練を受けたのだし。横になりなさい。さあ。すべて我々が掌握しているのだから……」
「してません!」ハリーが叫んだ。「捕まえる人をまちがえています!」
「大臣、聞いてください。お願い」
ハーマイオニーも急いでハリーのそばに来て、ファッジを見つめ、必死に訴えた。
「私もピーターを見ました。ロンのネズミだったんです。『動物もどき』だったんです、ペティグリューは。それに__」
「おわかりでしょう、閣下?」スネイプが言った。「錯乱の呪文です。二人とも……ブラックは見事に二人に術をかけてものですな……」
「僕たち、錯乱してなんかいません!」ハリーが大声を出した。
「大臣!先生!」マダム・ポンフリーが怒った。
「二人とも出ていってください。ポーターはわたしの患者です。患者を興奮させてはなりません!」
「僕、興奮してません。何があったのか、二人に伝えようとしてるんです」
ハリーが激しい口調で言った。
「僕の言うことを聞いてさえくれたら__」
しかし、マダム・ポンフリーは突然大きなチョコレートの塊をハリーの口に押し込み、むせ込んでいる間に、間髪を入れずハリーをベッドに押し戻した。
「さあ、大臣、お願いです。この子達は手当てが必要です。どうか、出ていってください__」
再びドアが開いた。
今度はダンブルドアだった。