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第3章 招待状 5

ハリー__パパが切符を手に入れたぞ__アイルランド対ブルガリア。月曜の夜だ。ママがマグルに手紙を書いて、君が家に泊まれるよう頼んだよ。もう手紙が届いているかもしれない。マグルの郵便ってどのぐらい速いか知らないけど。どっちにしろ、ピッグにこの手紙を持たせるよ

ハリーは「ピッグ」という文字を眺めた。それから豆フクロウを眺めた。
今度は天井のランプの傘の周りをブンブン飛び回っている。
こんなに「ピッグ(豚)」らしくないふくろうは見たことがない。ロンの文字を読み違えたのかもしれない。ハリーはもう一度手紙を読んだ。

マグルが何と言おうと、僕たち君を迎えにいくよ。ワールドカップを見逃す手はないからな。ただ、パパとママは一応マグルの許可をお願いするふりをしたほうがいいと思ったんだ。連中がイエスと言ったら、そう書いてピッグをすぐ送り返してくれ。日曜の午後五時に迎えにいくよ。連中がノーと言っても、ピッグをすぐ送り返してくれ。やっぱり日曜の午後五時に迎えにいくよ。
ハーマイオニーは今日の午後に来るはずだ。パーシーは就職した__魔法省の国際魔法協力部だ。家にいる間、外国のことはいっさい口にするなよ。さもないと、うんざりするほど聞かされるからな。
じゃあな
             ロン

「落ち着けよ!」豆フクロウに向かってハリーが言った。今度はハリーの頭のとろこまで低空飛行して、ピーピー狂ったように鳴いている。
受取人にちゃんと手紙を届けたことが誇らしくて仕方がないらしい。
「ここへおいで。返事を出すのに君が必要なんだから!」
豆フクロウはヘドウィグの籠の上にパタパタ舞い降りた。ヘドウィグは、それ以上近づけるものなら近づいてごらん、と言うかのように冷たい目で見上げた。

ハリーはもう一度鷲羽根わしばねペンを取り、新しい羊皮紙を一枚つかみ、こう書いた。

ロン。すべてオッケーだ。マグルは僕が行ってもいいって言った。明日の午後五時に会おう。待ち遠しいよ。
             ハリー

ハリーはメモ書きを小さく畳み、豆フクロウの脚に括りつけたが、興奮してピョンピョン飛び上がるものだから、結ぶのが一苦労だった。
メモがきっちり括りつけられると、豆フクロウは出発した。
窓からブーンと飛び出し、姿が見えなくなった。

ハリーはヘドウィグのところに行った。
「長旅できるかい?」
ヘドウィグは威厳たっぷりにホーと鳴いた。
「これをシリウスに届けられるかい?」ハリーは手紙を取り上げた。
「ちょっと待って……一言書き加えるから」
羊皮紙をもう一度広げ、ハリーは急いで追伸を書いた。

僕に連絡したいときは、これから夏休み中ずっと、友達のロン・ウィーズリーのところにいます。ロンのパパがクィディッチ・ワールドカップの切符を手に入れてくれたんだ!

書き終えた手紙を、ハリーはヘドウィグの脚に括りつけた。ヘドウィグはいつにも増してじっとしていた。本物の「伝書ふくろう」がどう振舞うべきかを、ハリーにしっかり見せてやろうとしているようだった。
「君が戻るころ、僕、ロンのところにいるからね。わかったね?」
ヘドウィグは愛情を込めてハリーの指を噛み、柔らかいシュッという羽音をさせて大きな翼を広げ、開け放った窓から高々と飛び立っていった。

ハリーはヘドウィグの姿が見えなくなるまで見送り、それからベッド下に這い込んで、緩んだ床板をこじ開け、バースデー・ケーキの大きな塊を引っ張り出した。
床に座ってそれを食べながら、ハリーは幸福感がひたひたと溢れてくるのを味わった。
ハリーにはケーキがある。ダドリーにはグレープフルーツしかない。
明るい夏の日だ。明日にはプリベット通りを離れる。
傷痕はもうなんともない。それに、クィディッチ・ワールドカップを見にいくのだ。いまは、何かを心配しろというほうが無理だ__たとえ、ヴォルデモート卿のことだって。

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