見出し画像

第22章 再びふくろう便 3

ファッジ、スネイプ、ダンブルドアがつかつかと中に入ってきた。
ダンブルドアだけが涼しい顔だ。むしろかなりたのしんでいるようにさえ見えた。
ファッジは怒っているようだった。スネイプの方は逆上していた。

白状しろ、ポッター!」スネイプが吼えた。「いったい何をした?
「スネイプ先生!」マダム・ポンフリーが金切り声を上げた。「場所をわきまえていただかないと!」
「スネイプ、まあ、無茶を言うな」ファッジだ。「ドアには鍵がかかっていた。いま見た通り__」
こいつがヤツの逃亡に手を貸した。わかっているぞ!
スネイプはハリーとハーマイオニーを指差し、喚いた。顔は歪み、口角泡こうかくあわを飛ばして叫んでいる。
「いい加減に静まらんか!」ファッジが大声を出した。「つじつまの合わんことを!」
閣下はポッターをご存じない!」スネイプの声が上ずった。
こいつがやったんだ。わかっている。こいつがやったんだ__

「もう充分じゃろう、セブルス」ダンブルドアが静かに言った。
「自分が何を言っているのか、考えてみるがよい。わしが十分前にこの部屋を出たときから、このドアにはずっと鍵がかかっていたのじゃ。マダム・ポンフリー、この子たちはベッドを離れたかね?」
「もちろん、離れませんわ!」マダム・ポンフリーが眉を吊り上げた。
「校長先生が出てらしてから、わたくし、ずっとこの子たちと一緒におりました!」
「ほーれ、セブルス、聞いての通りじゃ」ダンブルドアが落ちついて言った。
「ハリーもハーマイオニーも同時に二カ所に存在することができるというのなら別じゃが。これ以上二人をわずらわすのは、なんの意味もないと思うがの」

グラグラ煮えたぎらんばかりのスネイプは、その場に棒立ちになり、まずファッジを、そしてダンブルドアを睨みつけた。
ファッジはキレたスネイプに完全にショックを受けたようだったが、ダンブルドアはメガネの奥でキラキラと目を輝かせていた。
スネイプはくるりと背を向け、ローブをシュッとひるがえし、病室から嵐のように出ていった。

「あの男、どうも精神不安定じゃないかね」スネイプの後ろ姿を見つめながら、ファッジが言った。
「わたしが君の立場なら、ダンブルドア、目を離さないようにするがね」
「いや、不安定なのではない」ダンブルドアが静かに言った。「ただ、ひどく失望して、打ちのめされておるだけじゃ」
「それは、あの男だけではないわ!」ファッジが声を荒げた。
「『日刊予言者新聞』はお祭り騒ぎだろうよ!わが省はブラックを追いつめたが、やつはまたしても、わが指の間からこぼれ落ちていきおった!
あとはヒッポグリフの逃亡の話が漏れれば、ネタはもう充分だ。わたしは物笑いの種になる!
さてと……もう行かなければ。省の方に知らせないと……」
「それで、吸魂鬼ディメンターは?」ダンブルドアが聞いた。「学校から引き揚げてくれるのじゃろうな?」
「ああ、その通り。連中は出ていかねば」ファッジは狂ったように指で髪を掻きむしりながら言った。
「罪もない子どもに『キス』を執行しようとするとは、夢にも思わなかった……まったく手におえん……まったくいかん。今夜にもさっさとアズカバンに送り返すよう指示しよう。ドラゴンに校門を護らせることを考えてはどうだろうね……」
「ハグリッドが喜ぶことじゃろう」
ダンブルドアはハリーとハーマイオニーにチラッと笑いかけた。
ダンブルドアがファッジと病室を出ていくと、マダム・ポンフリーがドアのところに飛んでいき、また鍵をかけた。
一人で怒ったようにブツブツ言いながら、マダム・ポンフリーは事務室へと戻っていった。

病室のむこう端から、低い呻きが聞こえた。
ロンが目を覚ましたのだ。ベッドに起き上がり、頭を掻きながら、周りを見回している。
「ど__どうしちゃったんだろ?」ロンが呻いた。「ハリー?僕たちどうしてここにいるの?シリウスはどこだい?ルーピンは?何があったの?」
ハリーとハーマイオニーは顔を見合わせた。
「君が説明してあげて」そう言って、ハリーはまた少しチョコレートをほおばった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?