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第十七章 二つの顔をもつ男 8

「先生、もう一つあるのですが?」
「もう一つだけかな?」
「僕はどうやって鏡の中から『石』を取り出したんでしょう?」
「おぉ、これは聞いてくれてうれしいのう。例の鏡を使うのはわしのアイデアの中でも一段とすばらしいものでな、ここだけの話じゃが、これは実にすごいことなのじゃよ。つまり『石』を見つけたい者だけが__よいか、見つけたい者であって、使いたい者ではないぞ__それを手に入れることができる。さもなければ、鏡に映るのは、黄金を作ったり、命の水を飲む姿だけじゃ。わしの脳みそは、ときどき自分でも驚くことを考えつくものじゃよ…さあ、もう質問は終わり。 そろそろこのお菓子に取りかかってはどうかね。あっ!バーティー・ボッツの百味ビーンズがある!わしは若いとき、不幸にもゲロの味に当たってのう。それ以来あまり好まんようになってしもうたのじゃ…でもこのおいしそうなタフィーなら大丈夫だと思わんか?」
ダンブルドアはニコッとして、こんがり茶色のビーンズを一粒口に放り込んだ。とたんにむせかえってしまった。
「なんと、耳くそ味だ!」

校医のマダム・ポンフリーはいい人だったが、とてもきびしかった。
「たったの五分でいいから」とハリーが懇願した。
「いいえ。絶対にいけません」
「ダンブルドア先生は入れてくださったのに…」
「そりゃ、校長先生ですから、ほかとはちがいます。あなたには休息が必要なんです」
「僕、休息してます。ほら、横になってるし。ねえ、マダム・ポンフリーお願い…」
「仕方ないわね。でも五分だけですよ」
そして、ロンとハーマイオニーは病室に入れてもらえた。
「ハリー!」
ハーマイオニーは今にもまた両手でハリーを抱きしめそうだった。でも、思いとどまってくれたので、頭がひどく痛むハリーはホッとした。
「あぁ、ハリー。私たち、あなたがもうダメかと…ダンブルドア先生がとても心配してらっしゃったのよ…」
「学校中がこの話でもちきりだよ。本当は何があったの?」とロンが聞いた。
事実が、とっぴなうわさ話よりもっと不思議でドキドキするなんて、めったにない。しかし、この事実こそまさにそれだった。 ハリーは二人に一部始終を話して聞かせた。クィレル、鏡、賢者の石、そしてヴォルデモート。ロンとハーマイオニーは聞き上手だった。ここぞという時に、ハッと息をのみ、クィレルのターバンの下に何があったかを話したときは、ハーマイオニーが大きな悲鳴を上げた。
「それじゃ『石』はなくなってしまったの?フラメルは…死んじゃうの?」
最後にロンが尋ねた。
「僕もそう聞いたんだ。でも、ダンブルドア先生は…ええと、何て言ったっけかな…『整理された心を持つ者にとっては、死は次の大いなる冒険に過ぎない』って」
「だからいつも言ってるだろう。ダンブルドアはズレてるって」
ロンは自分の尊敬するヒーローの調子っぱずれぶりにひどく感心したようだった。

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