第6章 ギルデロイ・ロックハート 1
翌日、ハリーは一度もニコリともできなかった。大広間での朝食から始まって、状況は悪くなる一方だった。四つのテーブルには牛乳入りオートミールの深皿、ニシンの燻製の皿、山のようなトースト、卵とベーコンの皿が並べられていた。天井は空と同じに見えるように魔法がかけられている(今日はどんよりとした灰色の曇り空だ)。ハリーとロンは、グリフィンドールのテーブルの、ハーマイオニーの隣に腰掛けた。ハーマイオニーはミルクの入った水差しに「バンパイアとバッチリ船旅」を立てかけて読んでいた。「おはよう」というハーマイオニーの言い方がちょっとつっけんどんだ。ハリーたちが到着した方法がまだ許せないらしい。ネビルの挨拶はそれとは反対に嬉しそうだった。ネビル・ロングボトムは丸顔で、ドジばかり踏んで、ハリーの知るかぎり一番の忘れん坊だ。
「もうふくろう郵便の届く時間だ__ばあちゃんが、僕の忘れた物をいくつか送ってくれると思うよ」
ハリーがオートミールを食べはじめた途端、うわさをすればで、頭上に慌ただしい音がして、百羽を超えるふくろうが押し寄せ、大広間を旋回して、ペチャクチャ騒がしい生徒たちの上から、手紙やら小包やらを落とした。大きな凸凹した小包がネビルの頭に落ちて跳ね返った。次の瞬間、何やら大きな灰色の塊が、ハーマイオニーのそばの水差しの中に落ち、周りのみんなに、ミルクと羽のしぶきを撒き散らした。
「エロール!」
ロンが足を引っ張ってぐっしょりになったふくろうを引っ張り出した。エロールは気絶してテーブルの上にボトッと落ちた。足を上向きに突き出し、嘴には濡れた赤い封筒をくわえている。
「大変だ__」ロンが息を呑んだ。
「大丈夫よ。まだ生きてるわ」
ハーマイオニーがエロールを指先でチョンチョンと軽く突つきながら言った。
「そうじゃなくて__あっち」
ロンは赤い封筒の方を指差している。ハリーが見ても別に普通のと変わりはない。しかし、ロンもネビルも、今にも封筒が爆発しそうな目つきで見ている。
「どうしたの?」ハリーが聞いた。
「ママが__ママったら『吼えメール』を僕によこした」ロンが、か細い声で言った。
「ロン、開けた方がいいよ」ネビルがこわごわささやいた。
「開けないともっとひどいことになるよ。僕のばあちゃんも一度僕によこしたことがあるんだけど、ほっておいたら…」ネビルはゴクリと生唾を飲んだ。「ひどかったんだ」
「『吼えメール』って何?」ハリーが聞いた。
しかし、ロンは赤い封筒に全神経を集中させていた。封筒の四隅が煙を上げ始めていた。
「開けて」ネビルが急かした。「ほんの数分で終わるから…」
ロンは震える手を伸ばしてエロールの嘴から封筒をそーっとはずし、開封した。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?