結婚3年目スタート、夫とはじめたこと
テレビで 様々な夫婦に密着する企画をやっていた。
とある夫婦が、夫婦間で交換ノートを書いているという。VTRを見ながら「交換ノート!?……ねぇ!?」と夫の方を見ると てっきり私よりもドン引きするだろうと思っていたにも関わらず夫は「ん?」と、私の予想していなかったリアクションを返してきた。
夫の「ん?」が私に対する同調なのか反論なのかイマイチ分からず、「仮に私が交換ノートやろうよって言ったらちょっと驚かない?」と夫のテンションを探る。私としては、夫は開口一番に交換ノートを拒絶すると思っていたため、大前提として夫が好意的なリアクションをしていることも少し不思議だった。
「いいよ。やろうよ、交換ノート。」
一瞬静寂が流れたと思う。夫は私の「無いでしょ」というリアクションを「しようよ、交換ノート」というニュアンスだと取り違えていたのである。
「交換ノート……?するの?」
人様の家庭の交換ノートに 「ないない」 と言っておきながら、不思議と満更でもない気がしてきた。
「いいよ」と前乗りで肯定する夫。
そういえばVTRに出ていた旦那さんも嬉しそうに「書いているのはほとんど僕なんですけどね」と笑っていた。意外と男性のほうが乗り気なものだろうか、分からない。
そんなわけで世間では我慢の連休と言われた三連休初日の今日、近所の文具店にさっそくノートを買いに行った。正確にはノートではなく、スケッチブック。なんとなく横線が引いてあるノートよりも自由度が高い気がしたからだ。写真を貼ったりちょっとしたイラストを添えたりしてみようか。
なんとなく私から書き始めることになりそうだが、何を書いたらいいか分からない。書きたいことがないといえばないし、あるといえばありすぎる。
娘のこと、クリスマスに欲しいもの、最近気になるアニメ……今週の夕飯の献立を書いてみても面白いかもしれない。今日の猫の様子を四コマにしてもいいかもしれない……なんだ、毎日同居して何でも話してきたつもりだったが、まだまだ話したいことがこんなにある。
内心自分で驚きながら、記念すべき1ページ目を気合いを入れて、いや、入れすぎて書いている。
果たしてこの交換ノートはいつまで続くのだろうか。案外、言うだけ言っておきながら夫が長々と止めているということもありそうな気がする。
ただ、私としてはそれでもいい。夫が私と交換ノートをやろうと言ってくれたそのことだけでも、嬉しいような、そしてなんだかすこし恥ずかしいような。そんな結婚生活3年目のスタートだった。
真っ白のスケッチブックが少しずつ色づいていく。夫からの返事がちょっと楽しみな私がいた。
2020/11/21 こさい たろ