2020年、コロナ禍の母の日
私自身が生まれて初めて「もらう側」として迎えた母の日。
母になって初めて気が付く母親の愛があるのだから、育児が変化させるモノの見え方に驚かされる日々が続いている。実母が娘を抱いて子守唄を歌えば、私の記憶には残っていない30年前の情景が浮かぶ。きっと私も母にこんな風に愛されていたのだと、2人の姿から知る。
そんなこともあり、いつにも増して盛大に母の日を祝いたかった。
例年ミニブーケやちょっとしたプレゼントを贈っていたが、今年はいつもの3倍の予算をかけて生花店に注文を入れた。
実母のぶんと、義母のぶん。
合わせるとなかなかの金額だが、2人の協力のおかげで極力ワンオペ育児にならなくて済んでいるので、儀礼的な建前ではなく本当に「ありがとう」を伝えたかった。
マスクをつけて、生花店に花束を受け取りに行った。
わけあって顔見知りのお店なのだが、オーナーが顔を見るなり、「本当にありがとう、ありがとう」と何度も繰り返す。
外出自粛とは怖いもので、この期に及んで、私は店頭に立つまで生花店が置かれているリアルを全く知らないでいたことに気が付いた。
コロナ禍の世の中、卒業式や入学式がなくなっただけでなく、結婚式や葬儀、さらには新規オープンの祝い花に至るまで、生花店が置かれている状況は、現地では一目瞭然だった。
むしろご無沙汰してしまって、また買いに来ますと店を出る。
両家とも家から車ですぐの場所なので、用意周到にマスクをつけて夫と娘と足早に配達に行った。
義母には赤いカーネーション、実母には大好きな紫陽花の花束を。
そして、生花店のオーナーがおまけでつけてくれた花がある。
娘にも持てるサイズのカーネーション。
花は、あたたかい。言葉が話せない娘にも、言葉を与えてくれる。
そして、こういったコミュニケーションを繋いでくれる生花店になんとかして新型コロナウイルスの状況を生き延びて欲しい。きれいごとではなく、本当にそう思う。
お礼の手紙を書こう。そして、家に花を飾ろう。
私はきっと、今年の母の日をずっと忘れない。
2020/05/10 こさいたろ