ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル - 『思い出』を振り返る
まえがき
8/27。『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』が発売されました。
https://www.jp.square-enix.com/ffcc/
本作はゲームキューブ(以下GC)で発売された『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』のリマスター版となりますが、GC版が発売されたのは2003年と、実に17年ぶりのリマスター作品となりました。
わたしは小学生の頃に本作に触れ、毎週の休みに友達とGBA(とケーブル)を持ち寄って遊んでいましたので、待望の一作でした。
わたしを含めて熱心なファン層をもつこのゲームですが、ついにNintendo Switchで復刻した今、この記事で改めて「FFCCがどんなゲームだったのか?」を振り返るとともに、リマスター版で初めて触れるキャラバンの皆さんにも、楽しみ方のヒントとなれれば幸いです。
瘴気に包まれた世界で、明日のために旅をする
FFCCでは、世界は『瘴気』と呼ばれる有害な空気に覆われています。
人間がひとたび瘴気の中に足を踏み入れれば、その毒素に身体が蝕まれ、命を落としてしまいます。この瘴気に対抗する唯一の手段が『クリスタル』の輝きで瘴気を払うことです。人々はクリスタルの周りに集落をなし、身を寄せ合って暮らしています。
残酷なことに、彼らを包むクリスタルの輝きは長く持ちません。そのままでは、いずれクリスタルの輝きは衰え、集落は瘴気に飲まれてしまいます。クリスタルに集う人々は、世界の各地に生えるミルラの木から『ミルラのしずく』と呼ばれる聖水を集め、定期的にクリスタルの輝きを取り戻す必要があります。
プレイヤーは、このミルラのしずくを集めて旅する『クリスタル・キャラバン』として、集落の人々の期待と命を背負って世界中を旅することとなります。
美しい旧街道、一面キノコに覆われた不思議な森、クリスタルが輝きを失った村……魔物に支配され、ダンジョンと化した領域をくぐり抜け、ミルラのしずくを求めて。
ダンジョンの儚く切ない『語り』
さて、FFCCが他のゲームと何が違うのか。コアなファン層をもつ理由のひとつが、前述したダンジョンとその『語り』です。
FFCCでは、ダンジョン突入時、短いムービーが挟まれます。
このムービーと共に、主題歌『カゼノネ』『星月夜』を歌っているYae氏の語りで、以下のようなナレーションが流れます。
この街道沿いの美しい川には、
小鬼が棲んでいると誰かが言った
だけど、小鬼を見たひとは誰もいない
その理由をあるひとはこう教えてくれた
小鬼を見かけたら最後、
かならず奴らに食われてしまうからだと
でも、そんな話は昔の話
ひとびとは、小鬼の棲むこの街道を通らず、
新しい街道を通るようになった
古い街道を通るのは、
いまとなっては私たち、
クリスタルキャラバンのみ……
(リバーベル街道)
この語りによって、プレイヤーはそのダンジョンへ没入していくとともに、牧歌的な雰囲気の裏に潜む、FFCC世界の瘴気によってもたらされた廃退について、想いを巡らせることになります。
没入感を深める『音楽』
前述したダンジョン開始時の語りとともに、FFCC世界への没入感を深めているのが、その独特なBGMです。
谷岡久美氏、岩崎英則氏によって作曲された、ときに儚く、ときに軽快で、ときに力強いBGMによって、FFCCの牧歌的な世界観が色濃く表現されています。
FFCC世界では『クラヴァット』『セルキー』『リルティ』『ユーク』という4つの種族が各地で身を寄せて暮らしています。FFCCのケルト音楽のような民族的な響きがダンジョンや街を彩り、FFCC音楽そのものの虜となったプレイヤーも数多くいるようです。
ミルラのしずくを集め終わる度に執り行われる『水かけ祭り』の音楽に癒やされながら、達成感と安堵感とともに一年の冒険を振り返る時間は、しんみりと感慨深いものがあります。
『思い出』を巡らせて
前述したクリスタル・キャラバンは『冒険記(クロニクル)』をその手に携えて世界中を旅します。ダンジョンでの冒険、街道で出会った様々な人物・グループとの出会い(ゲーム内では、移動中にイベントとして挟まれます)は冒険記に記されていき、『思い出』となり積み重なります。
冒険を進めるうち、「思い出が少しずつ欠落していく」人々と出会います。あるいは、思い出の殆どを失ってしまった人。クリスタル・キャラバンとしての使命を果たしながら、人々の思い出に纏わる、FFCC世界の仕組みとサイクルに触れる機会が訪れます。
革新的なマルチプレイシステム
FFCCが独特なゲームであったと言わしめるもう一つの側面が、当時のGC時代に異端ともいえる『マルチプレイ』の仕組みでした。
GCでマルチプレイといえば、GCコントローラを4つ差して、ひとつの画面をみんなで見る。というのが当然でした。しかし、GC版FFCCでは「ひとりひとつのゲームボーイアドバンス(以下GBA)を使う」方法でマルチプレイを行うシステムが提示されました。専用のケーブルでGCに接続されたGBAは、そのひとつひとつが『宝箱レーダー』や『敵レーダー』などといった役割に振り分けられます。
個々のGBA画面に表示される情報と照らし合わせながら、テレビ画面で冒険を進めていく、というまったく新しい協力体験がそこにはあったのです。
あとがき
『思い出』をテーマにした、思い出のゲーム。
本作ではオンラインに対応するため、マルチプレイの仕組みがGC版とは大きく異なります。それぞれのキャラバンの進行度による整合性をとりながらのマルチプレイとなり、仕様上難しい部分も多くあったものと思います。これについては、GC版FFCCで見せてくれた技術的なチャレンジの潮流がまだあるのだと、個人としては好意的に受け止めています。
マルチプレイも魅力的ですが、ソロでFFCCの世界観に浸るのもおすすめです。この記事を見る見ないに関わらず、一人でも多くのキャラバンがFFCCを楽しんで貰えることを期待しています。