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御礼 全身MRI保険収載(DWIBS法)

中医協において、全身MRIを用いた前立腺がん骨転移検索の保険収載が承認されたそうです (2020/1/22) [リンク]。

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2004年の発表以来、16年の歳月を経て、正式な加算対象となりました。これまでの患者さまのご支援、また研究会のメンバーや、技術後援をくださった医療企業の皆様の熱意、また放射線科(技師・医師)、泌尿器科、乳腺外科の先生方のご理解により築きあげられたものだと思います。その意味で沢山の柱からなる神殿の写真をこの記事で使いました。心より御礼申し上げます。

加算が認められると、患者さんにとっては負担増となり、おそらく1000円程度(あるいはもう少し少ない額の)支払額が増えてしまうことになります。この点は申し訳なく思っております。

しかし、一方で、患者さんにとってはより利用しやすくなるものと思います。と申しますのは、現在、多くのがん拠点病院ではDWIBS法が行われてきませんでしたが、今回正式な加算対象になったことにより、今後は行う病院が増えることが考えられるからです。

これまでは、「どこに行けば受けられるのか」がわかりにくかったのですが、これが解消する可能性があります。

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DWIBS法(ドゥイブス法)は、MRIの「拡散強調画像」を用いて、癌を写し出す方法です。全身の撮影ができるようになったのは、2004年のことです(1)。

以下は、論文(2) のもので、治療前(左2枚)、治療後(右2枚)の、悪性リンパ腫の患者さんの画像です。それぞれ、左がFDG-PET、右がDWIBS法(MRI)によるものですが、悪性リンパ腫が治療によりきれいに消えたことが、両者ともに診断できます

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最近になり、前立腺がんの骨転移が生じた患者さんの治療経過観察に有用であるというガイドラインがでた (3) ことなどにより、今回の中医協での評価になったものです。

このガイドラインでは、DWIBS法による診断は、より検査料の高い骨シンチよりも優れていると考えられており、日本においてはとくに安価な経過観察ができます。

とくに最近は、「ADCカラーマップ」という方法で、治療効果を誰にでもわかりやすく表示できるようになってきました。以下の写真は、脊髄神経麻痺を防ぐために放射線治療を行ったところが良くなっている様子を、緑色で示しています。また、残念ながら全体的な病勢は進行しており、腫瘍の体積が増えてしまってることもわかります。

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FDG-PETを連続して行うことは保険適応の意味で(高額なので)困難でした。DWIBS法が圧倒的に安価であることは、加算がついても変わりないので、日ごろの経過観察に使っていただけます。

経過観察が頻繁にできるということは、常に適切な治療が選択できるということですから、「わからなかった、知らない間に進んでいた」ということがなくなります(適時治療)。

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一方、「読影方法が分からない」などの声が、診断を行う放射線科医からも寄せられています。このため、今後、読影方法などについてもしっかりとお伝えすることで、医療に貢献したいと思います。

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6月7日開催予定の第13回 Body DWI研究会(主に医療関係者向け)では、教育的な内容を中心に行う予定としました。またみなさまにはご連絡申しあげます。

第13回 Body DWI研究会
2020年6月7日(日) 10:00〜18:00(予定)
東海大学高輪校舎 2B101教室(大講堂、480人収容)
最寄り駅:(3月14日に新しく山手線にできる)高輪ゲートウェイ駅

【予定内容】
・保険収載に関するニュース
・DWIBS法とは何か
・読影方法
・病院インストール技術エバンジェリスト
・泌尿器科における骨転移の臨床応用
・乳腺外科における骨転移の臨床応用
・FDG-PETとの併用
・放射線治療への応用
・定量化に関する会議
・動物のDWIBS

今後ともよろしくご支援のほどお願い申し上げます。

REFERENCES

1) Takahara T, Imai Y, Yamashita T, Yasuda S, Nasu S, Van Cauteren M. Diffusion weighted whole body imaging with background body signal suppression (DWIBS): technical improvement using free breathing, STIR and high resolution 3D display. Radiat Med. 2004 Jul-Aug;22(4):275-82
[Cited by 1044 - Google Scholar 2020/1/24]


2) Kwee TC, Takahara T, Ochiai R, Nievelstein RA, Luijten PR. Diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS): features and potential applications in oncology. Eur Radiol. 2008 Sep;18(9):1937-52.
[Cited by 453 - Google Scholar 2020/1/24]

3) Lecouvet FE, Talbot JN, Messiou C, et al. Monitoring the response of bone metastases to treatment with Magnetic Resonance Imaging and nuclear medicine techniques: a review and position statement by the European Organisation for Research and Treatment of Cancer imaging group. Eur J Cancer. 2014;50:2519-2531.


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たろりん(高原太郎)
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