DWIBS法(ドゥイブス法)とはなにか
概念
DWIBS法(ドゥイブス法)とは、全身の癌の分布を撮影できるMRIの撮影方法。東海大学の高原太郎(当時講師)が、今井裕教授と考案し2004年に発表した。
原著論文は1000回以上、Review論文は400回以上引用されている [Google Scholar]
DWIBS法は、拡散強調画像(DWI)を改良した方法である。DWIは2004年当時、脳梗塞の超早期診断に使用されていた。しかし体幹部の満足な撮影はできなかった。高原らは、主に2つの新しい撮影概念(自由呼吸下撮像、STIR)を導入し、また多くのパラメータ調整をすることにより、体幹部の癌を広く撮影し、3次元的に表示することに成功した。
高原太郎プロフィール
・秋田大学医学部卒業後、小児科研修医となり情熱を傾けていたが、MRIの本の表紙(脳の縦斬り画像)を見て衝撃を受け、放射線科に転向。
・その後医師(読影)・技師(撮影)・研究職の3つをすべて行う特別な許可を得て日夜働いたことで、オールラウンダーとしての活動ができるようになる。その間、内科外来や過疎地の往診などを経験して臨床医としても活動。
・37歳時にMRIの教科書を出版。2004年に全身MRI(DWIBS法;ドゥイブス法)を考案したことが注目され、オランダユトレヒト大学に招聘される。超高磁場(7テスラ)MRIの正規スタッフ兼客員准教授として4年間勤務。
・2010年に帰国、現職、現在に至る。近年、DWIBS法を用いて「痛くないMRI乳がん検診」(ドゥイブス・サーチ)を考案し、ベンチャー企業を創設して実施中。
DWIBS法誕生の背景
DWIBS法は、高原が研修医時代に自分でMRIを撮影できるようになり、パラメータを自在に調整できるようになったことが大きい。37歳時(1999年)にMRIの基本コントラストやパラメータの意味を解説する「MRI自由自在」を出版した。本書は画像診断の専門書としては類を見ない、10000部以上(21刷)の発行をしている。
世界初の末梢神経描出
DWIBS法発表の後、高原はオランダ(ユトレヒト大学)に渡り、正規スタッフとして研究を続け、2009年にDWIBS法を改良した「Whole body MR neurography」を考案し、世界で初めての全身末梢神経描出に成功した [NEJM 2009]。
診療報酬改定における加算
2010年3月の診療報酬改定で、「全身MRIによる前立腺癌骨転移」の加算が認められた。認定施設(2020年10月現在 約80施設)では撮影時に600点の加算が得られる。行政で正式で認められたことにより、撮影法として注目されている。
なお、加算が得られなくても、DWIBS法は、全身の癌の検索に用いることができる(胸部、腹部の単純MRIとして)。
同時に、5箇所以内の脊椎転移に対する定位放射線治療には大きな加算(6300点)が認められた。このため、DWIBS法でオリゴメタ(数の少ない転移)を見つけ、定位放射線治療に持ち込むことで、前立腺癌症例の予後を改善することが期待されている。
「痛くない乳がん検診」の実践
高原は、DWIBS法を利用し、さらに拡散強調度(b値)を上げて撮影すること、またそのほかの画像を工夫することにより、検査時間15分以内の乳がん検診を可能とし、「痛くない乳がん検診(ドゥイブス・サーチ)」を始めた。
これにより、マンモ・エコーに続く、第3の乳がん検診が実現した。「痛くない・見られない」ことが利点である。
また本法は、以下のような方も受け入れており、従来の方法では撮影が困難であった方へ乳がん検診を届ける社会的な意義を有している
・手術後(乳癌術後のインプラント挿入後、豊胸術後のインプラント後)
・授乳期乳腺
・不妊治療に伴う高精度の乳がん検診
・症状を最近生じたが、以前受けたマンモ検診で痛みの記憶が強く、ただちに乳がん検診を受けにくいと感じる場合
Body DWI研究会
全身MRI(DWIとその他の技術)の普及を目的として設立し、現在までに13回の研究会を重ねている。前回第13回はコロナ禍のなか、Webで開催し、厚生労働省の診療報酬加算も相まって最大の参加者を記録した。
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