
携帯と電気自動車は、昼に充電しない
携帯と電気自動車はいつ充電するのか
みなさんは、昼と夜、どちらで携帯を充電するだろうか。
A: 日中に主に充電し、就寝中はあまり充電しない。
B: 就寝中に主に充電し、日中はあまり充電しない。
Aの人は、ほぼ皆無だろう。
使わない就寝中に満充電させて、朝、それを携帯して家を出る。
電池がなくなれば充電するが、なくならなければ帰宅するまで充電しない。
では、昼と夜、どちらで電気自動車を充電するだろうか。
A: 日中に主に充電し、就寝中はあまり充電しない。
B: 就寝中に主に充電し、日中はあまり充電しない。
そう。携帯と同じ。Aの人は、ほぼ皆無です。
携帯と電気自動車に共通しているのは「充電池」。
充電池は、夜、充電する。
携帯と電気自動車は、規模は違うが、ともに充電池を持っている。
その電気を使えるので、
「電源につながなくても携帯できる」
「電源につながなくても自動車として動ける」
という点が同じなのだ。
冷蔵庫や照明は、昼も夜も電源ケーブルが必要。
冷蔵庫には、充電池が装備されていない。そしていつも使っているので、常に電源ケーブルが必要で、昼も夜も、一日中、電気を使い続けている。
照明なども一般的にはそうで、充電池のついている一部のデスクライトとか、懐中電灯以外は、すべて電源ケーブルが必要で、昼も電気を使うことになる。
電力逼迫(ひっぱく)は、平日の午後4時に起こる
これは、冬季と夏季の電力需要の日内変動を示すグラフだ。

このグラフでは、電力供給がとくに危なくなるのは、夏季では、午後2時の前後である。(追記:最近は太陽光発電が普及してきたので、よく晴れた暑い日は、午後4時〜5時に節電要請がもっともきつくなるとのこと)。
ピークカット(使わない)か、ピークシフト(使う時間をずらす)の必要がある。

充電池がないものはピークカット
冷蔵庫は、残念ながら、充電池がついていないから、ピークカットできない
エアコンは、充電池がついていないから、OFFにしたり、設定温度を上げて、なんとかピークカットする。
部屋の照明も、無駄なものはなるべくOFFにして、ピークカットする。
充電池があるものはピークシフト
携帯は、充電池がついていて、夜に満充電してあれば、昼には充電しないし、節電と言われれば、そのときは充電しない自由が基本的にある(ピークシフトできる)。
電気自動車も、充電池がついていて、夜に満充電してあれば、昼には充電しないし、節電と言われれば、そのときは充電しない自由が基本的にある(ピークシフトできる)。
これら2つは、節電要請があろうがなかろうが、基本的には昼に電気を使っていない。
電気自動車は巨大な充電池(蓄電池)
携帯と電気自動車の違いは、蓄電池としてのサイズがものすごく違うことだ。溜められる電力が桁違いだ。
だから、信じられないかもしれないけれど、電気自動車の中にいれば、エアコンは一週間つけっぱなしでも何の問題もない。
走ることをしなければ、巨大な蓄電池として、ありあまる電力を使うことができる。なんなら災害時には電気自動車の中で生活することもできるほどだ。
一般の家庭が平均的に使う電力が10kWhという電力で、電気自動車が50kWh溜めている、といったらわかるだろうか。それは、エアコン以外に他もあわせて丸5日分ということだ。
電気自動車から電気を取り出して使う
V2L ぶいつーえる
電気自動車のこういった特性を利用すると、任意の場所でバーベキューとかができる。これはV2Lと呼ばれている。
Vは自動車を意味するビークル(Vehicle)
2は「どこどこへ」を意味する英語の ”to”
そしてLは負荷を意味する英語の “Load“である。
言葉はなんだかよくわからないが、電気自動車にある電力から、電気コンロとか電気炊飯器などを使うことだと思ってくれれば良い。災害時にも使える機能だ。

V2H ぶいつーえいち
そして極めつけは、V2Hだ。Vと2は同じ。「自動車から」という意味だ。Hは「HOME」なので、「家へ」を意味する。つまり電気自動車を家につないで、その電力で家中の電気を賄うということだ。

電力は夜安いので、夜使うほうがおトク
夜間電力とか深夜電力は安いので、電気自動車を持っている人は、この契約形態にすることが多い。
そうしたら、夜の安い電気で充電できるから、電気代が得だからだ。
それなのに、電気料金が50%も高くなる昼に、あえて電気自動車を充電する人って、いると思う?

太陽電池との相性も抜群
夏の昼の救世主は、太陽電池だ。これを設備した家は、午後2時のピークの時間は、電力会社の電気を使わない。自分の屋根で発電した電気を使うので、人に迷惑をかけない。節電の最たるものだ。
おまけに、電力があまる人のなかには、自分で家用の蓄電池を買う人もいる。太陽光で発電し、余った電力を、蓄電池に貯める。そして夜は太陽光で発電はできないので、蓄電池からとりだして、家で使う。
一日中、外部から電力をもらわないようにできると、送電線が要らなくなる。
こういったことを指して、オフグリッドという。

電気自動車は「走る(こともできる)蓄電池」なので、上の図の蓄電池のところが、電気自動車でも、同じことである。
つまり、太陽光とはとても相性がよく、かつ、究極の人助け「オフグリッド」も目指せるわけだ。
ちなみに、更にその先もあり、V2G(自動車からグリッドへ)と呼ばれる、足りないときに他の人にむけて電気を渡すということすらできるようになる。
どんな人が主張するのかに興味を持とう
これから暑くなると「電気自動車は電力逼迫に有害だ」と、なぜか声高に 述べる人が出てくるはずだ。
その人は、
電気自動車が普及すると困る人 (分かっていてもあえて言う)
電気自動車のことをほとんど知らない人 (事実を知らないで共感する)
のどちらかだ。
上述したように、電気自動車と電力逼迫はほぼ無関係である。
いやそれどころか、むしろ解決する能力を持っている。
にもかかわらず、知っているはずの人が主張するときは、不自然さを感じることだろう。
こういったことにも興味を持ってこれからのいろんな人の意見を観察すると面白いかもしれない。
まとめ
携帯と電気自動車は、夜、充電する。
電力の逼迫は、平日の昼、午後2時に起こる。
電気自動車と、電力の逼迫は、とても関係が薄い。
それどころか、ピークシフトの重要な道具(蓄電池)である。
本当に大切なこと
本当に大切なことは、電気自動車が嫌いな人を増やしたり、誤解する人を増やしたり、あるいは電気自動車の普及を妨げることではない。
日本がいつの時代も競争力を持って、時代の最先端を切り開き、外国において存在感を発揮できることこそが重要だ。
先日の日経の記事を見るとわかるが、東南アジアにおいて、日本は電気自動車という、最新技術の工場展開において、明らかに遅れを取っている。
東南アジアで目覚めるEV市場 今年4工場、日系出遅れ

おそろしいことに、地図の中に、日本のメーカーの名前がほんの少ししか無い。
存在感がなくなり、日本が忘れられる前に。
昔はテレビといったらソニー(日本)を思い浮かべていた人が、いまはテレビと言ったらLG(韓国)と思い浮かべるということから想像すれば、いまなにが起きているかが分かるだろう。
テレビは衰退しつつあるが、YouTubeやNetflixは盛り上がっていて、そこで使う大型モニタでは、サムスンやLG(韓国)を思い浮かべることだろう。あるいはBOE(中国)だ。日本を想像する人は、もういない。
忘れられつつある日本。
それに早く気づくことが大切だ。
電気自動車に限らず、新しい技術の特性をみなが理解し、チャレンジを続けることが大切だ。
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