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契約書に「ハンコ」いらないって政府が見解を示しました。

こんにちは! 最近ペーパーレス化界隈の記事が大量にてている中、こんな記事が出てきました。

#COMEMO #NIKKEI

そもそも「契約行為」自体は、双方の合意があれば成立するものなので、そもそもハンコなんて不要なのですが、改めてそれを政府が言う!ということに関して、「やはり、ハンコ押しに出社している人向けなんなんだろうな」と思ったので、出どころを探したところ。以下に出ていました。

しかもPDFで読みやすいまとめを作ってくれていました。

書類の概要

そして、中を見ると押印に関する6つの質問に答えていくという形で作られていました。

1) 契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。
2) 押印に関する民事訴訟法のルールは、どのようなものか。
3) 本人による押印がなければ、民訴法第228条第4項が適用されないため、文書が真正に成立したことを証明できないことになるのか。
4) 文書の成立の申請が裁判上争われた場合において、文書に押印がありさえすれば、民訴法第228条第4項が適用され、証明の負担は軽減されることになるのか。
5) 認印が企業の角印についても、実印と同様、「二段の推定」により、文書の成立の真正について証明の負担が軽減されるものか。
6) 文書の成立の申請を証明する手段を確保するために、どのような方法が考えられるか。

この辺りの法令とかご存知な方や、法曹関係者の皆さんにとっては「何を今更」的な質問ばかりなのですが、一般の人からしたら「会社にそれだけ押印のためだけに出社したりしていた人たちがたくさんいた」という事実からして、以上のような「常識」が周知徹底されていない ということで、内閣府・法務省・経済産業省 が合同でリリースを出したというのは大きな意味があると思います。

各省庁としては、テレワークを進めていく上で、各社でこれを理解した上で、不要な出勤を避け、テレワークを上手く混ぜながら、コロナの感染リスクを可能な限り減らし、経済を継続して動かしていってもらいたいという思いを感じました。

問1 契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。

まず、この質問で、「そこからですか?」と思いましたが、公に「契約は当事者同士が内容に合意をしていれば成立するもので、法律で決められていなければ、契約書を作成することも、そこに押印をすることも必要ではないよ!」 ということと、「(当事者同士の合意さえあれば)別に契約書にハンコ押してようが、押してなかろうが、契約の効力に影響はないよ」と声明があったことは、意味があったな と思います。

問2 押印に関する民事訴訟法のルールは、どのようなものか。

これは、民事訴訟法のルールなので、平時はなんの関係もなく、会社同士で争うような自体が発生し、民事裁判になってしまった場合に関係のある話です。(なので、裁判にでもならない限り関係のない話です)

ですが、裁判の時に、契約書などが「証拠」として有効になるためには、こういった要件が揃っていれば「書類が確かに作成されました」ということを推定できます ということが取り決められているのが、この民事訴訟法第228条 で、ビジネスの世界で関係ある項目が、228条第4項になります。

ちょっと解説:民事訴訟法228条

でも、この民事訴訟法第228条4項とか言われても「なにそれ? それっておいしいの?」っていうのが、一般の人のレベルの話だと思うので(かくいう僕自身もこの世界に飛び込むまで全然知らなかったです)、改めて条文解説を。

(文書の成立)
第228条
1. 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2. 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3. 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4. 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5. 第2項及び第3項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。

まず、言葉の定義から。

「文書」=「作成者の意思や思想が、文字などの形で記録されたもの」のことをいいます。この定義自体は、明治時代の大審院(今の最高裁判所にあたるところ)で決まったものだそうです。(大審院での記録はもっと難しく書かれていますが、ここでは割愛します。)

「真正である」= 本物である。正当な手続きを経て作成されたもの。

で、228条は裁判資料として提出される文書が「証拠」として成り立つものである条件として、「なにをもって、文書は真正に成り立っていると言えるのか」ということを述べているものです。

で、ここでビジネスの世界で作成される文書に該当するのが4. で規定されている「私文書」というもので、契約書や領収書、請求書など、会社や個人事業主、個人が作成したものが、それにあたります。

で、4. で何をいっているのかというと、「作成された文書に対して、作成者本人または本人の代理人の署名または押印があった場合には、その文書は本物であると、推定されます。」 つまり、「文書が真正に作成されなかったということが証明できない限りは、ハンコ押してあれば、正しく作成された文書だと認めましょう」ということです。

で、ハンコが押してある文書は、本物だという証明をする負担がハンコがない書類よりも軽減されるんだよ、ということなのですが、結局形式的に体裁が整っていること(これを形式的証拠力 といいます)が証明されるだけで、「ホントのところどうなの?」(これを法律では実質的証拠力といいます)ということに関しては、この民事訴訟法228条では規定されていません。なので、民事訴訟法228条はその程度の効力しかないんだよ と言っているのが、この問2のメインメッセージなのです。

問3:本人による押印がなければ、文書が真正に成立したことを証明できないことになるのか。

これに対して、シンプルにこう回答がありました。

「そんなことはないです!」 と。

あくまでも民事訴訟法228条で証明できることは「形式的に体裁が整っていれば、反証されない限りは、本物の文書だよ」ということで、それができていなくても、他の方法でも文書の真正な成立は証明できれば良いので、ハンコがないことで、ダメということではない ということです。
(他に証明する方法の事例は、問6で出てきます)

あと、押印してあるからといっても、それも「反証」が可能なもの(その文書が本物ではないことを証明することができる)であり、押印の効果というのは限定的だよ と言っています。

なので、テレワーク推進の観点から、ハンコに拘らない文書の真正な成立について考えた方がいいよ! とまで言い切っちゃっています。

あー、そこまではっきり言ってくれるんだ! と思いました。
ハンコがそもそも万能じゃないよ ということです。

問4 文書に押印がありさえすれば、民事訴訟法228条第4項が適用されて、証明の負担って軽減されるんですか?

これに関しては、まず押印自体が本人の意思でなされたか が争点になります。そこが証明できれば、その文書は真正に作成されたものだと認められやすい とのことです。 特に契約書はそれにあたります。

ただし、請求書や納品書、領収書などの実際のモノやお金の流れが伴うものに関しては、文書だけでなく実際のお金やものの流れの確認も必要で、それが確認されないと、その文書が認められるわけではないです。

なので、ここの答えは「押印自体がまず本人の意思かどうかが重要で、それが証明されても、負担が軽減されるかはその作成された文書の性質によりけりだよね」というのが答えです。

問5 角印とか認印でも押してあれば文書の真正な成立についての証明の負担が軽減されるの?

これって、領収書とか請求書に押してある角印とか認印ですね。

これに関しては身もふたもない感じで、「実印じゃないと、軽減自体が難しいから、押印する以外の方法考えた方がいいんじゃない? 最近では3Dおプリンタとかで印鑑簡単に偽造できちゃうし。」 というようなことが書いてありました。

ここでも、慣習として行われている押印をぶった斬ってますね。

問6 で、文書の成立の真正を証明する手段を確保するために、どんな手段が考えられるの?

そして、最後に、「じゃあ、押印以外にどんな方法あるの?」ということで、事例として、以下のようなやり方を提示していました。

1) 継続的な取引関係がある場合
   ・ 取引先とのメアド、メール本文&日時など、送受信記録の保存
     (請求書、領収書、納品書、検収書などの書類は、これを保存しているだけでも、真正性を証明する重要な情報になるよ。とのこと)

2) 新規で取引関係が始まる場合
   ・ 契約締結前の本人確認情報(氏名・住所等ならびにその根拠資料としての本人確認資料)の記録の保存
   ・ 本人確認情報の入手過程(郵送受付またはメールなどでのPDF送付 など)の記録・保存

3) 電子署名や電子認証サービスの活用
   (利用時のログインID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスも含む)

あと、1)と2)のケースの場合、文書の真正な成立を争う際にも、こんな方法で、さらに立証がしやすくなるのではないか ということで、以下の記載がありました。

・ メールで契約内容に対して合意した場合の、記録の保存(メール本文・メアド、送受信履歴 など)
・ PDFにパスワードを設定
・ PDFをメールで送付する際に、パスワードを携帯電話等の別経路で伝達
  (これは、同じ経路で、ファイルとパスワードを送るな という意味だという理解です。よくある。暗号化された添付ファイル とパスワードを同じメールアドレスに別のメールで送ってくる という慣習がありますが、あれはダメだ! ということを暗に言ってくれてる という理解です。)
・ 複数者宛のメール送信(担当者+法務担当者&決裁権者 の場合)
・ PDFを含む送信メールの送受信記録

読んでましたが、「あー、メールでやりとりをすること」の前提で話してるな。 と思いました。まー、何も新たな投資をしなくても、真正に文書を成立させるためのやり方ってあるよ という意味だと思います。

ただ、中小企業や小規模事業者、個人事業主がこれを全部やるっていうのは難しいですね。正直、個人だったら萎えます。なので、こういう書類のやり取りを、自社で契約しているクラウドサービス上でできて、その記録が自動で取り出して確認できるような仕組みがあると便利だな って思います。(G SuiteやOffice 365あたりは基本的なことはできそうな気がします。)

あと、大量に書類のやり取りをする場合は、電子認証サービスなどを使って、書類の真正な作成を電磁的手法にて証明できるようにし、あとで問題になった時でも簡単に立証できるような仕組みを導入することも重要だと思います。そういう意味では、昨今出ているクラウドサービスに関しても、ここに書かれているようなことがどれだけできるのか という視点でサービスの導入を検討してみればいいと思います。

おわりに

以上、19日に出た文書の解説でしたが、「いやー、おかみがはっきり言ってくれてありがたい!」と思いました。これで、オンライン上での作成や承認、そしてやり取りがますます増えていくな と思います。ただ、オンラインでやるにせよ、しかるべき手続きを経て書類を作成し、ちゃんと取引をしなければならないことに変わりはないので、そういう「新しい仕事の仕方」をしっかり支援してくれるサービスを利用していくことをお勧めします。

また、近いうちに、世の中に出ているいろんなサービスをここでも紹介できればと思いますので、よろしくお願いします。




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