#12 友達ができた日。
旅が好きだ。
自分が思い描くその土地と、旅をして感じるその土地を答え合わせするのが好きだ。
でも、それを共有できる旅先の友だちはいない。
一人旅のときは、向こうでも一人。
私は行く先々でいろんなことを知りたいし、いろんなことを共有したいし、欲を上げるとキリが無いのだけど、そんな友達は向こうにはいない。
旅先ではある種の孤独なのだ。すれ違う人はあれど、何があるわけでもない。
そんな中、ある日新潟で友だちができた。
話をすると地元の同い年だそうだ。
いつも写真を撮ってて見かけてたけど、話すことは初めて。
同い年ということもあり打ち解け、気が付けばタメ口で話すほど盛り上がった。
列車が来ればファインダーを覗いて貪欲にシャッターを切り、そこから渾身の1枚を作り上げるアーティストだ。妥協はしないけどどこかマイペース。
「同い年なんだ!なかなかいないから嬉しいよ!」
「なんでそんな地元民しか行かないところ知ってるの??」
「今年は桜が早かったけど、なんとか残ってくれたんだよね。」
「曇り空が新潟らしいって??確かに確かに。」
「北陸へ行く途中の新潟か。僕は育った環境からの思い入れかな。」
自分の感じることをたくさん話し、返ってくる言葉が嬉しかった。
地元の学生が行くラーメン屋、撮影場所、カメラ、新潟の人がよくやること、話せばキリが無くいつまでも話は弾んだ。
連絡先を交換して、またそれぞれの写真撮影に出かけていく。
新潟にこの古い電車が走っていなかったら、この素敵な景色、気候、文化、食、そして友だちもできなかった。
今私の中では、新潟は富山と並ぶふるさとになった。
ボックスシートの古い電車が結んでくれた縁。
その電車は今日も春の新潟の日常を結んでいる。
そんな電車が導いてくれた、いろどりの春のディスカバー。
『やすらぎ堤の春』Photo by Taromaru
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?