情報戦
コンビニ店長のお仕事は、注文や会計、スタッフの勤怠管理など。意外にデスクに向かってする仕事も多い。
ボクが事務所にいる時も、ウチの優秀なコンビニスタッフたちはレジ対応や売り場の管理をすると同時に店内で起こる様々な出来事をボクに報告してくれるのだ。
毎朝8時にホットコーヒーとマルボロメンソールボックスを必ず買って行くオトナな雰囲気の女子は先週あたりから彼氏が変わったという話や、夜10時に来店するド派手なワンピースの女子が実は男性かもしれないというウワサ。
市内のショッピングモールの香水屋さんの店長がコンビニの裏手にある保育園の保母さんの兄だという話。
全くウチの店とは関わりのない情報まで報告される。
こういった一見すると意味のない情報こそが、発注精度を上げ、日々お客様とかわす会話のエッセンスとなり、固定客の来店頻度や売り上げに繋がっていくものなのだ。多分。
「店長!来ました!」
男子スタッフ太田が事務所のドアを叩きつけるような勢いで開けて言った。その真剣な眼差し。最後まで報告を受けるまでもなくボクは察した。注文の締め切り時間までのタイムリミットを確認すると同時に、店内を映す防犯カメラをチェックした。
コンビニでは、どんな業務よりも優先して行動しなければならないことがあるのだ。
「わかった!今、行く」
美女子の来店だ。
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