その緑とは

緑が豊かだと言われる所に住んでいる。

ビルだらけの都会から電車で30分もかからない。

きれいに整えられた街路樹。色とりどりの花を庭や玄関に飾った家。

いくつもある公園には、バッタやセミがわんさかいる。

春は桜が咲き乱れ、夏は緑が生い茂り、秋には色づく。冬の乾いた晴空には落葉した木が映える。

自慢をしたくて書いたのではない。

なんか、つまらないのだ。

ここの緑には、こちらを圧倒するものがない。

自然の大きさや生命力など、ときには恐怖すら覚えるものがないのだ。

このことに気づいた時に、僕はそれを欲していることに気付いた。

入ったら方向が分からなくなるような森。浅瀬からいきなり深いところが現れる海。時間の流れを止めてしまうような深い雪。

こういうものは怖いけど、怖いことは自分で認識しないといけないと思う。もちろん、自然には楽しいことや素晴らしいことが沢山ある。

この怖さがあるから際立つ、自然が持っているものを感じられるところに、もう一度戻りたい。


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