ワニのプロモーションについての感想

ワニ、作品自体はすごくいいと思う。友人の死がモチーフということで、そこに込められた作者の思いにも感動した。
当然作者は経済的に報われてほしいし、プロモーションに関わった人間もそういう気持ちで奮闘したんだろうなとも考えられる。

でも、どうしても僕の心にはしこりが残る形となってしまった。
僕だけじゃなくて、ネットユーザの中には同じように冷めてしまった人、がっかりしてしまった人がたくさん見受けられる。
そんな不快に思った人たちがいるよねという憤りや批判をしたいのではなくて、せっかく盛り上がって楽しめたコンテンツがこんな終わり方をしてしまったのが悲しくて、他の方法はないのかなと考えながら今この記事を書いている。

ワニのプロモーションに関わった人たち

プロモーションに関わった人たちのことを考える。
ついつい広告代理店とか出版社とかの存在を僕らは悪者にしがちだけど、変に決めつけてはいけないと思っていて。
彼らも、「せっかくのいい作品、マネタイズして、作者が経済的にも報われるような構造を作りたい」と奮闘したという可能性も十分ありうると思う。

Loftとのコラボ楽天とのコラボ書籍化のあれこれを、作者のきくちさんがすべてこなしたわけはないだろう。

おそらく広告代理店が今までのコネクションを活かして、これらの企業に掛けあって、「これだけの数字が出ています、これだけ人気です、間違いなく売れますからコラボをお願いします、こちらの取り分はこれこれで〜」と、各所と話をつけていったんだと思う。

サイトも勝手に生まれるわけではない。
どこに発注して、どれだけの金額で、どんな内容で...と色々決めて、各所と取引する必要がある。そこにもたくさんの人が関わっているんだろうと思う。

マネタイズするための選択肢

今回は「書籍化・映画化・物販」という形でマネタイズが実施された。
で、たぶん書籍・物販はまだいいとして、僕としては映画化にすごく違和感がある。

でもこの中で、映画化が一番収益性が高いのかなとも思う(興行収益○○云々!とかよく聞くので、勝手な感想)。

さて。

僕が仮に今回のワニをマネタイズするとして、とれる選択肢が他にあるだろうか。

fantiaのようなファン型サブスクリプション?寄付型クラウドファンディング?どっちもうまく行かなさそうな気がする。

WEBで有料公開?もともと無料だったものを、どれほどの人が購入するだろうか。続編がでるにせよ同様。

結局こういった作品のマネタイズをしようとすると、書籍化・映画化という形が一番結果を出せるように思う。特に映画化。
既存の書店・映画館を使って、今まで知らなかった層にも「なんか話題になっている」ということで興味を持ってもらい、1000円2000円のお金を落としてもらう。

反対に、どちらかというと物販のターゲット層はコアなファン向けになるだろう。

作家が儲かる && コンテンツが死なない選択肢

これが現状ないことが問題なような気がする。
今回のワニに関しては、コンテンツの見せ方を優先するなら映画化は避けたほうが良かったと思うけれど(主観)、利益を最大化する観点から見ると映画化は正しい。

コンテンツが死なず、作家が儲かる選択肢がもう少し欲しい。そして、それがもっと低コストに実現できる手段だと尚いいなと思う。

ただ、夢想することはできても、それを実現するような構造・プロセスがさっぱり思い浮かばない。
自分もモノ作りしてる人間として情けないんだけど、誰かそんな仕組みを作ってくれませんか。

タイミングについて

この人のTweetに割と納得していて、後日発表は去った読者の目に届かない可能性が高く、機会損失が発生する。

ただ、99日目に書籍が発表されるだけならまだしも、グッズやメディアミックスまで告知されると、流石に99日のときの「まあいいか」感は保てなかったろうと思う。

今の惨状を思えば、機会損失の発生は承知の上で、101日目以降、みんなが「悲しいね」となった後、ある程度待ってから少しづつ情報を出していく、みたいな方がよかったのかもとかいくらでも言えるけれど、まだ今のように結果が出ていない情報不足の段階で、それでも判断をしないといけない場面において判断を下すと考えると、今回の判断も当然かなという気もする。

電通のせいにしてしまうのは時期尚早

この記事を書いている今現在、Twitterで #電通案件 というタグがトレンドになっている。この案件に電通が関わっており、全ては電通が仕組んだことであるという説だ。

どこが情報元かなと確認してみると、ワニ公式がYoutubeにアップロードした動画と、公式Twitterアカウント。
これの動画クレジットに、動画の電通PR社社員が関わっていた & Twitter公式アカウントを運営している株式会社ベイシカという会社の取引先に、電通が含まれていたというのが情報ソースっぽい。

どこかの広告代理店が関わっていたのは展開からして推測できる。
けれど、動画クレジットとTwitter運営会社だけで、決めつけるにはまだ情報不足なんじゃないかなと個人的には思う。

先日、「わからないものをわからないままにしておく」ことができない人が、陰謀論等に飛びつきやすい旨のTweetがされていた(なんか改めて探したらなくなっているようだった)。
今、それが発生しやすい状況になっているのではないだろうか。

電通の責任にして終わりにしても繰り返しそう

仮に電通の失策だったとして、電通を責めたところで何も解決しなくて、たぶん繰り返す。KADOKAWAの失敗は記憶に新しいところ。

何か、彼らを経由しない別の選択肢を作りたい。

ただ、関わってもいない外野の人間がワーワー言って、正義の拳を振りかざして、かえって守ろうとした対象の人たちが望んでいない社会になることが往々にしてある。

クリエイターが本当にそれを望んでいるのかについては、しっかり考えないといけないだろう。

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